医療関係者への敬意を表明

天皇皇后両陛下は、4月10日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の尾身茂副座長から現状についてのご進講を受けられました。午後5時半からのご進講は40分の予定のところ、午後7時までの1時間半にも及ぶものでした。

天皇陛下は冒頭で、
「尾身さんが、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の副座長として、新型コロナウイルス対策に大変尽力されていることに深く敬意と感謝の意を表します。また、これまで、日夜、現場で医療などに携わってこられている多くの関係者のご努力を深く多としています」

との趣旨のことばを述べ、尾身副座長を含め現場で力を尽くす医療関係者に感謝の言葉を述べられたということです。

医療関係者への敬意と感謝の意を表された天皇陛下
医療関係者への敬意と感謝の意を表された天皇陛下
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さらに「現在、世界各地で新型コロナウイルスが猛威をふるっています。我が国でも、人々の努力と協力により、爆発的な感染がなんとか抑えられてきましたが、このところ東京などを中心に感染拡大の速度が速まってきていることなど事態の深刻化が懸念されております。医療提供体制のひっ迫が現れ始めていると聞き、先日は、政府による緊急事態宣言も出されました」と、感染者の人数が増えている現状を憂慮されています。

そして、「この度の感染症の拡大は、人類にとって大きな試練であり、我が国でも数多くの命が危険にさらされたり、多くの人々が様々な困難に直面したりしていることを深く案じています。今後、私たち皆がなお一層心を一つにして力を合わせながら、この感染症を抑え込み、現在の難しい状況を乗り越えていくことを心から願っています」という様なお言葉を尾身副座長にかけられたということです。

「心を一つにして頑張る時期」

これまでも世界は、戦争・飢饉・疫病に苦しめられてきました。そして、現在も苦しむ人たちが世界中にいます。天皇皇后両陛下は、この新型コロナウイルスの感染拡大という危機を案じ、日本のみならず世界の人たちに心を寄せられています。

尾身副座長によれば、ご進講の中で、両陛下は「心を一つにして頑張る時期」という言葉を何度も繰り返されたそうです。

尾身茂福座長
尾身茂福座長

尾身副座長は、まず、ソーシャルディスタンスの効果、そして、症状が出ていない潜伏期から感染することや8割の人の症状が軽いことなどの新型コロナウイルスの特徴について説明したそうです。

両陛下からは、「オーバーシュートを回避するには何が必要なのでしょうか」、またSARSウイルスとの違いなどについて質問があったということです。

そして、「国民が一丸となって乗り越えなければいけない病気なのですね」「一人一人の自覚が必要なんですね」と述べられていたといいます。

ご質問の中では、欧州との違いや子どもたち、若い人たちにも感染する病気だと言うことをよく調べていらっしゃる様子だったということです。

保健所や医療現場で働く方々への想い

尾身副座長は、両陛下から、「一般国民も不自由な生活について、みんなこの試練を乗り越えてほしいという気持ちはよくつたわってきました」「保健所や医療関係者が毎日不安の中でオーバーワークしているという話をした時『大変ですね』と。特に現場の人への共感というか是非健康に頑張る、耐えて頑張ってほしいというねぎらいの気持ちが非常によく伝わってきました」と感想を述べています。

熱心にご進講を受けられる天皇皇后両陛下
熱心にご進講を受けられる天皇皇后両陛下

天皇陛下は5月のご即位以来、「象徴」としての道を歩み始められました。その道が孤独でつらい道であることは、これまでの天皇の姿からも私たちにも想像がつくものです。

両陛下は「この困難を乗り切るためにも国民に心を一つに」「医療現場に対する労い」という気持ちを示されています。

このように、今大切な問題を的確に捉え、国民に寄り添おうとされています。今後は、将来に向けて問題が解決に向かうときに、見落とされている人たちはいないか、さらに困難になる人はいないか・・・そういった人たちに寄り添っていただくために、専門家の人たちや現場の人たちから話を聞く機会をさらに持って、いろいろな角度から情報を得ることで、象徴としての道を歩んでいただきたく思っています。

日本だけでなく世界の平和と安寧を祈り続けられている両陛下に私たちは、敬愛と信頼を寄せているのですから。

【執筆:フジテレビ 解説委員 橋本寿史】

橋本寿史
橋本寿史

フジテレビ報道局解説委員。
1983年にフジテレビに入社。最初に担当した番組は「3時のあなた」。
1999年に宮内庁担当となり、上皇ご夫妻(当時の天皇皇后両陛下)のオランダご訪問、
香淳皇后崩御、敬宮愛子さまご誕生などを取材。