岩手が中国の消費者向けに生配信

東日本大震災の被災地・岩手県が元ミス中国をパートナーに巨大市場の攻略を始めている。

岩手県のライブコマース(中国語):
大都市と違う日本の文化を体験したいなら岩手県がおすすめです!

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中国の天津で岩手県が地元製品を中国の消費者に向けて10月28日に生配信。画面左上には「岩手」の文字が見える。

中国で盛んに行われている売り手側が生中継で消費者に商品をPRするライブコマース。今年その市場規模は30兆円を超えるとも言われている。

2018年ミス中国の王朝源さん:
みなさんこんにちは!私は王朝源です

途中からPRに加わったのは、2018年ミス中国の王朝源さん。

今回は岩手県産のしょうゆを王さんに試食してもらうことに…刺身にしょうゆを付け一口。

王朝源さん(中国語):
おっ、ちょっと甘いですね!

于さん(中国語):
そう、そうなんですよ

王朝源さん(中国語):
風味もとってもいいです。

このしょうゆは、東日本大震災で津波の被害を受けた岩手県山田町の復興のシンボルとなっている商品。

王朝源さん(中国語):
岩手県のPR大使を任せていただきとても感謝しています。コロナが収束し、通常の行き来ができるようになったら真っ先に岩手にいきます

岩手にはまだ行ったことがないという王さん。一体なぜ岩手のPRをしているのだろうか?

ジェトロ盛岡・齊藤美沙季さん:
中国の若い世代に影響力を持っているということで、そういった層を岩手のファンとして取りこみたいと思いました。彼女の感覚、彼女の言葉で商品の魅力とか感じたことを伝えてもらうことが本当に重要だと思っています

平均視聴者数が過去最高を記録

実は王さんには中国のSNS上に2万人のフォロワーがいる。岩手を知らない中国の若い世代にPRする上で王さんの起用は効果的だと考えたのだ。

今年の夏に初めて王さんを起用したところ、ライブコマースの平均視聴者数が1000人から4000人急増し、過去最高を記録した。

ジェトロ盛岡・齊藤美沙季さん:
今回まさに元ミス中国に出ていただくことで取り込みたかった層を取り込めていると思う。このおしょうゆで、ぜひ岩手の美味しい海産物を食べたいなと思ってくれる方が増えれば、三陸沿岸の地域一体となってすごくいい動きで、中国での販売拡大につながっていくんじゃないかと期待しています。

中国の巨大ライブコマース市場で被災地・岩手の挑戦は今後も続く。

日本製品のアドバンテージは"信頼"

Live News αでは、マーケティングアナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。

三田友梨佳キャスター:
岩手県の自慢の商品が中国でも受け入れられるといいですね?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
中国のネット通販の市場規模は約188兆円で、日本のネットとリアルを合わせたすべての小売販売額よりも大きいんです。この超巨大市場を牽引しているのがライブコマースで、昨年は2倍近い伸びを示しています。今回の試みは中国最大のイベント11月11日、1が並ぶ「独身の日」に向けて勢いをつけたのではないかと思います

三田友梨佳キャスター:
成功へのポイントについてはいかがですか?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
ライブコマースは、ライバーと呼ばれる商品の紹介や販売を担う出演者で売上げが大きく変わります。今回のライバーを元ミス中国が務めているのは良い選択だと思います。そもそも中国のライブコマースが成長しているのは、信頼するライバーから購入することで偽物を購入することを避けることが出来るからです。ライブコマースはライバーと消費者が双方向でやり取りを行うことで、信頼性が増し、仮に偽物を売ったとなると、ライバーの看板が傷つき、次のビジネスができなくなります。そのため問題の無い商品が売られて、消費者は安心して商品を買うことができるんです

三田友梨佳キャスター:
中国市場の開拓では商品への信頼が売上げを左右するということですね?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
商品の信頼という点では、日本製品にはアドバンテージがあります。特に口に入れる食品、肌につける化粧品紙おむつなどは日本製品の人気が高いです。感染拡大で中国からのインバウンド需要は消えましたが、日本に来ていたのは富裕層がメインで、超巨大市場を支えている一般層は実は来ていなかった。ライブコマースを通じて信頼を武器に商品を売り込むことができるのは日本にとって大きなことだと思います

三田友梨佳キャスター:
国を超えたネット通販でクリアすべき課題は何でしょう?

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
医薬品や化粧品メーカーに勤務する中国取引の担当者がこぼしていたのは、日本から中国への商品の輸送費がかかるため、まとまった注文量がないとペイしないということです。また中国は新商品や新ブランドの販売サイクルが短く、今年売れたものが来年も売れるとは限らないことも中国市場の難しさになっていると言われています。これから中国市場を本格的に開拓するためには、現地の事情や好みに合わせて中国仕様に商品をカスタマイズすることも大事だと考えます。

三田キャスター:
コロナ禍の社会の変化を背景に成長しているライブコマースですが、こうした試みで感染収束後、岩手県への観光インバウンドの増加も期待されます

(「Live News α」10月28日放送分)