東日本大震災から11年。震災で当時6歳の娘を亡くし、語り部として活動してきた母親。今回、子供たちにも読みやすいよう漫画を使ったパンフレットを作った。そこには、大人も子供も防災について考えてほしいという願いが込められている。

愛娘の死と向き合いながら

宮城・石巻市の佐藤美香さん(47)。

この記事の画像(20枚)

佐藤さんの長女・愛梨さん。11年前の3月11日、大きな地震の後、高台にあった幼稚園から園のバスに乗せられた。

園児を送り届けるためバスは海側へと走り、高台に戻ろうとしたこの場所で、津波とその後に起きた火災に巻き込まれた。

佐藤美香さん:
あの日から止まってしまった時計は、私の心の中にあって、今現在を生きている時計もある。語り部をやったり、伝え続ける活動をする中で、自分たちが伝えることによって、今後に生かしてもらいたいという思いは、震災直後に比べたら大きくなったと思う

佐藤さんはこの11年間、愛梨さんの死と向き合いながら、二度と同じ悲劇を繰り返してほしくないという思いで、語り部の活動を行っている。

そして、2022年、新しい取り組みを始めた。防災の大切さを呼びかけるパンフレットの作成。

佐藤美香さん:
私たちはこういう冊子を作ることによって、次に生かしてほしい、教訓としてほしいと思っている

命を守れるように、東日本大震災を知ってほしい

小さな子供でも想像しやすいよう、漫画の形にした。

パンフレットから抜粋
「バスは高台までたったあと数十メートルの場所で被災してしまいました」

「先に真っ黒に焼けた園バスが見つかりました」

「海風が吹くだけでホロホロと崩れ落ちる 我が子をぎゅっと抱きしめることもできません」

イラストを担当したのは、多賀城市出身のイラストレーター・アベナオミさん。アベさんは、愛梨さんが見つかった場所で佐藤さんから一つ一つ説明を受け、あの日起きたことを忠実に描いたという。

佐藤美香さん:
私自身も震災を経験して、こういうパンフレットがあったら良かったと思うし、知っているのと知らないのとでは違ったと思うので、震災前にこういうのがあったら娘と一緒に読んでみたかった

2022年2月24日、佐藤さんはオンラインで語り部を行った。相手は鹿児島県の小学5年生と6年生。11年前は生まれたばかり。紙芝居を使いながら当時のことを説明し、最後にパンフレットを配った。

佐藤美香さん:
持ち帰った後におうちの人たちと、これを見てほしいと思います。そしてきょう聞いたお話をおうちの人にしてみてください

鹿児島県の小学生:
お母さんは東日本大震災のことを覚えていると思うから、その時どう思ったのかを聞いてみたり、家で避難場所を確認したりしようと思う

あの日から11年。佐藤さんは大人も子供も「考えてほしい」と願いを込めて、これからも伝え続けていく。

佐藤美香さん:
避難誘導を大人がちゃんとできれば、助かる命がそこにはあって、子供たちは大人がちゃんと行動すれば、その指示に従うことはできるので、大人の人には日頃から考えていてほしい

伊藤瞳 アナウンサー:
子供たちには何を願う?

佐藤美香さん:
自分の命は自分で守れるようになるために、少しでも東日本大震災で起きたことを知ってほしい。自分がどう行動したら良いか考えてほしい

パンフレットの最後にはこんなメッセージが書かれている。
「この先、皆の命が助かるように…。そして、もう二度とこのような悲劇が繰り返されないためにも…」

(仙台放送)

仙台放送
仙台放送

宮城の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。