世界的人気を誇るBTS。兵役免除の対象にするか、韓国の国会で11月25日から審議が始まった。

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これまで名だたる韓流スターも避けては通れなかった軍への入隊。BTSをきっかけに、芸能人にも兵役免除の道が開かれるのか注目されているが、議論は難航している。

スポーツ・芸術分野では「優秀な成績」で兵役免除

FNNソウル支局長 一之瀬登:
韓国の国会では、25日からBTSのメンバーの兵役を免除の対象にするか審議が始まりました。BTSは、アメリカ三大音楽祭の1つ「アメリカン・ミュージック・アワード」でアジア人アーティストとして初めて大賞を受賞。その人気はまさに世界を席巻しており、経済効果は数千億円に上るとも言われています。また、大統領特使として国連で演説まで行うなど、韓国の国際的な地位を支える存在になっている。

そのため、与野党の国会議員から「国の利益のためにもBTSの兵役免除を真剣に議論すべき」と兵役法の改正案が出され、“BTS法案”とも呼ばれています。

しかし、兵役に関しては徹底して公平性を求める厳しい世論があり、BTSへの特例をめぐって韓国が揺れているとも言えます。

前提となる韓国の兵役は、原則18~29歳の男性全員の義務で、陸軍・海兵隊、海軍、空軍などに所属。期間は18~23カ月と部隊によって異なり、入隊時期は自分で選ぶことができる。

ただ、その兵役を例外的に免除する制度があります。スポーツ分野では「オリンピックで3位以上」「アジア大会で1位」。芸術分野では「国内外のコンクールの入賞者」など、優秀な成績を収めた人が兵役を免除される。

しかし、現在は芸能分野で活躍する歌手や俳優は兵役免除の対象にはなっていない。

2020年12月、BTSを念頭に入隊を満30歳まで延長できる法改正をしているが、それでもBTS最年長メンバーのJINさん(28)は、このままだと30歳となる2022年12月の末までには入隊しなければならない。

韓国音楽コンテンツ協会は、「BTSが唯一無二の功績をあげたのに他の芸術分野に比べて差別されている」と、BTSの兵役を免除すべきだと訴えている。

過去にあった芸能人の不正 サッカーで“4分除隊”騒動も

ただ、芸能人は兵役から逃れるために、これまで数々の問題を起こしている。

映画「ゴースト」で松嶋菜々子さんと共演した俳優のソン・スンホンさん(45)は、ブローカーに金を払って尿の検体をねつ造し、病気を装って兵役免除となったが、その後不正が発覚し謝罪。

結局入隊することになるが、その際に多くのファンが涙を流して見送った姿は、日本でも大きく報じられた。

1997年にデビューした元歌手のユ・スンジュンさん(44)は、ラップとダンスで人気だったが入隊直前の2002年、兵役逃れのために突然アメリカの市民権を取得。

彼はそれまで「兵役の義務を果たす」と話していたことから国民は激怒。政府はユさんの入国を拒否し、19年たった今も韓国への入国を認めていない。

また、条件を満たせば免除の対象となっているスポーツ界でも、対象にならない選手らによる大型の不正事件が起きている。

兵役を逃れる目的でプロ野球選手が薬と血液を混ぜた尿を提出したり、検査直前に大量の濃いコーヒーを飲むなどして、不正に兵役が免除された。これにより摘発されたのは、なんと51人。試合中に警察署に連行される選手もいたほどだった。

また違法ではないが、こんな騒動があった。

2012年、ロンドンオリンピックの男子サッカーで韓国は銅メダルを獲得し、選手の兵役が免除された。しかし、試合終了直前の選手交代で、わずか4分しか出場していなかった選手も兵役を免除されることになった。これが“4分除隊”と揶揄されるなど、議論に巻き込まれることになる。

このように兵役免除をめぐる不正や騒動が数多く起きていただけに、韓国国民には免除に否定的な意見も根強く、今回のBTSをめぐっても賛否が別れている。

国民意見は真っ二つ 課題残る芸能分野の兵役免除

BTSの兵役免除 賛成:
国家代表やメダリストのように、BTSも世界に多くの影響を与える存在だから。

BTSの兵役免除 反対:
芸能人で人気があっても、特例を認めれば不公平になる。

FNNソウル支局長 一之瀬登:
2020年10月に行われたBTSへの特例措置についての世論調査では、賛成が46%、反対が48%と、国民の意見も2つに割れています。

先週の国会での議論では結論は出ず、今後は公聴会などで国民の意見を聞いて、さらに審議を進めることになりました。

一方、BTSはこれまでに「韓国の青年として兵役は当然のこと」と兵役に就く姿勢を示しています。

いずれにしても、芸能分野を兵役免除の対象に加えるならば「どのような基準にするか」など、難しい課題も残されています。また、韓国国防省も反対の立場を示していることから、BTSの兵役が免除されるか予断を許さない状況です。

加藤綾子キャスター:
BTSの人気やその活躍ぶりは今乗りに乗っている時ですが、18~29歳というのは芸能人だけでなく若い人たちにとっても大事な時なので、不公平感が生まれていいのかとか、これだけ偉業を成し遂げた人たちだから、という思いも分かりますし…。柳澤さんはどう思われますか?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
簡単に答えは出せないと思うんですけど、僕は基本的に公平性というのは第一に尊重すべきことだと思うんですよ。一度特例を作ると、その特例が次の特例を生んでしまうと。際限なく特例が特権につながりかねないということもあると思う。ただ日本とは社会や国民性が異なるので、これは韓国の国民がとことん議論して、その中で結論を導き出す以外にはないと思いますね。

(「イット!」11月29日放送分より)