日に日に緊迫度を増していく「ウクライナ情勢」。バイデン大統領は、日本時間2月23日未明、厳しい制裁措置を表明しました。
めざまし8では、なぜこのような事態になってしまったのか解説しました。

「生きるのが怖い…」現地住民語る生活への影響

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ウクライナ出身 ダリアさん:
両国とも私の母国で、そういうウクライナとロシアは戦争の一歩手前にあるという状況にすごく心が傷んでます

こう話すのは、日本に住んでいるウクライナ人のダリアさん。
ドネツク州の近くに家族が住んでいるといいます。
2月22日、ダリアさんは家族の安否を確認するため、ウクライナにいる祖母に電話しました。

ドネツク州の隣ザポリージャ地域に住む祖母:
ザポリージャには大きな橋があるのだけど、軍の方で規制されている。
(地域の)お店では、みんな買いしめを行っているの。パニックになっているわ。
生きるのが怖い状態になってしまった

ドネツク州に続く橋は、ウクライナ軍が規制。その緊張が街にも影響しているといいます。
祖母がダリアさんに伝えたのは、家族の身に迫りつつある軍事衝突の危機でした。

さらに、ダリアさんは今回の事態で、家族の間にも心配事があるといいます。

ウクライナ出身 ダリアさん:
父はウクライナ人で、母はロシア人です。
子どもの頃からロシアにもウクライナにも住んだことありますし、頻繁に行ったり来たりしていました。両国の一般的な生活を体験してきました。
私の母方の親せきの中に、軍人が多いんですね。
私の母もそうですし、ロシアという国は良くも悪くもそういう気持ちで育てられてて、軍人が多くて…本当に家族の中で戦争が起こりうるという気持ちで、本当につらいです

ロシア軍に親族がいるという、ダリアさん。
このまま状況が悪化し、ウクライナとロシアが軍事衝突した場合、親族同士で争うことになる可能性があるというのです。

市民の生活を圧迫しているウクライナ情勢。
国際社会に緊張が高まる中、なぜこういった事態になっているのでしょうか。
ウクライナ出身の国際政治学者、グレンコ・アンドリーさんに話を聞きました。

専門家「プーチン氏が制裁と天秤にかけ局地戦争か」

(Q.ロシアとウクライナの軍事衝突は今後起こる可能性がある?)
ウクライナ出身の国際政治学者 グレンコ・アンドリーさん:

プーチン大統領の思惑としては、戦争を起こしたいと。
なぜなら、プーチン大統領はウクライナを支配したいと野望を強く持っているから、プーチン大統領の思惑通りにいけば戦争が起こります。
ただ、アメリカを始め民主主義諸国は、必死にロシアに対して「戦争を起こさない」「侵略をさせない」というメッセージを出していて、戦争をした場合は最大限の制裁を科すと。
つまり、ロシアの経済を壊滅させるほどの最大限の制裁措置を実施すると警告しています。
その状態の中で、プーチン大統領が自分の侵略をしたいという思いと、来るであろう制裁に対する損害を天秤にかけて、どっちが重いのかを計算しているところです。
制裁の方が重いと考えたら、大規模侵攻は起きないし、そうでない場合は大規模侵攻が起きる可能性が高いです。
その中で、大規模侵攻つまりウクライナとの全面戦争という可能性があると同時に、限定的な戦争の可能性もあります。
限定的な戦争の場合は、全面戦争と比べると損害は少ないので、ロシアとしては実行しやすいです。今は残念ながら、局地戦争に限定していえば戦争が起きる可能性は高いです。
ウクライナ情勢の背景を見ていくと、そもそもロシアとウクライナで戦闘状態にあった地域があります。それが、親ロシア派が支配していたルガンスク、ドネツク、ロシアとの国境に位置している東側の地域です

異例の事態「一方的独立承認」を国連が批判

この地域は、親ロシア派の武装勢力が支配していて、ウクライナ軍と軍事衝突が起きていて、元々ロシア系の住民が非常に多い地域となっています。すでに60万人以上がロシア国籍を取得したとされています。

そんな中、22日に「ルガンスク人民共和国」「ドネツク人民共和国」としてロシア議会が独立を承認しました。
独立承認により、ウクライナに入っていくロシア軍が平和維持のための部隊となり、いつでも派遣可能になりました。
つまり、独立国の平和を守るための軍隊という名目が立ったという、ロシア側の思惑があるようです。

国連のグテーレス事務総長は、ウクライナの領土保全と主権を侵害するものであり、国連憲章の原則に反していると強く非難。
国連の常任理事国でもあるロシアに対し、事務総長が批判をするのは異例の事態だといいます。

