お医者さんの善意の圧力

日本のコロナ対策は、「1人たりとも死なせない」と力むお医者さん達の「善意」の圧力に政治家、官僚、メディアが押されて、先進国で最もゼロコロナに近くなっているのではないかと思っていたのだが、ようやく風向きが変わった。

政府が東京都などの要請を受けて13都県にまん延防止重点措置を出すことを決めた19日、コロナ対策分科会の尾身茂会長は「人流抑制から人数制限にシフトすべき」「ステイホームは不用」と発言。スマホでこの速報を見た僕は「尾身さん良く言った!」と拍手したが、同時に「だったらマンボウいらないぞ」とスマホ画面にツッコんだ。

新型コロナウイルス感染症対策分科会長 尾見茂氏
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この発言に小池百合子東京都知事は「人流と接触機会の削減は基本的対処方針に書かれている」と反論、「国と尾身先生との間で整合性を取ってほしい」と批判した。

あー、アホくさい。

尾見会長の言葉にかみついた小池都知事

小池百合子を首相にしたくない理由

医者がもういいよと言ってるのになんで政治家がダメって言うんだろ。こういう「科学を権力が受け入れない」というのは独裁国家ではよくある話だが、民主主義国家ではダメだ。

僕は常々小池百合子氏の事を評価しているのだが、首相に推す事を逡巡するのはこういうところなのだ。政治家が非科学的なポピュリズムにある程度陥るのはしょうがない。だが最後の砦は守ってほしい。安倍さんも菅さんも守った。実はキッシーも何とか守ってる。百合子はそこが甘い。

尾身氏ら専門家有志が21日に出した提言は当初「県をまたぐ移動制限は不要」「若者は検査せず」「人流抑制より人数制限」という過激な内容だったが、最終的には「移動制限不要」と「若者検査せず」はいずれも削除、人流抑制については「知事の判断であり得る」と付け加えられ、骨抜きにされた。尾身さんらの提案はどうやらフライングだったようだ。

生き残るためにすべきこと

この混乱については国会でも24日、立憲民主の長妻昭氏が「県をまたぐ旅行に行っていいのか」と岸田首相に詰め寄っていたが、長妻さんもいい大人なんだからそんなことは自分で考えて決めなさい。日本では移動の自由は憲法に保障されてるの。必要なら感染対策をして行けばいいだけの話。いちいち国家権力に許可取らなくていいんです。あーイライラする。

衆議院予算委員会(1月24日)

野党やメディアは尾身さんのフライングに否定的である。政府や自治体も戸惑っている。だが国民はもうお上の言うことは聞かないのではないか。若者は検査を受けない、人流抑制はしない、ステイホームもしない。だって尾身さんがしなくていいって言ったんだから。

ちなみに政府は提言を受け「若者は自分で検査して受診せずに自宅療養可能」と発表した。しかし現状で検査キットは不足している。オミクロンで今一番問題なのは「症状は軽いが感染力が強い」ため陽性者が増え、濃厚接触者が加速度的に増えることにより、保育園などの休園や自宅待機で社会機能に急激にブレーキがかかっていることだ。しかも重症化する人はごく一部で多くは無症状または軽症である。

一体どうすればいいのか。熱が出れば家にいる、下がれば復帰する、検査は受けない、という人が増えるのではないか。検査を受けて病院で薬をもらう方がもちろん安心なのだが、オミクロンの場合は例の「2類相当」のため自宅待機10日とか、濃厚接触で合わせて20日とか余計なものがついてくる。それでは自分の生活を守れない人がたくさんいる。

検査を受けた方が感染拡大防止に効くことはわかっている。濃厚接触者の自宅待機も効果はある。だがお上の言うことを聞いても自分たちの生活が守れないのなら、自分で正しいと思うことをするしかない。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫


フジテレビ報道局上席解説委員。2020年4月から立命館大学客員教授。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。

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