変わる労組のスタンス…旧民主党系政党支援の関係変化

4年ぶりに実施される10月31日投開票の衆議院議員総選挙。今回から大きく変わろうとしているのが、「労組は野党を支える」という構図だ。
労組がスタンスを変える理由や、現場への影響について取材した。

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立憲民主党の大西健介氏:
岸田政権が変われないなら、私たちが変えるしかない。皆さんと一緒に変えていきたいと思います

10月19日、JR刈谷駅前から選挙戦をスタートした、立憲民主党の前職・大西健介さん(50)は、今回5期目の当選を目指している。

戦いの舞台となる愛知13区は、刈谷市や安城市など5市からなる西三河南部のエリアで、毎回自民党と旧民主系の政党の激戦となることで知られている。もともと自民党を支持する保守層の強い土地柄だが、それと同じぐらい労働組合が強いためだ。

とりわけ、デンソーやアイシンといったトヨタグループ各社の労組の組合員が多く住んでいて、その支援なしでは選挙は戦えない。

立憲民主党の大西健介氏:
(13区が)日本でも有数の豊かな自治体であり続けているのは自動車産業のおかげで、そこで働く皆さん、組合の皆さんとも一緒になって、同じ方向で私はやっていけると思います

選挙では労組に支えてもらい、当選すればその意図する政策の実現に向けて汗をかくという“持ちつ持たれつ”のはずだった。
しかし、今回の選挙ではその関係に変化が起きている。

10月9日、大西さんの選挙事務所開きの時のこと…

連合愛知の幹部:
労働組合として、しっかりと大西さんを支援していきたいところなんですが、連合の組織している組合によって、支持する政党が違うということだけ ご認識をいただきたい

陣営幹部:
野党が、立憲民主党と国民民主党に分かれていることで、支援組織の連合の中にも足並みの乱れが生じております。そのため、今回の選挙は決して楽観できるものでなく、むしろ厳しいと言えます

これから選挙に臨もうという場で、冷や水を浴びせるような発言。「なぜ?」と思う言葉の背景には、大西さんが所属する立憲民主党が加わった「野党共闘」がある。

トヨタ系労組が立憲候補に距離…「共産党と協力」への抵抗感

候補者の一本化などで共産党をはじめ、れいわ、社民との連携を深めてきた立憲民主党。政権交代の実現に向けた手段だが、「労使協調路線」をとるトヨタ系の労組には、思想が異なる共産党と協力することへの抵抗感が根強くある。

全トヨタ労連幹部:
立憲民主党は、共産党とあれほど親和性を高くしている。ありえない

全トヨタ労連出身の連合愛知関係者:
自動車の基本は中立。共産アレルギーはかなり強い

実際、グループ各社の労組で組織する「全トヨタ労働組合連合会」=通称「全ト」は、前回までの選挙では愛知県内15選挙区全ての旧民主系の候補を推薦していたが、今回推薦したのは野党共闘に加わらない国民民主党の候補1人だけだ。

関係が比較的深い大西さんたちにさえ、「全ト」本部ではなく、下部組織の「地方協議会」からの推薦に留めた。
「全ト」本部の推薦がないという状況は、毎回選挙戦を支えてきた傘下の組合幹部や、全ト出身の地方議員の動きを鈍らせている。

全ト傘下組合の幹部:
全ト(本部)の推薦があれば縦で降りてくるが、地協(地方協議会)レベルだと横。各単組(単位労働組合)ごとの判断になる。うちも今回は推薦していない

全ト出身の地方議員:
全トが、親分が入ってないのに、我々組織内議員が陣営に入れるはずがない

大変革期迎える自動車産業…従来の関係リセット 政党との関わり方に変化

「全ト」が立憲の候補と距離を置き始めているのには、共産党へのアレルギーに加え、もう1つ大きな理由がある。

自動車業界は今、「100年に1度」と言われる大変革期に。
脱炭素=カーボンニュートラルへの対応を迫られ、スピーディーに、かつ効果的に対応できなければ、現在の雇用を守れなくなるとの危機意識から、全トは民主系だけでなく、自民党などとも連携も図る方針に大きく舵を切った。

これが端的に表れたのが、衆議院が解散した10月14日に発表された、古本伸一郎前衆議院議員の不出馬表明だ。愛知13区の隣で、トヨタのお膝元の11区から6期連続で当選していた「全ト」の組織内候補の突然の不出馬だった。

古本伸一郎前衆議院議員:
国を良くしたい思いが同じであるならば、“対立より解決”の方法がないものか。街をよくしたい思いが同じならば、組合は旧民主党、地域は自民党という壁をなくせないものか

50年以上にわたって守ってきた議席を捨て、自民党との対立を避けた。

トヨタ労組の西野勝義委員長:
今後は従来以上に政策実現に重きを置きながら、「何党」ということよりも「何をしていただけるのか」を重視して、是々非々で連携を模索していきたい

従来の関係をリセットし、政党との関わり方を大きく変えた「全ト」。今回の動きに専門家は…

早稲田大学社会科学部の篠田徹教授:
「これから大変な困難に立ち向かうんだから、これくらいのことはするんだぜ」っていう覚悟を示したメッセージだと。「全ト」が自分たちの雇用を確保するために、もっとはっきりした形で産業支援をしてもらえるような政策を打とうとするところに支持を求めようと。カーボンニュートラルの時代に向かって、どういう政策を皆さんは考えていますかと。
より選択肢を広げるという風に理解したほうがいいのではないかと

自民党の候補には追い風か…決着つく投開票日は10月31日

こうした組合の変化を当然歓迎しているのが、碧南市議や愛知県議を経て、大西さんの対抗馬として今回初めて衆院選に出馬した自民党の新人・石井拓さん(56)だ。組合の方針転換が、自身の選挙への追い風になるのではと期待を寄せている。

自民党の石井拓氏:
社会全体としては、労働環境とか雇用環境をきちっと整備していくのも国とか行政の役割ですし、そういった面では当然、僕らも今まで自民党というか保守系の議員も、ずっとそのために動いてきたし…。蓋を開けないとわかんないと思いますよ、選挙というやつは

小選挙区で勝ち上れるのは、ただ一人。

立憲民主党の大西健介氏:
いろいろ難しい部分はありますが、今まで4期一緒にやってきたということですから、私自身も自動車産業が抱える課題についてもこれまでも取り組んできたし、これからもしっかり取り組んでいきたいと思っていますので、そこは大きな影響はないと信じてますけど…

労組票を奪えるのか、守れるのか。決着がつく投開票日は10月31日。

(東海テレビ)