ロシア軍によるウクライナ侵攻で、多くの男性が銃を手に故郷を守ることを決意した。女性たちは子どもたちと共に故郷を離れ、戦争がいつ終わるのか先の見えない不安を抱えながら避難生活を送っている。

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夫を残し隣国へ避難

ナタリーさん(32)、妹のリボウさん(29)と息子・マークくんはウクライナ西部のリビウから、親戚のユリアさん(36)と息子・ダニエロくん(8)は首都キーウからポーランド・ミエレツに避難した。侵攻が始まった日(2月24日)に、3人とも夫を残して自宅を離れた。リビウからポーランド国境までは普段は車で1時間ほどだが、その日は渋滞のため12時間かかったという。現在は無料で借りたアパートに住み、ナタリーさんはテレワークで仕事を続けている。

ナタリーさん(左)ユリアさんとダニエロくん(中央)リボウさんとマークくん(右)
ナタリーさん(左)ユリアさんとダニエロくん(中央)リボウさんとマークくん(右)

ナタリーさん:
避難する時、戦争がいつまで続くのかこの先どうなるのか分からなくて、精神的にひどく疲れました。

避難時の状況について話すナタリーさん
避難時の状況について話すナタリーさん

避難先でポーランド語を学ぶ

彼女たちは最近、ポーランド語の教室に通い始めた。小学校の教師などが週に2回、避難者向けに無料で授業を行っている。生徒の数は70人ほどで、その多くが女性だ。

避難者向けのポーランド語教室
避難者向けのポーランド語教室

ーーポーランドでの支援についてどう思いますか?
ナタリーさん:
すばらしいです。地元の人たちと交流したいですし、敬意を表したいです。

ポーランド語を学ぶナタリーさん
ポーランド語を学ぶナタリーさん

ボランティア団体の担当者:
教師はみんなボランティアです。ウクライナの人たちを助けるために、喜んで来てくれています。

「学校に行きたい…」故郷の小学校のオンライン授業に参加

キーウから母親と共に避難してきた8歳のダニエロくんは、避難先でも勉強を続けている。この日オンラインで参加していたのは、キーウの小学校の授業だ。ポーランドの学校に通う選択肢もあったが、キーウにすぐにでも戻れるようオンラインの授業を選んだ。生徒も教師も、大半が避難先から参加している。

オンライン授業を受けるダニエロくん
オンライン授業を受けるダニエロくん

当初は毎日授業があったが、空襲警報で中断されるなどしたため、現在は週に2日、合計4時間だけだ。

ーーオンラインでの授業は大変?
ダニエロくん:
うん。でも、学校に行きたいから。

オンライン授業を受けるダニエロくん
オンライン授業を受けるダニエロくん

ダニエロくんは、授業でロシア軍の侵攻についてアニメを使って説明されたという。まだ8歳だが、自分が置かれている状況や父親と会うことができない理由を理解している。

授業で使われたアニメ
授業で使われたアニメ

「誰かが国を守る必要がある」

ダニエロくんの父親たちは今、ウクライナ国内で領土防衛隊や支援物資を運ぶボランティアで活動している。

ナタリーさんの夫もこれまで銃とは無縁の生活だったが、今は、リビウやキーウに残る人たちに命がけで支援物資を運んでいる。

ナタリーさん:
彼ら(夫たち)は、私たちの国を守るべきです。それに、そもそもここに来たがりませんでした。誰かが国を守る必要があるからです。

「家族に会いたい」。その思いから、3月27日、ナタリーさんは一時的にリビウの自宅に戻った。リビウでは初めて空襲警報を聞き、地下に避難したという。今は再びポーランドで避難生活を送っている。

一時帰宅した際、夫と地下シェルターに避難
一時帰宅した際、夫と地下シェルターに避難

ナタリーさん:
みんながこの戦争のことを知ってくれたら、もっと支援が増えると思います。私は民主主義が勝つと信じています。

ナタリーさんは「早く家に帰りたい」と涙目で語った。彼女たちに、いつ日常が戻ってくるのだろうか。

【執筆:FNNパリ支局 森元愛】

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森元愛
森元愛

疑問に感じたことはとことん掘り下げる。それで分かったことはみんなに共有したい。現場の空気感をありのまま飾らずに伝えていきます!
大阪生まれ、兵庫育ち。大学で上京するも、地元が好きで関西テレビに入社。情報番組ADを担当し、報道記者に。大阪府警記者クラブ、大阪司法記者クラブ、調査報道担当を経てFNNパリ特派員。