119番通報「女性がトラに襲われた」
雪がちらつく1月5日朝の栃木・那須町。事故は開園前のサファリパークで起きた。
この記事の画像(13枚)「女性がトラに襲われた」との119番通報がサファリパークから入ったのは、午前8時半ごろだった。
佐久間みなみアナウンサー:
入り口には規制線が張られていて、事故を受け現在は臨時休園となっています。入口の奥に見えるあの獣舎で飼育員3人がベンガルトラに襲われたということです
飼育員3人を次々と襲ったのは、11歳のオスのベンガルトラ「ボルタ」。
警察などによると、飼育員4人がトラの飼育舎で開園の準備をしていたところボルタが26歳の女性飼育員にかみつき、さらに女性飼育員を助け出そうとした24歳の男性と22歳の女性の飼育員もかまれた。
那須サファリパーク 葛原直人 支配人:
3名とも主に頭部を(かまれた)。上半身、頭部の骨折、裂傷と。
最初に噛まれた女性飼育員はドクターヘリで、他の2人は救急車で搬送され、いずれも意識はあったという。
安全確認・点検時にトラと遭遇
飼育員を襲ったボルタは、体長約2メートル、体重約150キロ。「ゴールデンタビー」と呼ばれる黄金の毛色を持つ、世界で約30頭しかいないベンガルトラだ。
2022年は寅年とあって、記念イベントも行われるなどサファリパークの人気者だった。
なぜ飼育員を襲う事態となったのか。
――通常はトラと人間は同じ場所にいる?
那須サファリパーク 葛原直人 支配人:
いませんね。今冬期なので凍っている部分とかありますから、そのあたりを確認してその後に動物を出すという作業に入るんですが、トラを出す前の段階ですね。安全確認と点検の時に起きた事故です
普段であればボルタは右から3番目の獣舎の中にいて、飼育員と同じスペースにいることはない。
しかし5日朝、飼育員がキーパー通路と呼ばれる飼育員の作業スペースから一番左の獣舎とアニマル通路と呼ばれる場所を通り展示スペースに出ようとしたところ、獣舎から出ているボルタと遭遇。
その後、キーパー通路の隅で襲われているところを発見され、助けに入った2人も次々と襲われたという。
獣医師がボルタを麻酔銃で眠らせ、襲われた飼育員を救助した。
――事故が判明した経緯は?
那須サファリパーク 葛原直人 支配人:
女性スタッフがトラから攻撃を受けて、その時に叫び声を上げた。そのトラの個体の名前を呼んだり、「わー」みたいな、そういうふうに聞いています
1997年と2000年にも事故
那須サファリパークでは、1997年と2000年にも飼育員がライオンに襲われる事故が起きた。この時は、扉の閉め忘れや鍵の確認ミスなどが問題視された。
――再発防止策は?
那須サファリパーク 葛原直人 支配人:
指導に基づいた徹底したマニュアルを作成して、安全対策はしていたと思っています
“起きてはいけないミス”が起きた
人に危害を及ぼすおそれがある特定動物の専門家は、“起きてはいけないミス”が起きてしまったと話す。
特定動物の専門家・白輪剛史さん:
(トラは)イレギュラーなことがあって、普段だったら絶対目の前にいない人間がいて、本能的に目の前にいる人間を襲ったということですね。同じ場所に入ってしまったというのがなぜ起きたのだろう
那須サファリパークは、襲われた3人の詳しいけがの状態は分かっておらず、しばらくは休園するとしている。
また、ベンガルトラのボルタについては「トラが悪いわけではない」として、今後の展示内容について検討したいとしている。
(「イット!」1月5日放送より)