暴力団による犯罪を昭和・平成・令和と取り締まってきた警視庁「四課」。

伝統の「四」の数字に誇りを持つ捜査員もいるが、4月から名前が変わり四課はなくなる。その背景には、暴力団の変化と市民目線があった。

設立から64年 警視庁「四課」の歴史

社会部警視庁担当・山口祥輝記者:
首都の治安を守る警視庁のある組織の名前が、4月1日から変わることになるんです。まずは2015年のこちらの映像をご覧ください。

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捜査員:
開けなさい

組員:
開ける必要ねーだろ、この野郎!

捜査員:
ちゃんと令状請求で令状もらってきているんだよ

組員:
令状もらってきても開けられねーんだよ、こっちはこの野郎!開けねえもんは開けねえよ!ゴラァ!

組員A:
何だ何だ何だ何だ!うっせーよ!この野郎。なんで報道来てんだよ!!あぁ?

組員B:
引っ込めよこの野郎!

組員A:
止めろよコラァ!!写してんじゃねぇよ!オラァ!

組員B:
パシャパシャやってんじゃねぇよ!何なんだよ!テメェどこだよ!

社会部警視庁担当・山口祥輝記者:
これは、分裂して今も抗争を続けている暴力団・山口組系の事務所に2015年、警視庁の捜査員が家宅捜索に入った際の様子です。

捜査員が開けろと激しく組員に詰め寄っているんですが、腕についている腕章には「四」という数字が書いてありますよね。

加藤綾子キャスター:
「四課」って、映画とかドラマでもありますよね。

社会部警視庁担当・山口祥輝記者:
四課というのは「暴力団捜査を行う部署」となっていますが、この警視庁の「四課」という呼び名がなくなってしまうんです。

四課が設立されたのは、東京タワーが完成した年、今から64年前の1958年です。刑事部の「捜査四課」として、暴力団による対立抗争事件などを取り締まってきました。

その後、2003年に警視庁に「組織犯罪対策部」が発足し、捜査四課はそちらに移ります。しかし、この時「組対四課」と名前を変えたものの、四課という名前はあえて残したんです。

ところが、四課という名称は3月31日でなくなり、4月1日からは「暴力団対策課」と名称が変わります。

ジャンパーなどグッズを着用 捜査員の思い

社会部警視庁担当・山口祥輝記者:
64年間の伝統がある四課が消えることについて取材すると、「四という数字に誇りを持っている」「四課といえば暴力団だったのにさみしい」「四という数字は守りたかった」と話す捜査員もいました。

このように、四課の捜査員は“四”という数字に愛着や誇りを持っているんですが、それがよくわかるのが「四課グッズ」です。実は四課では、一致団結のために四という数字が書かれたジャンパーやバッジを製作し着用しているんです。

四課の名前が消えることに関しては、惜しむだけではなく「新たな節目として意気込んでいる」「組織の実態が日々変化していく中で、我々も変わらないといけない」という声も聞かれました。

加藤綾子キャスター:
慣れ親しんだものが変わる時って寂しさもあるんですが、気持ちも新たにという変化にもなりますよね

社会部警視庁担当・山口祥輝記者:
まさにその通りで、捜査員も変化をプラスに捉えている方が多かった印象です。今回の名称変更は、暴力団の変化に対応するための重要なものなんです。

対立する敵とも手を組み…資金難の暴力団

社会部警視庁担当・山口祥輝記者:
暴力団は今、暴力団対策法や全国の暴力団排除条例によって、飲食店からのみかじめ料を要求することや借金の取り立てで稼ぐことができなくなっています。つまり、俗に言う「シノギ」と呼ばれる資金獲得活動が困難になっているんです。

この影響もあり、暴力団の組員とその関係者の人数が、2021年末時点で2万4100人と過去最少となっています。しかし、暴力団は新たな資金源を探していて、特殊詐欺であったりアポ電強盗などに手を染めて、より実態が見えにくくなっています。

2022年1月に摘発された特殊詐欺の事件では、かつて対立していた山口組系の組員と住吉会系の組員が、同じグループで活動していました。

この2つの組織は2007年、東京都港区で住吉会系の組幹部が山口組系の組員に射殺されたことをきっかけに抗争していた過去があります。それにもかかわらず、資金を獲得するためには、かつての敵とも手を組むという状態です。

四課の幹部も「抗争していた組同士が同じグループにいるのは異例」と話していました。

さらに、暴力団はいま「半グレ」と呼ばれる犯罪組織や外国人組織とも手を組むなど、金を稼ぐためには手段を選ばなくなっていると言えます。

「暴力団対策課」発足 2つの狙い

社会部警視庁担当・山口祥輝記者:
このような暴力団の変化に対応するために、警視庁に4月1日から暴力団対策課が設置されます。

その狙いは大きく2つあります。1つ目は、暴力団の「情報収集と捜査の一体化」です。これまでは情報収集は三課、暴力団の摘発は四課と別々でしたが、一緒に行うことで実態が見えにくい暴力団対策を強化する狙いです。

そして、2つ目は「わかりやすさ」です。四課というよりもシンプルに「暴力団対策課」という方が、一般市民にも何をする部署かわかりやすいという面があると思います。

4月1日に発足する暴力団対策課が、四課として暴力団に立ち向かってきた伝統と誇りを引き継いでどのような活動をしていくのか、引き続きウォッチしていきたいと思います。

警察も組織変更の転換期

加藤綾子キャスター:
私たちニュースを伝える側も、伝わりやすいなという気がします。四課だと「暴力団捜査を行う部署です」と一言、説明をしなければいけないなと思うんです。

住田裕子弁護士:
元検事だから、一課は強行犯の殺人、二課は詐欺とそう思っていたんです。四課は伝統があるんですが、暴力団は変わってきてますからね。大規模な組織犯罪にもつながってきていますので、やはり平成11年の組織犯罪の対策法というのは大きかったと思います。警察も変わらなきゃいけない。

そして、情報の関係でいうと警察庁の方にサイバー犯罪の部署ができたんです。そこで情報を集めて対策をする。大きな組織変更の時代の転換期かな、という感じがします。

(「イット!」3月30日放送より)