将官級の戦死者は3人に
ウクライナがロシア軍の「将軍たちの墓場」と化してきた。
ウクライナ政府は11日、ロシア軍の第29東部合同軍のアンドレイ・コレスニコフ少将が戦死したと発表した。戦死した場所や状況は明らかではない。

今回のロシア軍のウクライナ侵攻では先週、中部第41合同軍の副司令官のアンドレイ・スコベツキイ少将がマリウポリ付近でウクライナ軍の狙撃兵に射殺され、また7日には41軍参謀本部長ビタリ・ゲラシモフ少将がウクライナ東部のカルキフ郊外で戦死しており、これで将官級の戦死者は3人になった。
通常、将官級の幹部は大局的見地から作戦を指揮するので最前線で敵の攻撃に身を晒すことは少ないはずなので、2月24日以来のウクライナ侵攻作戦で3人の将官を失うのは極めて異例と受け止められている。
ウクライナ侵攻作戦の“異例さ”を象徴か
逆に、これは今回のロシア軍によるウクライナ侵攻作戦自体が異例なことを象徴するものという受け止め方もある。
「兵士たちが怯えていると、ロシア軍の司令官たちは部隊を前進させることが大きな任務になる。部隊が自主的に判断ができなくなったり、状況判断ができなくなったり、あるいは恐怖心から部隊の前進が止まったりした時、上官が前線に出て部隊を指揮しなければならないことになる」
英紙「ザ・タイムズ」電子版12日の記事は、西側当局者の話として、ロシア軍の将官の戦死が相次ぐ背景をこう紹介した。

つまり、ロシア軍の将官たちはウクライナ軍の激しい抵抗に尻込みする兵士を叱咤激励するために最前線に立たなければならない状況にあり、ウクライナ軍の放火を浴びる危険も高いということなのだろう。
ウクライナに侵攻したロシア軍の兵士の多くが「平和維持活動」だと言われたり、ウクライナに入れば「花束で歓迎される」と言われたのにウクライナ国民の激しい抵抗に遭って驚き戸惑っているとも伝えられる。
もともとロシアとウクライナは「兄弟国」とされ、ロシア語を喋る国民も多いので「敵と戦う」という意識も乏しいロシア軍兵士の間に厭戦機運が高まっているというのも無理からぬことだ。
米国防総省によれば、ロシア軍の1小隊まるごとウクライナ軍に投降したり、車両の燃料タンクに穴を空けて戦闘に参加できないようにしたロシア兵もいたという。

ロシア軍は そうした士気の低い兵士に代えてシリア人義勇兵を採用することも考えていると伝えられるが、それで幹部将校が最前線に出るのが減るのだろうか。
今回ロシア軍は、20人の将官級の幹部をウクライナに派遣したというのでまだ17人いる計算になるが、この侵攻作戦が終わるまでに何人残っていることやら。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】