8年前、神奈川県・川崎市の老人ホームで、入所者の男女3人が相次いで転落死した事件で、殺人の罪に問われた、元職員・今井隼人被告(29)に対する控訴審の判決公判が、午後2時から開かれた。東京高裁は、死刑を言い渡した一審判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。裁判長は、主文を後回しにして、量刑の理由などを告げた後、判決を言い渡した。
起訴状などによると、今井被告は、当時、勤務していた川崎市の老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、2014年11月、87歳の男性を4階のベランダから転落させ、翌12月には、86歳の女性を4階のベランダから、また同じ月に、96歳の女性を6階のベランダから転落させ、いずれも殺害した罪に問われている。被害者はいずれも同老人ホームの入所者。
防犯カメラなどの直接証拠がない中、神奈川県警は、状況証拠を積み上げ、3人が転落した時間帯に勤務していた今井被告の犯行と断定。2016年2月、逮捕に踏み切った。今井被告は、逮捕直後には、関与を認めていたが、裁判が始まると、一転して無罪を主張。
一審の横浜地裁は、2018年3月、捜査段階での自白の信用性を認めた上で、「人間性の欠片も窺えない冷酷な犯行態様」として死刑判決を言い渡し、被告側が控訴していた。
きょうの判決で東京高裁は、一審と同様に、自白の信用性を認定。動機についても「日々の業務の鬱憤(うっぷん)を、入所者の言動を契機に高じさせた」と指摘した。そして「被害者は3人にものぼり、殺意は強固で、老人ホームの職員である立場を利用した犯行の悪質性は際立っている」と断罪。「極刑をもって臨むことはやむを得ない」として今井被告側の控訴を退けた。
判決に先立ち、今井被告は、先月、FNNの面会取材に応じていた。その際は「焦りもあります。恐怖感もあります」と心境を明かし、「何もやっていないという主張は、未来永劫変わりありません」などと話していた。