衣類をリサイクルした商品棚

循環型のファッションを目指すH&Mが、店舗もまた地球への優しさであふれるようにした。

3月1日に東京・池袋にオープンするアパレル大手H&Mの新店舗。ここはH&M初の"地球に優しい"店舗だという。

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一体、どう地球に優しいのかというと・・・

店舗の一部に導入したのは、リサイクルボード・PANECO(パネコ)を使用した商品棚。パネコは、輸送や販売の際に穴があいたり、ほつれてしまった不良品から作られている。

衣類を原料に作られていることで、和紙に似たような触り心地がする。

90%以上が繊維でできているにも関わらず、木材と同様の強度があるというパネコ。また、木材のように加工もしやすいため、ハンガーやS字フックなどでも取り入れている。

地球に優しい点は他にもある。

H&Mジャパン広報・田中都さん:
こちらのパネコは使用後も再度粉砕してまた新しいパネコに生まれ変わらせることができます。

何度でもリサイクルができるため、廃棄することなく循環させることが可能だという。

"循環型ファッション"を目指すH&Mでは、2013年から店舗で古着回収サービスを展開。
2020年は海外店舗も含め年間1万8000トン以上もの洋服を回収しリサイクルなどを行っている。

今後は古着からも商品棚などを作り、日本国内だけではなく海外の店舗での導入を目指す方針だ。

H&Mジャパン広報・田中都さん:
一番は洋服を長く着ることが環境への負荷が少ないので、できるだけ長く着て頂いて、それでも不要になったものはぜひ捨てずに弊社にお持ち頂いて、今後はお店を増やすのもそうだが店舗の中でどれだけパネコを使ったものを導入できるかというのも含めて、どんどん広げていけるように取り組んでいきたい。

衣服の大量廃棄による環境負荷が懸念されるなか、様々な手を打つアパレル業界。
今後もサステイナブルな取り組みが広がっていきそうだ。

"らしさ"を感じさせる店舗づくり

三田友梨佳キャスター:
マーケティングや消費者行動を研究されている一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。H&Mの新しい店舗づくりをどうご覧になりますか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
H&Mは店舗づくりにおいても循環型ファッションを表現することで、ブランドイメージを強化しようとしています。企業にとって店舗は、消費者に魅力的な買い物体験を提供するとともにブランドのメッセージを伝える大切な場所となっています。

三田キャスター:
店舗がブランドメッセージを伝える場として成功している企業にはどんな例があるのでしょうか?

鈴木智子さん:
店舗をブランド構築の手段として有効に活用している例としてスターバックスがあります。 スタバの店舗はコーヒー文化を伝える場所として追求されています。

コーヒーと店舗空間を通して目や耳で楽しみ、口が喜ぶなど五感が心地良さを感じる場所になっています。そして「サードプレイス」と言って、自宅や職場、学校の他にあなたが寛げる「第三の場所」が ここにあると消費者に思わせています。つまり、"スタバらしさ"を表現する店舗づくりにスタバは成功しています。

三田キャスター:
"らしさ"を感じさせる店舗づくりがブランド構築のカギなんですね。

鈴木智子さん:
これまでアパレルのリアル店舗の強みは試着できるなどの体験にありましたが、ARやVR、さらにはメタバースなどのテクノロジーの進化によりオンラインでも試着体験が可能になるなど、今後のリアル店舗の意義が問い直されます。

今回のようにH&Mが "らしさ"を消費者が体験できるよう戦略的な活用を始めたように、リアル店舗の役割をとらえ直すことがいま求められているように思います。

三田キャスター:
リアルな空間でブランドの世界観を体験することはブランドへの理解や愛着へとつながるはずです。リアル店舗にしかない強みをどう生かしていくのか、また時代に即して変化させていけるのか。EC市場が成長著しい今だからこそ、より問われているのかもしれません。

(「Live News α」2月28日放送分)