手術後に、意識がもうろうとした状態の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつの罪に問われた男性医師(46)の被告について、最高裁は、懲役2年の実刑とした二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。

乳腺外科医の被告は、2016年、当時、勤務していた東京・足立区の医院で、女性患者に対して、乳房から腫瘍を摘出する手術をした後、全身麻酔で、意識がもうろうとしている女性の胸をなめたとされる。
一審の東京地裁は、性的被害を訴えた女性の証言は、麻酔の影響で意識障害が生じる「せん妄」により、幻覚を見た可能性があると指摘。女性の胸から検出された被告のDNA型については「つばが飛ぶなどして」付着した可能性があるとして、無罪判決を言い渡した。
一方、二審の東京高裁は、女性の証言は具体的で信用できるとした上で、女性が、直後に、知り合いにLINEで被害を訴えていることなどから、「幻覚は生じていなかった」と認定し、懲役2年の実刑判決を言い渡した。

きょうの上告審判決で、最高裁は、DNA型鑑定の検査結果について「被害女性の証言の信用性を判断する上で重要だが、なお未だに不明確な部分がある」と指摘。その上で、「それにもかかわらず、鑑定結果の信頼性について審理が尽くされていない」と判断して、二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。


判決後、弁護側は声明を出し、警視庁科捜研が、DNAの試料などをすでに廃棄していることを明らかにした。そして「この状態では、検査の信頼性を客観的に評価することはそもそも不可能」と批判している。
一方、判決を受けて最高検は、「判決内容をよく検討し、差し戻し審における的確な主張・立証に備えたい」とのコメントを出した。