年末の風物詩である除夜の鐘。ここ数年、「除夜の鐘がうるさい」とのクレームから大晦日の除夜の鐘を深夜でなく、時間を前倒しして行う寺が増えている。
福岡県の歓楽街、中州から徒歩10分ほどのところにある東長寺もその1つ。「深夜の除夜の鐘がうるさい」と、若い人からの苦情の電話が来たことで、それまで夜11時半に開始していた鐘突きを、2018年からは午後6時から行っているのだ。
なお編集部では過去にその詳細を紹介。「特に問題がなかった」という実際に行った際の感想や、「深夜3時まで騒がしかったが、そうしたことがなくなった」というメリットを取材していた。
(参考記事:「除夜の鐘がうるさい」時間を前倒しするお寺増加…“効果”は薄れないかも聞いてみた)

また、深夜に鐘を突かなければいけないとルールがあるわけではないそうで、たしかに夕方から突いても何も問題はないようだ。
では前回の取材は2019年だったが、コロナ禍の今、除夜の鐘はどのように行われているのか? そもそも中止になっていないのか?
東長寺の藤田紫雲名誉住職に詳しく話を聞いてみた。
今年の鐘突きは午後6時から
――今年も除夜の鐘は前倒しする?
2018年から始めて、今年で4年目となります。今年は6時から、108人の参詣者が突かれます。
――コロナ対策はどうしている?
参詣者の方はマスクをされ、アルコール消毒をして鐘を突きます。密にならないよう間隔を空けて並んでいただいています。また、予約制にして1時間前から予約券を発行してます。
ただ108人分の予約がすぐに埋まってしまうわけではないので、基本的には予約なしで来ていただいても突けると思います。1番に突きたいというこだわりがある人は、早く来ていますが。
――除夜の鐘を前倒ししたことで、参拝する人の数に変化はあった?
除夜の鐘を午後11時半~0時半くらいまで突いていたころには、240人~250人くらい鐘を突き、参詣者は6千人ほどいました。昨年は午後6時に除夜の鐘を突き始め、だいたい45分くらいで終わり、7時には寺を閉めました。参詣者は120人〜130人くらいでした。
時間が早まっても、気持ちの持ち方は変わらない
――最近は、除夜の鐘がうるさいというクレームはない?
ここ3年、そういうクレームはございません。
――深夜の除夜の鐘を惜しむ声はあった?
「毎年恒例の除夜の鐘が、6時に繰り上がったのはちょっとさみしいです」というお手紙を一通だけいただいたことはありました。その逆で、夜中に鐘を突いていた時は、高齢の方は深夜の外出を控える方が多かったのですが、6時にしたことで高齢の方から「来やすくなった」という声もいただいています。
――お寺業界全体としては、コロナ禍の除夜の鐘はどのような方法が多い?
恒例の年中行事で、中止するのはごくわずかかと思います。鐘を突く方は、自分で考えられて来られてます。自発的な判断に任せているのではないでしょうか。
――参詣者へのメッセージを聞かせて。
1年の締めくくりとして、108の煩悩を消滅させて、すっきりとして新年を迎える。時間が早まっても、気持ちの持ち方は変わらないかと思います。1年の感謝の気持ちを持ってお見えになり、鐘を突いてスッキリした気持ちで新年を迎えていただければと思います。
繁華街に近い東長寺では、かつてはカウントダウンイベントを終えた若者たちが多く詰めかけたこともあった。しかし除夜の鐘の前倒しで参詣者が減少し、このような密がなくなったという。
近所への音の配慮に加え、コロナ対策にもなっていた「除夜の鐘の前倒し」。このように時代の変化に合わせてやり方を変えていく寺は増えていくかもしれない。