子どもの頃、おもちゃのロボットが宇宙で活躍することを想像した人もいるかもしれない。そんな夢が現実になろうとしている。

玩具メーカーのタカラトミーが、宇宙でも動く変形型ロボットを共同開発し、今年度中に月面探査を行う予定だというのだ。

変形後の超小型月面ロボット(出典:タカラトミー)
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月面で“走行モード”に変形

ロボットの名前は「SORA-Q(ソラキュー)」。直径約8cm(変形前)・重さ約250gのボール型で、2016年からタカラトミーやJAXAなどが共同で開発を続けていた。

(出典:タカラトミー)

「SORA-Q」の使命は、月面の低重力環境下における超小型ロボットの探査技術を実証することだ。今回はJAXAのSLIMという 「小型月着陸実証機」に搭載されて月へと打ち上げられ、SLIMがメインエンジンを停止して自然落下するとき「SORA-Q」が月面へと放出される。

左が「SLIM」、中央が「SORA-Q」、右は別の探査ロボ(出典:タカラトミー)

そして、月面に着地した「SORA-Q」は、球体の外殻を左右に拡張変形。カメラを搭載した「頭部」と尻尾のようなスタビライザーを伸ばし、外殻を車輪として回転させることで、月面を移動する。

球状の「SORA-Q」(出典:タカラトミー)
瞬時に球体が左右に拡張(出典:タカラトミー)

また、両輪の回転軸を動かすことで、本体を上下しながら進む「バタフライ走行」と、左右に揺れながら進む「クロール走行」を使い分けることで、月面の平地だけでなく傾斜地でも走行できるという。

頭部のフロントカメラで周囲の状況を、リアカメラで後ろにできた轍などを撮影し、将来の月面における有人自動運転技術などの検討に必要なデータの取得を目指すとしている。

バタフライ走行(出典:タカラトミー)
クロール走行(出典:タカラトミー)

そして、「SORA-Q」の開発にはタカラトミーがおもちゃ作りで培った小型化・軽量化の知見や、変形機構に関わる技術が活用されたというのだ。

変形には「トランスフォーマー」のノウハウ

タカラトミーといえば、恐竜や動物をモチーフにした「ZOIDS」や、自動車からロボットに変形する「トランスフォーマー」など、様々なロボットのおもちゃを発売している。こういった技術が、今回どのように役立ったのだろうか? 同社の担当者に聞いてみた。


――そもそも「SORA-Q」を開発することになったいきさつは?

JAXAの宇宙探査イノベーションハブの募集に「昆虫型探査ロボット」というテーマがあり、玩具の小型化技術やシンプルな構成でつくるノウハウが活かせると思い弊社から応募しました。


――「SORA-Q」に、なぜ変形機構を搭載したの?

月への輸送時に求められる「小型化」と月面探査で求められる「走行性能」を両立するためです。 コンパクトで耐衝撃性にも優れた輸送&放出時の「球体モード」から 、着陸後は走行に適した「走行モード」へ変形します。


――どんな素材で作られている?

車輪やメインボディは軽量で強度の高いアルミ系の素材でつくられています。カメラ外装は樹脂素材でつくられています。


――月面探査の予定を教えて。

現在、 2022年度に2回予定されています。


――「SORA-Q」は月面でどのぐらい動くの?

駆動時間は2時間程度の見込みです。走行距離は実際に走行してみないとわかりません。今回のミッションには走行データを取ることも含まれています。


――開発で苦労したことは?

直径約80mm、質量約250gという超小型、超軽量を実現することが最も苦労した点です。 また、月面のレゴリス(粒子の堆積層)を想定した砂地とその斜面をスタックすることなく走行できるようにすることも難しい課題でした。小型にすること、レゴリスを想定した砂地とその斜面を走行することには 玩具開発のノウハウが活かされ ています。


――おもちゃ作りの技術はどう活かされている?

今回の「変形する小型探査機」はおもちゃ会社ならではの 「柔軟な発想」から生まれたアイデアであると考えています。 また、この探査ロボットを具現化するにあたっては、おもちゃ開発の「小型化」「軽量化」「シンプルな設計」のノウハウが活かされています。

さらに、「変形」にはトランスフォーマーの変形機構のノウハウが、 レゴリスの上を走行する機構はZOIDSや i-sobot(2007年に発売した当時世界最小の二足歩行ヒューマノイド型ロボット)などの小型駆動のノウハウが活かされています。

i-sobot(出典:タカラトミー)

――「SORA-Q」を、模型やおもちゃとして発売する予定は?

現在は未定となっております。まずは玩具の技術が宇宙事業に活用できるという事を皆様に知って驚いて頂くとともに、「SORA-Q」の事を知った子どもたちの反応なども拝見しながら 、おもちゃメーカーとして子どもたちが宇宙に興味をもっと持っていただけるような企画を考えていきたいと思います 。

月面探査のイメージ画像(出典:タカラトミー)

なお「SORA-Q」の公式サイトでは、CGムービーだけでなく「動作検証モデル」が動いている動画を公開している。

変形するときの金属的な音や走るときのリアルな作動音を聞くことができるが、「SORA-Q」が本当に活躍する月面には空気がないことから、実際には音は聞こえないのだそうだ。

こんな小さなロボットがどのようなデータを取得してくるのか、月面探査の結果を楽しみに待ちたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。

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