政府は12月23日、2022年度のGDP(国内総生産)が過去最高になるとの経済見通しを明らかにした。

政府が閣議了解した経済見通しによると、岸田政権が打ち出した55兆円の経済対策が個人消費や設備投資を下支えすることなどから、2022年度のGDP成長率は物価の変動を除いた実質で3.2%程度が見込まれている。

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緊急事態宣言の解除や政府の経済対策を受け、GDPは2021年度中に新型コロナウイルス感染拡大前の水準まで回復し、2022年度は過去最高だった2018年度の554兆円を上回る556.8兆円に達するという。

ただし、半導体不足や原油などの原材料価格の高騰、オミクロン株のまん延などが経済に与える影響について注視する必要があるとしている。

貯蓄から投資への転換に期待

Live News αでは経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
感染拡大前の水準まで回復する時期は、国が想定していた12月から2022年3月へと遅れるものの、2022年度のGDPが過去最高となると見込まれています。馬渕さんは、この見通しをどう見ていますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
経済を回すのは、GDPの5割強を占める個人消費がカギになってきます。感染拡大によって、外食も旅行も我慢を強いられたことで、使うはずだったお金の多くが貯蓄に回り、これが強制貯蓄と言われていて、30兆円にものぼると今試算されています。これが将来の不安に備えた予備貯蓄に回らないように安心してお金を使う、いわゆるリベンジ消費が起きるように工夫する必要があります

三田友梨佳キャスター:
工夫というと、具体的にはどういったことが挙げられますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
1つは、企業と家計がつながる賃金のアップです。政府は、景気の回復を実感できる賃上げに絞って、税制や補助金など、できることを総動員する必要があります。賃上げこそ、個人消費の起爆剤になるので、関連性のある政策の集中的な打ち出しが求められます

三田友梨佳キャスター:
ただ、最終的に賃上げというのは企業の判断になりますから、これを待つしかないということですか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
実は、国や企業に頼らず個人でできることもあります。それが金融と家計をつなげる金融資産作りです。例えば、アメリカの家計は、自由に動かせるお金の半分以上を株式や投資信託などリスク資産に振り分けています。逆に日本は、貯蓄に半分以上回しているんです。日米ともに金融緩和によって株高となりましたが、アメリカではダイレクトに家計に金融資産が増えました。一方で、日本でその恩恵を受けた方は限られています

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
アメリカでは厚みのある金融資産に支えられて、爆発的なリベンジ消費が起きています。もちろん投資にはリスクがともないますが、海外の状況を知ることで日本の使わない、貯めるという守りの資産づくりが変わっていくことを期待したいです

三田友梨佳キャスター:
オミクロン株の感染拡大や原油高など成長率が下振れするリスクを抱えた状況は続きますが、これまで落ち込みの大きかった個人消費がけん引役として期待されます

(「Live News α」12月23日放送より)