新型コロナウイルスの感染拡大で外出の自粛が求められる中、その影響は家庭内でも広がっている。コロナ禍で急増するDV被害だ。被害に苦しむ人たちと悩みを分かち合おうと、福岡市のNPO団体が始めた取り組みを取材した。

「ぶっ殺してやる」と祖母や母の首を絞め…

根来仁美さん(仮名)は、YouTube上で言葉を詰まらせながら赤裸々に自身の過去を語った。

根来仁美さん:
父親が、祖母や母親に暴力を振るっていました。「ぶっ殺してやる」と言いながら、祖母や母の首を絞めたり、手元にあった大きな裁ちばさみをぶん投げて、壁に突き刺さったりとか

DV被害について語る根来さん(仮名)(YouTube エンパワーチャンネルより)
DV被害について語る根来さん(仮名)(YouTube エンパワーチャンネルより)
この記事の画像(11枚)

根来仁美さん:
私は、父にとってアクセサリーなんだと思っていました。私の人格はなくて、父が自分を飾るための道具なんだと

根来さんは物心ついた時から、父親からの暴力や暴言を受けてきた。さらに父親は母親に対しても暴力を振るい、それを目の当たりにする通称「面前DV」にも長年苦しめられてきた。

家庭内暴力、そして面前DVで苦しい思いをしてきた彼女が、なぜYouTubeで思い出したくないはずの自分の過去を明かすのか? その理由を尋ねた。

根来仁美さん:
保育園の年長になる頃から、親に対して恐怖とか、違和感とかを感じている状態だったんですよね

根来仁美さん:
これが「暴力」ということに気づかなかったんですけど、同じような経験者から「あなたのされていることもDVだよ」と教えてもらって。今、苦しい状況から抜け出せる何か一歩になることができたら良いなと思って

当事者が声をあげることで変わることがある。

根来さんがネット上での告白を決心したのは、DV被害者の支援などを行う福岡市のNPO法人「アコア」の後押しがあったからだった。

NPO法人「アコア」 和根崎行枝代表:
(DV被害の)解決の道はあると思っているんです。回復の過程で起こるプロセスを当事者たちが伝えていくことで…

NPO法人「アコア」の和根崎行枝代表
NPO法人「アコア」の和根崎行枝代表

コロナで相談件数は過去最多に 傷を抱え込まないで

NPO法人「アコア」は、虐待やDVなどの被害に遭った女性の回復と自立を応援する団体で、これまでに7人の女性が根来さんと同じように自身の経験をYouTubeで発信している。

警察庁によると、配偶者からの暴力などの相談件数は年々増加し、新型コロナ感染拡大が始まった2020年には過去最多の8万2643件にのぼった。

NPO法人「アコア」 和根崎行枝代表:
きっかけが増えますよね。一緒にいる中で暴力は起こるので、逃げ場がない、離れられないということが一番(理由として)多いと思います

コロナ禍で拡大傾向にあるDV被害。根来さんは、ほかの人と苦しみや悩みを共有することで気づけることがあると語る。

根来仁美さん:
話していく中で何がつらいとか、自分がどれだけ傷ついたとか、気づけると思うんですよね。そして、私がおかしいんじゃない、悪いんじゃないと気づけるようになると思うんです

そんな彼女が今、社会に伝えたいことは…。

根来仁美さん:
精神的DVとか、わかりにくい形での暴力であったり。学んでほしいですね、知識として知っていれば助けられることもある

また、家庭内では児童虐待も増えている。

福岡県によると、2020年度に県内の8カ所の児童相談所が対応した虐待件数は1万272件にのぼった。1万件を超えたのは初めてで、過去5年を振り返ってみても年々増加している。

原因について県の児童家庭課の担当者は、警察との連携が強化されている一方、新型コロナで在宅時間が増えたことから虐待のリスクが高まったと指摘している。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。