トラが見せた肉食獣らしからぬ“猫っぽい姿”が「かわいい」と話題になっている。

動物園巡りが趣味のrikuさん(@rikunow)が新年の挨拶と共に「寅年!ということでトラに会いに行ったら、大きなネコがいました。」とのコメントで投稿したのは、門松をおもちゃにしている一頭のアムールトラの様子を撮影した動画。

門松にパンチ!
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訪れた静岡県にある浜松市動物園で撮影したもので、トラは体勢を低くし、前脚を伸ばしちょいちょいとじゃれている。

門松が動く度に大げさに反応し、猫パンチならぬトラパンチを打ち出す姿は、まさしくおもちゃにじゃれる猫のようだ。門松にビビっているのか、パンチを打っては後退するヒットアンドアウェイを繰り返す姿も猫っぽい。

猫がおもちゃにじゃれているよう

撮影者であるrikuさんもこの様子には、「ネコパンチならぬトラパンチを繰り返している様子が、見ていてとても可愛かったです」と話しており、トラが大きな猫のようだったという。

門松が動くとビビっているのか大きく反応することも

この無邪気なトラの様子にはTwitterでも「可愛い!」「かなり大きなネコだ~」といったコメントが寄せられ、4万以上のいいねがつき、動画は60万回以上再生されるなど話題となっている(1月12日時点)。

肉食獣で大きな体のトラであっても、こういった仕草を見せてくれると、ネコ科であることを思い出させてくれる。

警戒半分、興味半分「何だろう?」といった反応

猫のように門松にじゃれる様子は確かにかわいらしいが、トラは門松をどのように思っていたのだろうか?そして、猫っぽい生態は他にもあるのだろうか?

浜松市動物園のトラ担当飼育員の川崎大輝さんに話を聞いた。

ーー浜松市動物園で飼育しているトラについて教えて。

当園で飼育しているのはアムールトラという、トラの仲間の中では一番大きな種類のトラです。大きなオスのトラだと300キロくらいになると言われています。ロシア南部から中国北部にあるアムール川のほとりに住んでおり、別名シベリアトラとも言います。
野生だとヘラジカやイノシシといった草食動物を狩って暮らしています。動物園では肉食動物なので基本的に馬肉や鶏肉などといったお肉を食べています。


ーートラたちは普段どのように過ごしているの?

室内と外の運動場と2つの場所があり、夜の間は安全管理も含めて部屋の中にいます。日中は外の運動場に出て、ゴロゴロと寝ていたり、子どもだったらはしゃいだり、きょうだいでじゃれあったりしています。

あと、アムールトラはネコ科の中では珍しく水を怖がらない種類で、運動場にある堀みたいな所で、水の中に入って泳いだりもしています。

(提供:浜松市動物園)

ーーでは話題となった動画の門松にじゃれるトラについて教えて。

2021年2月に生まれた4頭の中の1頭、雄のトートです。現在約10カ月ちょっとと1歳にもなっていない子です。トートは割と何にでも物怖じせずに、初めて見る物にも好奇心旺盛にグイグイいくようなタイプです。

門松を見たのが初めてで、他のきょうだいたちはびびっている子もいましたが、トートはあまり怖がらずにびびって近寄らないということはなく、腰は引けていましたがチョイチョイ突っついたりしていました。

腰は引けているがパンチを繰り出している

ーートートは門松をどう思っていたの?

敵というよりは「見慣れない物があるから何だろう?」というのが一番だと思います。初めて見た物に警戒半分、興味半分みたいな感じですかね。門松をツンツンとしているのも遊んでいる感じで、攻撃を仕掛けているわけではないです。

トートに限らず、みんな初めて見るものにはある程度警戒しますので、話題になった動画のタイミングではトートしかいませんでしたが、別のタイミングでは他のきょうだいたちも門松に近寄って、触ったり匂いを嗅いだりしていたので、他の子たちがびびって近寄れなかったとかは特にないです。

門松に興味を示すトラたち(提供:浜松市動物園)

ーーお母さんのトラも子どもたちと同じ反応を門松にしていたの?

