皆さんはこんな人と結婚したいという、「結婚相手像」を考えたことはあるだろうか。日本ではかつて、高学歴・高収入・高身長の“三高”が男性の理想と言われた時代もあった。

夫婦・家族問題の専門家として、3万7000件以上の相談に応じてきた、池内ひろ美さんによると、こうした理想や男女の結婚観が近ごろ、変わってきた印象を受けるという。

背景にあるのは、コロナ禍による社会環境やライフスタイルの急激な変化。それでは今の時代、結婚したいと思われるためにはどんな部分を磨けば良いのだろうか。イマドキの男女の傾向、相手から望まれるためにできることを池内さんに聞いてみた。

これまでは「三高」から“3C”へと移行

――コロナ禍は人々の恋愛観や結婚観に影響した?

(1)恋愛を重視する人、(2)恋愛をしている場合ではないとする人、二極化が進んだ印象です。コロナ禍では外出が難しく、仕事もどうなるか分からない。(2)はこのために恋愛を避けている。(1)はこうした状況だからこそ、誰かとつながりたい。

実際の相談内容でも「新しい出会いがない」と嘆く人が見られました。リモートワーク(テレワーク)になり、外出も極力しない。仕事以外の関係性がなく、映画やお茶や飲みに行ける場所など、デートコースがシャットアウトされた状況が続きましたね。

結婚を目的としたマッチングアプリ、結婚相談所の利用者が増えているということも聞くので、恋愛よりも結婚が求められているところがあるかもしれません。経済的な不安、世界で死者が相次いでいる状況なども影響しているかもしれませんね。

恋愛を避ける傾向もみられるという(画像はイメージ)
恋愛を避ける傾向もみられるという(画像はイメージ)
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――以前の理想の結婚相手像はどんなタイプが望まれていた?

分かりやすい例ですと、男性はバブル景気の頃から長い期間、三高が求められていました。ただ条件となる高学歴、高収入、高身長はいずれも「女性と比べて高い」というものでしたので、女性の社会進出によってこの考え方も変わってきました。

その後に登場したのが、心理学者などが提唱した“3C”です。カンファダブル(快適である)、コミュニケイティブ(理解し合える)、コーペラティブ(協調的である)、3つの英語の頭文字をとって3Cと呼びます。安定した収入と快適な住環境、理解し合えること、進んで家事や育児を手伝ってくれる人…といったところでしょうか。

育児や家事に協力的な3Cが望まれていた(画像はイメージ)
育児や家事に協力的な3Cが望まれていた(画像はイメージ)

男性が結婚相手として女性に求めていたのは、家事育児を行い夫を精神的に守ってくれる女性でしたが、コロナ禍では経済不安を感じ、定職・定収入のある女性を求めることが加速していると感じます。また、結婚したくないと明言する男性の増加もみられます。

今の環境では男女ともに「価値観」が同じことが大切

――そうした理想の結婚相手像は、コロナ禍でどうなった?

安定した収入や職業を持つこと。そしてコロナへの危機感、マスク・ワクチン対策などへの価値観が同じであることが求められるようになったと思います。マスクをつけるにしてもどの種類にするのか。帰宅後に手を洗うのか、消毒をするのか。もちろん考え方や価値観は自由でよいのですが相手との違いは浮き彫りになります。同じ空間にいて危機感を覚えるような人との恋愛、結婚は難しいと思います。

「価値観」を共有できることが大切に(画像はイメージ)
「価値観」を共有できることが大切に(画像はイメージ)

安定した収入はこれまでも重視されていましたが、今は緊迫感が違います。以前はふわっと望んでいたのが、リアルに考え始めた印象です。実際の話だと結婚相手の候補が勤務する企業の株価を見て、コロナ禍での安定性を調べる人もいました。


――年齢層や性別で理想の傾向に違いはある?

20代は安定した収入と職業ですね。ふたりとも独身という前提になりますが、仕事を失ったら、給料が減ったら…と思うと結婚することに不安を感じてしまう。そのため、相手にも安定した収入を求める。ここは男性も女性も一緒だと思います。

30代は結婚をより現実的に考えます。仮にコロナ禍が収束しても不安はあるので、女性目線だと何らかの形で仕事を続けたい人は多いです。その点で家事ができる男性ですね。男性目線でも女性の収入は大切ですが、相手が産休や育休を取得できる環境も求める印象です。

年代で理想の傾向も違う印象だという(画像はイメージ)
年代で理想の傾向も違う印象だという(画像はイメージ)

40代だと子育てを考えるようになります。男性は頼れる父親、女性は母親として支えられることでしょうか。コロナ禍で学費が払えないなどの現実も見ているので、学校で学べることの大切さを説明できる父親像、生活習慣を正せる母親像が求められると思います。

そして年代に関係なく、価値観や危機感が同じであることが大切です。子どもが学校生活でつらさを感じたとき、行くことをやめさせるのか、やめさせるのは忍びないと考えるのか。これも価値観の違いですよね。この辺りが一致しないことによる、離婚相談もあります。


――コロナ禍が収束すると、理想の結婚相手像はまた変わりそう?

変わると思います。理想として思うことは環境で変わりますので、コロナ禍が収束すると高収入や快適な生活を送れることなど、ある意味では元に戻るかもしれませんね。

相手を試すような言い方には注意してほしい

――恋愛や結婚を考えている人に伝えたいことは?

価値観が合うことは大切ですが、そのために相手を試すことはしないでほしいですね。例えば、働けなくなった仮定の話をするときに「僕はこうしたい」と伝えるのは問題がなくても、「あなたは何をしてくれる?」と聞くと試すことになる。人間関係は試されていると思うと、良くない方向に向かいがちです。僕はこうしたいと伝えた時に、「私はこうすると思う」と話し合える。それが同じであることが、価値観が合うことだと思います。

相手を試すのではなく、自分はどう思うかを伝える(画像はイメージ)
相手を試すのではなく、自分はどう思うかを伝える(画像はイメージ)

――結婚相手を探す上でのアドバイスや注意点は?

人とのふれあいが少ない、寂しいからといって、結婚を焦らないでほしいですね。マッチングアプリやリモート通話は嘘がつきやすい環境でもあります。つらい状況だと「大変だね、応援しているよ」といった一言で、騙されてしまう人もいます。第三者の友人をやりとりに含めるなど、相手が話していることが本当かどうかには注意してほしいですね。


――コロナ禍だからこそ、磨いてほしい魅力は?

外見ではマスクで隠れる、肌や歯をきれいに保つこと。マスクをすると目で表情が伝わり、声も聞き取りにくくなります。目が笑っているか、声が相手に届いているかを配慮してもいいかもしれません。内面ではネガティブにならないこと。今は不安などが増幅されやすいので“うつ”のような状態になりがちです。小さな楽しみ、幸せを見つけられることは、魅力にもつながると思います。おうち時間で料理の腕を磨いてみても良いかもしれませんね。


バブル景気や女性の社会進出。時代や環境によって、結婚相手の理想も変わっていくという。コロナ禍では緊迫した状態だからこそ、安らげる人間性が求められているのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。