部員わずか11人。北海道南部の木古内（きこない）小学校の吹奏楽部が、札幌市で行われた全国規模の大会に出場した。
コロナ禍で様々な制約がある中、練習を重ねた子どもたち。感染対策にも気を付けた先生や保護者の思いも背負い、大舞台に挑んだ。
10月10日、札幌市で行われた第21回東日本学校吹奏楽大会。関東以北の小中高校の吹奏楽部が、演奏の技術と表現力を競う全国規模の大会だ。
全国規模の大会に出場した「11人」の吹奏楽部
この大会に北海道南部の木古内小学校の吹奏楽部が出場した。
木古内小学校吹奏楽部の児童：
自信はある！
木古内小学校吹奏楽部の児童：
楽しんで笑顔で演奏してと言われたので、緊張しない
小学校部門は各地域から選抜された12校が出場。部員が多い学校では60人以上を数えるところもあるが、木古内小学校はわずか11人。
木古内小学校吹奏楽部 顧問 五十嵐大 教諭：
こんなに部員が少ないのは、大会の歴史の中で初めてでは。迫力ではかなわないが、うちだから表現できる良さがある
コロナ禍で十分な練習ができない中、少ない人数で大きな大会に出場するため様々な工夫があった。
「制約だらけ」の練習を重ね…
コロナ禍で短縮された練習時間。接触を避けるため、音合わせもできない。
部員で唯一の男子、松井彩之助くん。打楽器が担当だが、部員が少ないことから12種類の楽器を担当。家で練習をするが、大きな楽器すべてを持ち込むことはできない。
木古内小学校吹奏楽部 松井彩之助くん：
2020年の大会がなくて出たことがなかったので、金賞を取って日本一になりたい
20年以上の歴史を持つ東日本学校吹奏楽大会。2020年はコロナ禍で中止となったが、2021年は8月に北海道大会が開かれた。
その結果、代表3校のうちのひとつに木古内小学校が選ばれ、全国切符を手にした。
その後もつきまとう「感染」への不安
木古内小学校 小田将之 校長：
地域の人からは、子どもを札幌市に行かせることに不安の声がある
木古内小学校吹奏楽部の児童：
札幌市から帰ってきて、家族にコロナをうつしてしまったらと心配
感染への不安を抱えながらも、11人は札幌市まで約5時間、保護者や町の関係者など多くの人に見送られ本番に挑んだ。
関東以北の学校の吹奏楽部の最高峰を決める東日本学校吹奏楽大会。
感染対策のため、様々な制限が課された。
大会運営スタッフ：
入口に消毒と検温器があるので、手の甲で検温を。感染症対策で、館内での挨拶は声を出さず会釈でするように
練習を重ねてきた木古内小学校の11人。大会での成績も重要だが、子どもたちを感染から守ることも大切だ。そのため、教員や保護者がサポートメンバーとして細心の注意を払ってきた。
教員や保護者は「感染対策」に尽力
12種類の楽器を担当する松井彩之助くんの父親で、救急救命士の松井光也さんもその一人だ。
彩之助くんの父親 松井光也さん：
1人も感染者を出さないことを信念に同行している。用意しているのはマスクと子ども用マスク。子どもがホテルの部屋に入ったときの各部屋用の消毒用品も
いよいよ木古内小学校吹奏楽部の演奏。
7分間の演奏はあっという間だった。本来であれば、このあと結果発表や授賞式が行われるが、今回は感染対策のため公式サイトで発表されるだけだ。
演奏を終えた11人は、余韻に浸る間もなく宿泊先のホテルに移動。そこで遅い昼食をとっていると…
遅い昼食中に舞い込んだ「結果発表」の瞬間
木古内小学校吹奏楽部 顧問 五十嵐大 教諭：
ちょっと食べるのをやめて。気になっている結果が出ました。木古内町立木古内小学校…金賞！
木古内小学校吹奏楽部の児童：
きゃーっ！
11人で最高峰をつかみ取った。
木古内小学校吹奏楽部の児童：
すごく泣いちゃったけれど、まだ実感がわかない
木古内小学校吹奏楽部の児童：
来させてくれた先生方のおかげで金賞を取れて感謝
子どもたちを支えてきた保護者は…
保護者にもこみ上げる「万感の思い」
彩之助くんの父親 松井光也さん：
こういう状況下で、付き添いや手伝いを望む保護者は多いが、その思いはかなわない。全てが報われてよかった。思わずもらい泣きした
様々なサポートをしてくれた父親の光也さんに対して、彩之助くんは…
木古内小学校吹奏楽部 松井 彩之助くん：
感謝です
木古内町では、会場に行けなかった保護者が横断幕で出迎えた。
保護者：
子どもたちも不安のなかで参加していたと思う。できる限りの練習で、今回の結果が出せたのは本当に頑張ったと思う
コロナ禍で様々な制約がある子どもたちの部活動。それを支える大人たちの姿勢が問われている。
（北海道文化放送）
