大正、昭和、平成、令和、4つの時代を波瀾万丈に駆け抜けた99年の人生。作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが11月9日、心不全のため亡くなりました。

めざまし8は、波乱に満ちた人生を歩んでこられた寂聴さんと、愛や人生について語り合ったことがある歌手の加藤登紀子さんに、知られざる寂聴さんとのエピソードを聞きました。

生前に親交・加藤登紀子さん “自分に正直”に生きた寂聴さんの人生

この記事の画像(3枚)

加藤登紀子さん
とても率直な方です。最後にお会いしたのは寂聴さんが94歳、2016年だったんですけどね。その時は根掘り葉掘り、たくさんお話しをしましたけれど。それにしても、よく出家なさいましたねって聞きましたら「あなた、それしか方法がなかったのよ。収拾がつかなくなったのよ男関係で」とおっしゃって。最後に私が「今日はすごく勉強になりました」って言ったら、「いよいよとなったらその手があるのよ」って。すごく率直な方で、でも楽しいですよね。もう本当に真っすぐに、正直に生きようとすると、この世ではなかなか解決がつかないということを体現なさっていると思います。

――著書もお読みになられて、バイブルにもなっていると。本の中の寂聴さんには、どんなイメージがありますか?

加藤登紀子さん
本の中の寂聴さんはニコニコ笑ってないですよね。実際の寂聴さんは、よく笑って声が明るい。だけど本の中では、浮気のことは徹底的に、徹底的にその瞬間を生きたように、克明に書かれますね。実際にその人がどのように生きて、どのように命を燃やして、どのように過ごして、どのようにその瞬間を生きたかっていうことを克明にお書きになります。

加藤登紀子さん
例えば、エディット・ピアフが好きだったんですね。エディット・ピアフって人が、本当に愛するということはどういうことなのか、結婚とかそういうことじゃなくて、なにかもっと根源的にね、いい愛し合い方にたどり着けるために「一夫一婦制を真面目にやっている人は誰もいないだろう」って言っていたんですけど。

加藤登紀子さん
今、私たちの時代がこういう制度でやりましょう、こういう風にモラルを守りましょうって言っていることと、人間の本質っていうのがいつも食い違っているっていう。だから、お坊さんになられて、その後の人生を見ていて思うのは、日本の仏教っていうのは深いなってことと、自由なんだなって。出家されてもこんなに自由にお書きになって、お話になって、素晴らしいと思いました。

恋に仕事に、自由奔放に生きた嘘偽りのない人生。そんな寂聴さんだからこそ、その言葉には、人を引き付ける力がありました。

――印象に残っている言葉はありますか?

加藤登紀子さん
「人のために」という一言とね、「自分を通して生きなさい」ということをおっしゃっていました。一番心に残るのが、4歳でお子さんを残して家を出た。一緒に暮らしていた家から自分だけが出たわけですよ。娘を連れていきたかったのよっておっしゃっていました。育てたかったのよって。だけど、自分に生活力がない。生活力のない人がその娘を連れて出てもね、育てられないというので覚悟の…それは出家ではないですけど、その時のことを終生心の中で一番思ってらしたと思います。

晩年は病に倒れることもありましたが、驚くべき体力と不屈の精神で元気に過ごしていたといいます。人生を謳歌し、思い通りに生きた99年の生涯。数多くの人が寂聴さんの言葉を聞き、救われた人も間違いなくいたでしょう。

(めざまし8 11月12日放送より)