企業の脱プラの取り組みが進む中、刃物メーカーの貝印は11月8日(いい刃の日)に、持ち手が紙製の「紙カミソリ」を2022年3月から全国発売することを発表した。

テスト販売時の紙カミソリ(画像提供:貝印)
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この紙カミソリは、従来の“プラスチック”カミソリと比べ、プラスチック部分の98%の削減を実現。ハンドルに紙、刃の部分に金属を使用し、折り紙のように一枚の紙を組み立てて使う。

組み立てイメージ(画像提供:貝印)

1回使い切りで細菌の繁殖やサビの心配がなく、いつでも清潔に使用できる。本体は約3mmの薄型の形状で重さ約4gと超軽量のため、バッグに入れて、手軽に持ち運びもできる。値段は現時点では非公表だ。

なお、今年、4月に公式オンラインストアでテスト販売を行っており、その際は3日で完売したという。

テスト販売時の5色の紙カミソリ(画像提供:貝印)

環境に配慮することは、とても大切だ。しかし、気になるのはプラスチックから紙に代わることで、剃り心地はどうなるのかだろう。また今後、プラから紙にどれくらい変わっていくのか?

貝印の担当者に詳しく話を聞いてみた。

耐水性を持つ紙の選定などに苦労

――紙カミソリの開発の経緯は?

開発の経緯としては、2018年の貝印110周年の記念年に、新しい価値を持つカミソリを模索するプロジェクトが発足したことがきっかけです。部門横断で集結した東京・岐阜の社員有志5名が、エコの観点や 「いつでも清潔で快適」 を提供する1Dayカミソリという観点から紙素材に着目し、世界初の「紙カミソリ®」を商品化しました。

SDGs持続可能な開発目標達成に向けた社会機運が高まる中、貝印においてもその一助となるべく、2019年11月8日(いい刃の日)に2030年までにディスポーザブルカミソリ分野でのCO2排出量換算半減を目指すことを宣言し、2020年4月には経営戦略本部内にSDGs推進チーム(現サステナビリティ推進部)を新たに設置。モノづくりにおける脱プラスチックの取り組みなどを推進しています。


――開発する上で苦労した点は?

(1)耐水性を持つ紙の選定
刃物メーカーのため、紙について分からないことも多く、製紙メーカーからサンプルをたくさん取り寄せテストを繰り返しました。

(2)強度を維持するための頑丈な構造と組立やすさの両立
100パターン近く試作し、実際に剃ってテストを繰り返しました。最初は紙スプーンと同じようなつまむ形だったが、耐久性に難があり、三角形に折り込む形状&裏側をカバーする構造にして強度をUPさせました。

(3)プラスチックの削減
刃体についても脱プラスチック化をより高めるためにプラスチックから金属に変更。既製品の金属パーツをうまく流用し、切れ味にこだわりつつもコストを抑えながら金属刃体を設計しました。


――プラスチックにはない、紙ならではのメリットは?

プラスチック削減による環境への負荷軽減、軽量・薄型であること、グラフィックの自由度が高いこと等があります。


――プラスチックのカミソリをすべて紙にした場合、どれだけ地球に貢献できる?

使い捨てカミソリは世界で年間、約160億本捨てられており、廃プラ量は、東京ドーム2.5個分と試算できます。(※貝印調べ)これらが全て置き換わったと仮定すると東京ドーム約2.5個分のプラスチック排出を削減できます。

ヒゲを剃る圧力に耐える強度になるよう工夫

――剃り心地はプラチックと比べて変わらない?

変わりません。プラスチック製のカミソリと遜色ないハンドルの持ちやすさや、切れ味にこだわって設計しています。


――紙だと強度の部分が心配だけど大丈夫?

ヒゲを剃る際の圧力に耐えられる強度になるよう紙の素材と折り方を工夫しています。ヒゲを剃るのに十分な強度を保っています。

イメージ(画像提供:貝印)

――紙カミソリを試した人からはどんな声を聞く?

購入された方からは「脱プラのコンセプトに非常に共感した」「デザインが斬新で目を引く」、また海外では「折り畳み式というのが、日本のORIGAMI文化が生み出した斬新なアイデア」などのコメントをいただいています。


――今後、紙とプラチックのカミソリの比重はどうなっていく?

紙カミソリは、貝印が大切にしてきた「人にやさしい刃物」という考え方と、これから貝印が社会課題の解決に向けて取り組んでいく活動のスタートとなる商品であると考えています。とは言え、全てのカミソリを紙カミソリに切り替えるわけではなく、あくまでお客様の新しい”選択肢”の1つとして提供できればと考えています。


2022年4月からはプラスチックごみの削減を目指す新しい法律「プラスチック資源循環促進法」が施行される予定だ。こうしたことも影響し、今後はカミソリだけでなく、生活に必要なものの脱プラ化はますます進んでいくことだろう。