防波堤に漂う灰色の波。この“灰色”の正体は、いま大きな問題となっている「軽石」です。
11月には関東に漂着する可能性もあります。めざまし8は、軽石がどのような影響を及ぼしているのか、陸・海・空のそれぞれから探りました。
「船が砂の上に引き上げられたよう」750隻が漁見合わせ
沖合に広がるエメラルドグリーンの海。しかし、カメラを漁港に向けると、防波堤に囲まれたエリアが灰色に染まっていました。

これは、10月28日に沖縄本島北部の国頭村(くにがみそん)で、めざまし8が許可を得てドローンで撮影した上空からの映像です。

防波堤内を埋め尽くす軽石。

潮の流れが影響しているのでしょうか、防波堤の外にも軽石がたまった場所があります。その範囲は約2キロに及んでいました。

漁港内を見ると、ゆっくりとした波が流れ込んでいるのもわかります。

さらに、たまった軽石は停泊した漁船の周りを埋め尽くしていました。地上から見てみると…。

ディレクター:
沖縄県の辺土名漁港に来てるんですけれども、軽石で海が覆われてしまっています。船がたくさんありますが、もうまるで砂の上に引き上げられたかのようです。

漁船が航行中、フィルターに軽石が入り込むとエンジン故障の原因になることから、沖縄県内では約750隻の漁船が漁を見合わせる深刻な事態になっています。
養殖魚が大量死…被害は川にも
防波堤の上に見えるのは魚を養殖する“いけす”。漁協の組合長に話を聞きました。

沖縄県国頭村 村田佳久組合長:
いけすに入れてる魚はですね。それは死んでもいます。死んでたのが150~160匹だと思います。
軽石の漂着後、いけすにいた魚の半分が死んでしまったというのです。別の漁港では、養殖されていた魚の約500匹が全滅。被害は川にも及んでいます。

元々は穏やかな流れの川でしたが、海から押し寄せた大量の軽石に覆い尽くされ、川が消えてしまっているかのようです。その範囲は、河口から見渡す限り広がっています。
――今までもこんなことがあった?
近隣住民:
初めてですね。寂しい限りです。もう大変な問題だなと思って。
今、沖縄各地で漁業や観光業への影響が深刻化している軽石被害。さらに今後は、本州にも到達する可能性があるといいます。
11月上旬に四国、下旬には関東へ?
これは海洋研究開発機構が、軽石の動きを予測したシミュレーション映像。青い部分が軽石を示しています。

そもそもの発端は2021年8月。小笠原諸島の海底火山で起きた噴火で噴き出した軽石が、2カ月かけて沖縄に流れ着いたとみられます。
さらに今後は北上し、11月上旬に四国、下旬には関東にまで流れ着く可能性があるというのです。海洋研究開発機構の美山透主任研究員に聞きました。

海洋研究開発機構 美山透主任研究員:
日本付近には黒潮というすごく強い流れがあって、それに乗って太平洋側の日本沿岸、黒潮が流れている近くに広がるというシナリオです。
海の中からの撮影も試みました。すると、日本の食卓を支える漁業に影響を及ぼす可能性も見えてきました。
死んだ養殖魚の胃袋に軽石 「売れなくなる可能性」
カメラマンが軽石に覆われた海の中へ入ると、そこは不気味なまでの薄暗い世界が広がっていました。さらに、撮影用のライトを消すと真っ暗になりました。

まるで海底のように見えるほど海面に軽石がびっしりと広がり、光を遮断していました。再びライトをつけて撮影を続行すると…。

目の前に現れたのは水中を漂う、無数の小さな軽石です。
そして、これは死んだ養殖魚の胃袋の写真。中に大量の軽石が詰まっています。漁港の組合長によると、軽石が小さいため魚がエサと間違えて食べてしまうことが、大量死の原因だというのです。

水中をよく見ると魚の姿が確認できます。しかし、軽石の壁が邪魔をして水面にまで上がってこられない状態でした。

映像からその厚みを見ると、10センチ以上はあるように見えます。

11月には関東にまで流れ着く可能性がある軽石。海の幸はどうなってしまうのでしょうか。神奈川県・湘南エリアの名物、シラスをとる漁師は不安を募らせていました。
しらす漁師 藤原達矢さん:
たぶん網に詰まっちゃうと思います。細かいのが下に溜まるので、シラスと一緒になる。仕事ができなくなるのが一番嫌。しらすは軽石と一緒だと売れなくなる可能性がある。
軽石の漂着が警戒される11月は、脂がのった秋シラスのシーズン真っ只中。漂着すれば大きなダメージを受けかねないと危惧しています。
長期戦になると言われている軽石との戦い。さらなる被害を抑えるため、早急な対策が求められています。
(めざまし8 10月29日放送より)