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都内にある、ファッションブランドのショールーム。さまざまな形のアウターが売られているが、実は、ある共通の素材から作られている。

KAPOK JAPAN 深井喜翔代表:木の伐採も必要なく、動物を傷つける必要もない。木の実由来のファッションブランドというものをやっております。

木の実由来のダウンなどを販売するファッションブランド、「KAPOK KNOT(カポックノット)」。販売している洋服の素材は、全て「カポック」という植物の木の実から作られている。

カポックとは、東南アジアなどで育つ木で、1つの木に300個ほどの実がなると言われている。
その実の中にある、綿のような細かい繊維を素材に使用している。

羽毛を使わないので環境に優しいだけでなく、カポックの綿はコットンの8分の1の軽さで、汗などの水分を吸収して発熱する、吸湿発熱の機能もあるという。この綿とリサイクルポリエステルを混合し、シート状に加工することで、さまざまなデザインの洋服に中綿として使用が可能になった。

KAPOK KNOTは現在、応援購入サイトの「マクアケ」で、新たに厚さ3ミリのダウンシャツを販売。シャツにもアウターにもなる機能的なダウンの応援購入金額は、目標を大きく上回っている。

KAPOK JAPAN 深井喜翔代表:わたしたちは基本的に、機能、デザイン、サステイナブル、という順番で商品をうたうことをやってきました。それは、消費者が無理のないサステイナブルというのが必要だと思っていたからで。カポックノットを通じて、サステイナブルの一歩目として扱ってもらえたらなと考えています。

また、最近ではさまざまなブランドや異業種とのコラボレーションを積極的に実施。「都市とアウトドアを横断する」をテーマにした、建築家と料理家の夫婦との共同制作のアウターは、フィッシングベストから着想を得た大きなポケットや、気温によって着脱ができる袖が付いていて、アパレル業界の垣根を越えた機能的なデザインになっている。

カポックの素材を使用した、さまざまなコラボレーション。これがサステイナブルを一歩進めるためのカギになる、と代表の深井さんは話す。

KAPOK JAPAN 深井喜翔代表:一見、環境に良いことかもしれないけど、それが続いていかなければ、本当の意味ではサステイナブルではないと思っていて、『社会性』と『事業性』を両立することが非常に大事だと思っています。

KAPOK JAPAN 深井喜翔代表:なので、1つのブランドが『カポック素晴らしいです』と広げていくよりも、いろんな方々と共同で商品を作って、いろんなチャネルで広げていくことが非常に重要だと思っていて、それが、これまでのサステイナブルより一歩進んだサステイナブルになると考えています。

内田嶺衣奈キャスター:ここでは、デロイト トーマツ グループの松江英夫さんに話をうかがいます。木を伐採することなく、木の実から繊維を取り出すという、このサステイナブルな試み、面白いなと感じましたが、松江さん、いかがですか?

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:面白いですよね。何も壊さず、自然の循環の中で、素材が取れる、これが素晴らしいなと思うんですよね。最近、アパレル業界のサステイナブル、色んな角度があって、物を作るとか、リサイクル、色んな切り口での取り組みが広がってきているんですけれども、今回の最大のポイントは素材、素材だからこそできる広がり、ここに私は注目しているんですね。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:消費者庁の調査によると、サステイナブルファッションの中で、何に関心を持って選ぶか、この問いに対しては、残念ながら、半数近くは、あまり関心がないという回答が多いんですが、一方で、関心がある中の上位2つは、素材に関する項目なんですよね。こうした、ある種のオーガニックの素材だとか、リサイクルの素材、こういったものを使っているものが優先的に選ばれる、こんな傾向も出ているので、素材というのは、まだまだ余地と可能性があるんじゃないかと見ています。

内田嶺衣奈キャスター:サステイナブルな素材への関心の高さというのを、どのようにビジネスに結びつけていけばいいんでしょうか。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:1つは、ファッションの業界の中のシーンを広げて行く、場面を広げるということですね。さきほどもあったように、ブランドそのものに自らしていくケースもあれば、他の素材と組み合わせることによって、他のブランドとか小売とタイアップしていく、こういった可能性を広げることによってですね、利用シーンを広げていく、今回のようにアウターだけではなく、インナーのシャツとか、スーツだとか、帽子だとか、色んなファッションの利用シーンを広げていく、これが1つの広がりだと思うんですね。

内田嶺衣奈キャスター:持続可能性が高い素材の使用が広がれば、広がるほど、地球への優しさというのも、また広がっていくということですよね。

デロイト トーマツ グループCSO松江英夫氏:そうですね。これ、まさに素材だからこそという意味だと、ファッションに限らず、他の業界にも用途を広げる、これが1つの大きな可能性なんです。例えば、海外の中でも、パイナップルの素材を使って、レザーを作る、こんな取り組みがあるんですが、実は、ホテルとタイアップして、ホテルの内装に生かす、例えば、ベッドだとか、イスだとか、さらには、自動車の内装に生かす、こんな取り組みも広がっているんですよね。まさに、素材だからこその可能性。これを広げることによって、こういった観点でのサステイナビリティー、これが広がっていくことも期待したいなと思っています。

内田嶺衣奈キャスター:1人や1つの企業で取り組むよりも、誰かや他の企業と力を合わせることで、ぐっと地球に優しい社会に近づくように思います。

(「Live News α」11月26日放送分)