3月2日にも開かれるとロシアメディアが報じていたロシアとウクライナの2回目の停戦協議は、一転して週末になる見通しになった。そうした中、ロシア軍は首都近くの町の住宅を爆撃するなど、市民への被害がさらに拡大している。

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テレビ塔をミサイル攻撃

3月2日で7日目に入った、ロシアによる軍事侵攻。攻防の主戦場はウクライナの首都キエフだ。市内では1日、テレビ塔にミサイルが撃ち込まれた。

撮影者:
ロシアのやろう、何やってくれてんだ。また攻撃しそうだ。まだ塔は倒れていないけど、倒れたら家に当たるかもしれない。

破壊されたテレビ塔付近は一面灰色に染まり、消防隊は懸命の消火活動に追われた。国民の情報源となるテレビを標的とした今回の攻撃で、ウクライナ当局は付近にいた5人が死亡したとしている。

東部ハリコフ、西部ジトーミルへの攻撃激化

ハリコフ市内では2日、警察本部が入る建物が攻撃を受けた。

建物からがれきが落下しているのがわかる。

そして、首都キエフの西にあるジトーミルでは1日、住宅地に巡航ミサイルが撃ち込まれた。

炎が立ち上り、一面瓦礫の山となった。

ジトーミル市長は着の身着のままの姿で、近くの病院も被害に遭ったことを伝えた。東のハリコフと西のジトーミルへの攻撃は激しさを増している。

“5日以内にキエフ陥落”と米国防総省

テレビ塔が破壊された首都キエフにもロシアの地上軍が迫っている。

ロイター通信によると、全長64kmに及ぶロシア軍の車列は、1日時点でキエフまで25kmの位置に陣取っている。アメリカ国防総省は、「キエフは5日以内に陥落する」「経済制裁のプーチン大統領へのダメージは限定的だ」との見方を示している。

“キエフが5日以内に陥落”。そうした分析がなされるほどキエフは危機的な状況だ。それでもな孤軍奮闘するのは、ウクライナのゼレンスキー大統領だ。

ウクライナへの連帯、孤立化するロシア

EU(ヨーロッパ連合)の議会では、各国の代表がウクライナの国旗を身にまとい、連帯をアピールした。

ウクライナ ゼレンスキー大統領:
私たちは自分の権利や自由、生きるため、生き残るために戦っています。皆さんは私たちと一緒にいることを証明してください。皆さんは私たちを放置していないことを証明してください。

ゼレンスキー大統領のオンラインでの演説の直後、EUの議員らは大きな拍手でウクライナへの連帯を示した。

ウクライナ側の声は、訪問先のポーランドで会見を開いたイギリスのジョンソン首相にもぶつけられた。質問に立ったキエフ出身の女性記者が「NATO(北大西洋条約機構)は何もしていない」とジョンソン首相に詰め寄ったのだ。

記者は「NATOは第3次世界大戦を恐れているので我々(ウクライナ)を守りたくないが、第3次戦争はすでに始まっている。ウクライナの子どもたちが攻撃されている」「プーチンの子どもたちはオランダやドイツのマンションで暮らしている。そのマンションは没収されたのか?そんなことはない。家族たちが泣いている。どこへ逃げれば良いのか。これは現実だ」と涙ながらに訴えた。

この訴えに、ジョンソン首相は「今日ここに来てくれてありがとうございます。軍事介入はできないが支援する」と答えるにとどめた。

世界各国からのウクライナ支援が大きな焦点となる一方、ロシアの孤立化が際立つ場面があった。1日に行われた国連人権理事会では、ロシアのラブロフ外相がオンライン形式で演説すると、アメリカやEUなどの代表団が相次いで退席し、軍事侵攻に抗議する意思を示した。

アメリカのバイデン大統領は、初の一般教書演説で「独裁者らに“侵略の代償”を払わせなければ、さらなる混乱をもたらす」と述べ、プーチン大統領の責任を追及すると語気を強めた。

義勇兵志願者は国外からも

攻勢を強めるロシアにどう対抗するのか。ウクライナ国内では、国を守るために立ち上がった市民、いわゆる「義勇兵」が列を作っていた。志願者の女性は「私は救急医です。男性と一緒に防衛隊に参加して、必要な支援をしていきたい」と話した。

ゼレンスキー大統領が外国人部隊を編成すると発表してから、ヨーロッパ各国では応募者が増えている。

ロンドン市内でジムを経営する37歳のリオン・ドーソンさんもその一人。すでに外国人部隊への申し込みを済ませ、大使館からの連絡を待ちながら出発の準備を進めていた。鍛え上げられた体のドーソンさんだが軍事経験はない。それでも、必要とされれば兵士として現地で訓練に臨む覚悟もあると話す。

リオン・ドーソンさん:
ニュースを見て、こんなことがあってはいけないと思った。ヘルメットなどの準備は昔、海軍にいた友人が貸してくれたんだ。

――怖くないですか?

リオン・ドーソンさん:
怖いです。でも私の恐怖を考えたら、ウクライナにいる人の恐怖は2倍でしょう。

義勇兵に志願する動きは日本でも広がっている。在日ウクライナ大使館は、2月27日にツイッターを通じて義勇兵を募集した。

1日、すでに約70人から応募が来ていることをウクライナ大使がBSフジの番組で明らかにした。

海上自衛隊で6年勤務していたという20代後半の男性は、条件次第では義勇兵に志願することも考えている。

義勇兵への志願を考えている男性:
不安はいっぱいあります。実際現地に行って助けたいという気持ちもありますし、現地の現状を知ってそれを日本人にも広く知らせたい。

2回目の直接協議の行方は…

こうした中、ロシアとウクライナによる2回目の停戦交渉に向け、新たな情報が入ってきた。ロシアメディアは、当初2日にも行われるとの見方もあった2回目の直接協議について、おそらく今週末に行われるだろうと伝えた。

1回目の協議では、ロシア側がウクライナの非武装化と中立化を要求。対するウクライナ側は即時停戦と全土からの撤退を求めたものの、結論は出なかった。

ゼレンスキー大統領は、交渉の前提条件としてロシア側に攻撃をやめるよう訴えている。

交渉中であっても攻撃を止めないロシアの狙いは何なのか。ロシア情勢に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治氏は、軍事的に追い詰めた状況で交渉することでロシア側が交渉を優位に進め、交渉の中身をより有利にしたい狙いがあるとみている。

大きなヤマ場となるとみられる2回目の直接交渉。その行方は依然不透明だ。

(「イット!」3月2日放送分より)