介護する子どもたち"ヤングケアラー"を支援するにはどうしたら良いのだろうか。声を上げづらい子どもたちと孤立する家族。
その小さな声を、自らもヤングケアラーだった記者が聞いた。

私が小学生の時、祖母が脳卒中で倒れた。祖父は認知症に。父親は仕事で忙しく、母親と次女の私が介護を担ってきた。

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「ヤングケアラー」としての13年の生活

食事の準備。そして、時折家を出て行ってしまう祖父の見守り。トイレの介助もしていた。

介護は13年に及んだ。私のような介護にあたる子どもを「ヤングケアラー」と呼ぶことを知ったのは大学生の時だった。

2021年4月に公表された国の実態調査では、中学生の17人に1人、クラスに2人程度いるとされている。

「ヤングケアラー」に求められる支援は…

どういった支援が必要なのか、ヤングケアラーたちを訪ねて声を聞くことにした。

初めに会ったのは、札幌市の大学生 瑠南(るな、21)さん。

家は母子家庭。精神疾患のある母親は状態が悪い時は起きることができず、自傷行為をすることもあった。瑠南さんが2人の弟と協力して、家事や母親のケアを担ってきた。

家事や母親のケアをする日々…

瑠南さん:
洗濯、掃除、調理、ごみ捨て…。母親が調子が悪い時は病院に付き添ったりとか、自傷行為をしそうなときには危ないものを隠したりしてました

瑠南さんは母親に対し、「なぜ子どもなのに家事をしなければならないのか」と心の中で反発していた。かつての私も、祖父母によって大切な家族の時間を奪われたように感じていた。

瑠南さんは、最近になって母親の気持ちが分かるようになったという。

瑠南さん:
(母親は)なりたくてこういう体になった訳じゃないし、「させたくて家事をさせた訳じゃない」と言ってました

「家族全体」への支援を

母親は周囲に相談する人がいなかった。親には行政が支援をし、子どもには学校の先生が相談に乗るなど、家族全体を支援してほしいと訴える。

瑠南さん:
当事者というよりも親の方に関わっていただいて、親の病気に対する対策であったり、お金に余裕がない家庭だったら金銭的な支援で、学校的には子ども自身が気軽に相談できるような大人が増えたらいいのかなと思います

「中学生」のヤングケアラーは

もう1人、ヤングケアラーの中学生に出会った。札幌市の香織さん(仮名・中学1年生)だ。

保育園に通う弟の送り迎えや家事をしている。自宅を訪れた。香織さんは母親の美智子さん(仮名、38歳)と、小学生と保育園に通う2人の弟と暮らしている。

美智子さんは夜間の介護の仕事と、倉庫の仕事を掛けもちしている。暮らしを成り立たせるためには娘の力が必要だ。

母親が仕事に行っている間、弟の送り迎えや洗濯などの家事をする。
しかし、ギリギリだった生活のバランスは、新型コロナによって崩れた。

「コロナ」で崩れた生活

もとの仕事は収入が激減。転職を余儀なくされた。

美智子さん:
トイレの水は1回で流さず、みんなでまとめて流していました。お風呂も私は1週間くらい我慢して、子どもたちも学校がない日はお風呂入れないようにしていました。洗濯も細かく分けないで1回で洗濯するようにしていました

育児支援制度が利用できないか札幌市に相談したが、美智子さんが家を空ける夜間帯に育児をサポートしてくれるサービスはなかった。

夜間の育児サポート受けられず…「娘」が担当する現実

美智子さん:
母子家庭の札幌市の育児サポートに、夜、子どもたち寝かしつけたら帰ってもらっていいのでと聞いたんですが、断られたことがあるんですよね。(夜間の)時間帯からは見られませんと言われました。そうすると、娘にお願いするしかないなって…

香織さんを頼りにする一方、申し訳ないという気持ちが募る。

美智子さん:
感謝しかないです、本当に。本当は辛いのかもしれないけど。「大丈夫だよ」「ママ行っておいで」「ありがとう」って。「お仕事頑張ってね」って言ってくれるので…。感謝ですし安心して仕事に行けます。
いつも笑顔で、嫌な顔ひとつしないで送りだしてくれるので、「頼むね」っていったら「大丈夫だよ」って。いっつも大好き大好きって伝えています。
そして謝りますね。ママがこんなんでごめんねって、いっつも謝って

ヤングケアラーへの支援の必要性が議論されるようになったが、専門家はケアラーを支えるための法律が必要だと訴える。

求められる「法整備」

大阪歯科大学 浜島 淑恵 教授:
どの法律の中に位置づけられて制度化されていくのか、明確にして進めていかないと、政治体制が変わることで予算がつかなくなったり、ヤングケアラー支援が弱まってしまうことが考えられます。
しっかりと法律の中に位置づけて制度化していただきたい。継続的に取り組んでいただきたいと思っています

ヤングケアラーの背景には、親たちの不安定な暮らしや生きづらさがあった。
そのSOSにどう答えたらよいのだろうか?

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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