フジテレビ報道局解説委員 風間晋:
国連を会社組織に例えていうと、常任理事国というのは創業家出身の役員です。
一方で、事務総長というのは期間限定の雇われの経営者です。
そうすると、創業家の人たちのご機嫌を損ねてしまうと会社経営が上手くいかない。だから、事務総長は基本的には批判はせずに、なだめたりしながら国連を転がしていきます。
ところが今回の場合、ロシアがやっていることというのが、会社のよって立つ基本的な原理・原則に反しているので、これは見逃すことができないということで異例の批判、名指しの批判になったのだと思います

また、ロシアのプーチン大統領は22日の記者会見で、ウクライナ東部の紛争解決を目指す「ミンスク合意」について、ウクライナ側の不履行とロシア軍による親ロシア派支配地域の独立承認により、存在しなくなったと指摘しました。

フジテレビ報道局解説委員 風間 晋:
合意によって、ロシア軍が反政府勢力の支配地域に入るということはありえないことです。
でも、合意が存在しなくなったので、ロシアは親ロシア派の保護のため、ロシア人を助けるために自分たちの軍隊を進めることが可能だという理屈です。
あくまでもプーチン大統領が言っているのは、「これはあくまでも派遣」と言う形で侵攻ではないということです。

ウクライナの“NATO”加盟希望が原因か

そもそもロシアとウクライナの間に、どうしてこういった事態が起こっているのか。その背景にあるのがNATO(北大西洋条約機構)の存在です。

元々NATOは、旧ソ連の脅威に対抗するために、欧米諸国をメンバーとする集団防衛組織を作りました。
現在の加盟国は30カ国になっていますが、1990年当時は赤いマークが旧ソ連、NATOに入っているのが青のマークとなっていおり、国境に接していないことがわかります。
一方で、現在はNATOとロシアの国境が接している所もあり、ウクライナは大部分がロシアとの国境となっています。

そんな中、今回ウクライナがNATOへの加盟を希望している。ロシアにとっては、ウクライナを緩衝地域にしたい。そういった思惑がある中で、2021年12月にプーチン大統領は、NATOは「東に1センチたりとも移動しない」と言ったが大嘘だった、私たちは騙されたというふうに話しており、青い地域が国境ラインに入ってくることを非常に嫌っていることがわかります。

隣接をしたくないということですが、ロシアにとってウクライナとは戦略的に大事な場所なのでしょうか。

ウクライナ出身の国際政治学者 グレンコ・アンドリーさん:
この場合は戦略的というよりも、思想や価値観として非常に大事な場所です。
NATOが拡大すると危ないという話がありましたが、ロシアは何が一番嫌がるかというと、NATOは集団防衛体制なので、NATOの加盟国に対する攻撃というのは全加盟国に対する攻撃とみなし、反撃するという非常に強力なものです。
そこにウクライナが加盟すると、ロシアはこれ以上ウクライナに対して軍事攻撃できなくなります。ですが、ロシアは非常に強い思いでウクライナを支配したいという考えがあります

ウクライナがNATOに加盟すれば、これ以上ウクライナを征服できなくなる。その為にロシアの野望が崩れるので、必死にウクライナのNATO加盟を妨害しようとしています。
そもそもなぜ、ウクライナをそこまで支配したいのかというと、ソ連崩壊によって失われた地域をもう一度取り戻したいという思惑が透けて見えます。
もう一つは、ロシア帝国の時代はウクライナ民族とロシア民族は一つの民族だというふうに言われていたので、その思いが今のロシア人にも残っているおり、それをもう一度復活させたいという考えがありそうです。

今後、国際社会はどのような対応をとっていくのでしょうか。

米「軍事侵攻の始まり」…世界はどう対応?

まずは、アメリカ・バイデン大統領の反応です。
強い言葉で、これはウクライナへの軍事侵攻の始まりだというふうに話しています。また、ロシアの銀行などを対象に大規模な経済制裁を行うことを表明しました。さらに、軍事侵攻が続くようなことがあれば「さらなる制裁で対抗」すると話しています。

また、EUはロシア政府に対し、アクセス制限を発表。さらには、ドイツがロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の承認作業停止や、イギリスがすでにロシアの5つの銀行と3人の実業家に制裁を加えていることを明かしました。
また、日本も国際社会と連帯し、制裁を含む対応を調整するということです。

国際社会の制裁措置は、ロシアにとって歯止めとなるのでしょうか。
“ギリギリの攻防”が続いていきます。

(「めざまし8」 2月23日放送)