赤潮が原因とみられるウニやサケなどの大量死。被害額は約76億円と例を見ない規模となっている。
原因究明と、被害を受けた漁業者の経済的救済はどうなるのか。
札幌市手稲区のスーパーにある鮮魚店。新鮮な北海道産の海産物が手ごろな値段で手に入るとあって人気のお店だ。ここで、ある異変が起きていた。
消えた”エゾバフンウニ”
新鮮な海産物がずらりと並ぶ鮮魚コーナー。これから旬を迎えるエゾバフンウニが店頭にない。一体なぜなのか。

吉本水産・吉本 龍真 会長:
赤潮で入荷量が4~6割ダウン、少ないです。年末に向けてウニの需要期だが、大変な状況

9月下旬から北海道東部で発生した赤潮の被害。魚介類に有害なプランクトンにより、サケやウニが大量死した。

店ではこの時期、厚岸町などのウニを扱っていたが入荷できず、他の地域のものも値段が2割から3割も高騰。店頭に出すのを断念した。
道民:
寂しいですよ
道民:
魚も前と違う時期にあがってきたり、北海道であがらないものがあがったり、怖い感じがします
深刻な被害が出ている漁業のマチは…
ウニの産地である厚岸町。

太平洋に面し、カキやサンマなど1年を通して水揚げが絶えない漁業のマチだ。10月からは、特産のウニ漁が始まったが…
厚岸町・横田 秀敏 船頭:
これは死んでいくウニ…トゲがなくなっている。海域によっては全滅の場所もある
厚岸町でも、9月下旬ごろから海中のウニが大量に死ぬ被害が相次いでいる。
厚岸町のウニ船の船長・横田秀敏さん。

この道40年以上の大ベテランも、これまでに経験したことのない被害になすすべもない状態だ。
厚岸町・横田 秀敏 船頭:
ひどいです。ひどいどころじゃない
これまで取れたウニはわずか6トン。例年であれば2日で取れる量だ。
道東を中心にウニやサケの大量死が相次いでいることを受けて開かれた北海道の対策会議で、被害総額は約76億円に上ることが確認された。中でもウニが約9割の約68億円を占めている。

厚岸町では人工授精してできた稚ウニを7か月施設で育て、海に放流する。その後コンブなどを食べて育ち、4年から5年後に水揚げされる。
今回、赤潮の被害にあったのは水揚げされるウニだけではなく、稚ウニも混ざっていたため、2022年以降の漁にも影響が出てくるという。
影響は「長期」にわたる恐れ
厚岸町・横田 秀敏 船頭:
(もとに戻るには)最低でも4年~5年、2022年も赤潮が発生して死ぬと先が見通せない。俺の代で船動かせるかな、そんな感じ
厚岸町では、11月からウニ漁を断念することを決めた。今後の漁が見込めず、船の燃料代もかさむためだ。

これから新しい稚ウニの放流が始まるが、漁がない中、稚ウニを買うことも困難だ。
厚岸町・横田 秀敏 船頭:
稚ウニは水揚げがなかったら払えない金額なので、何%でも半分でも補助してくれたらありがたい
例を見ない規模で広がる赤潮被害。北海道民の暮らし、そして日本の食卓を支える北海道の漁業を守るため、政治はどのように動くのだろうか。
(北海道文化放送)