最初にお母さんが近づいて匂いを嗅いでいましたね。そんなにつついたりとかはしなかったです。「何だろうなぁ?」って確かめて「何かあるなぁ」というくらいで終わっていました。それは大人だから子どもだからというよりは、性格的なものもあると思います。

(提供:浜松市動物園)

今年の干支が寅年ということもあり、初めて門松を作り、正月の三が日のみ置いてみたんだそう。トラたちは運動場に竹やぶがあるため、竹自体は見たことがあるそうだが、普段何も置いていないところに見慣れない物が置いてあることから、興味を引いたようだ。

初日は5分で破壊。想定していたが「早かった」

ーーでは門松以外にも、初めての物には興味を持って同じ反応をするの?

そうですね。もちろんその子の性格にもよります。日頃の暇つぶしがてらに段ボール箱だったりと遊び道具を入れたりしますが、中には怖がって何週間とたたないと、なかなか近寄らないといった性格の子もいます。


ーー動画の最後には倒されていた門松だが、その後はどうなったの?

あの動画の後は完全にバラバラにされたので、壊されたら次の日の朝に新しいのを出してと対応していました。壊されるのは分かっていたので、最初から三が日分の3セットを作っていました。1日2つで計6つです。

水の堀近くでおなかを出してひなたぼっこ(提供:浜松市動物園)

ーー壊されるのは予想していた?

そうですね。しかし(壊されるのが)早かったですね。初日なんて5分くらいで壊されました。3日目にはさすがに飽きたみたいで多少残っていましたけど…。

壊されるのは予想していたので、釘などは使わずに、トラが噛んだり触ったりしても、壊されても大丈夫な物だけで作りました。


ーー門松にじゃれて遊んだり、壊す様子を見てどう思った?

私が門松を作ったのですが、作った本人からすると、一瞬で壊されたのには「はぁ~」となりましたね。それなりに作るのに疲れたのに、作った時間と比例しないので…。でも、楽しそうにしてくれたので暇つぶしになって良かったなぁとは思っています。全くの無反応よりかは遊んでくれた方がお客さまも喜びますし、トラたちの刺激にもなりますので、そういう意味では作って良かったなぁとも思っています。

(提供:浜松市動物園)

動きの節々で「ネコ科だなぁ」

ーー門松にじゃれるように、トラの猫っぽいなぁと思う仕草はある?

これといった仕草とかではなく、全体的な動きの節々でネコ科だなぁと連想する方がいるんじゃないかなと思いますね。トラはネコ科なので、基本的な毛繕いの仕方や門松に対しての猫パンチの仕方などであったりとか、そういった面で猫っぽい動きをします。あと、猫は顔をきれい洗ったりしますが、トラもします。全身きれいになめて自分で毛繕いする。きれい好きな面は同じですね。

トラだけが大きい猫っぽいのではなく、ライオンやヒョウといったネコ科もみんな猫っぽい動きをします。

なめてきれいにしてあげるのは猫もする(提供:浜松市動物園)

ーー逆に猫っぽくないと感じる面は?

猫は木とかに登ったりすることもありますけど、トラは木登りとかあんまりできないですね。そういう立体的な動きがトラは苦手ですかね。あと、猫は水が嫌いですけど、アムールトラは水に入るので、そういう面はネコ科ですが猫とは違いますね。

野生動物であるトラは猫ほど人になれないです。もちろん顔は覚えてくれますけど、人と距離感があるというか、そういう面はあると思います。


ーー最後にトラの魅力を教えて。

ネコ科の中で一番大きな種類の動物のアムールトラは特になのですが、大きくて見応えがある。迫力があるというのが一番だと思います。

(提供:浜松市動物園)

アムールトラは基本1頭で暮らす動物なのだが、2021年2月に4頭の子どもが生まれ、現在はお母さんと子どもたちが同じ空間で過ごしている。複数のトラが同じ空間にいるのは子育て期間でしか見ることができない貴重な時間だという。

野生では約1年半で独り立ちする。子どもたちそれぞれの成長次第だが、動物園でもそれぐらいの時期を目安に考えているそうなので、親子でいる様子を見られるのは残り半年前後だそう。

(提供:浜松市動物園)

寅年に貴重なトラの親子の交流を見に、そして、猛獣であるトラの猫っぽい仕草を確認しに来てみてはどうだろうか。