学校の保健室のように気軽に相談できる場所を

名古屋市中区栄の高架下に現れた「街角保健室」は、若者が心や体の悩みを相談できる場所だ。

これは名古屋の保健体育の教諭らが、コロナ禍で孤立する女の子たちが気軽に立ち寄れる場所を作ろうと、2021年8月から始めたもの。学校の保健室のように、気軽に相談ができる場所に…。ここでは保健体育の教諭や産科医らが、性について大切なことを若者たちに伝えている。

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名古屋市中区栄の若宮広場に現れたピンク色のテント「街角保健室」は、10代の女の子のための無料スペース。

お菓子にマスク、消毒液や化粧品が振る舞われ、無料でカラーセラピーも行う。さらに、生理用品やコンドームも無料で配布している。

テントで若者たちに声をかけるのは、名古屋の南山中学と高校で保健体育を教えている中谷豊実先生(59)。

中谷先生らのグループは、2002年から愛知県内の高校生に対し、性に関するアンケート調査を実施。8月から若者が心や体の悩みを相談できる場所として、街角保健室を始めた。

丹羽咲江院長:
これ「生理のトリセツ」って言ってさ、(生理が)辛いときに見る感じだけど、あんまり生理痛ひどかったらちゃんと病院きてね

咲江レディスクリニックの丹羽咲江院長は、ボランティアの女子大生と共に女の子たちの悩みや不安を聞いている。

女の子A:
生理不順というか…。普通に来て、次の月はめっちゃ少ない、でその次の月はめっちゃ多いみたいな…

丹羽咲江院長:
排卵していなかったりすると、少ないと多いの波がある。将来赤ちゃんが欲しいなと思った時に、できやすいタイミングがずれやすいから。その時はちゃんと病院に行って

丹羽院長は、雑談も交えながら彼女たちの性の悩みを聞いている。

「異性とどう会話すればいいのか」若者たちの間で進む“性の草食化”

愛知私学性教育研究会らが2019年に県内の高校生約7000人に調査したところ、セックスの経験が「ある」と答えたのは男子が14.6%、女子が12.8%だった。

丹羽院長と中谷先生は、高校生の性の実態についてこれまで3回調査をしてきた。

2002年の調査では男子が28%、女子が33.8%と男女共に30%前後がセックスの経験が「ある」と答えていた。この結果に、丹羽院長は「性の草食化が進んでいる」と指摘する。

丹羽咲江院長:
草食化が進んだ、性に関心のない子供たちが増えていて…。一方でSNSなどで知り合って、会った当日にセックスしてしまう子も少なからずいたということで、二極化が進んでいる

街角保健室では、複数の男女が恋愛について話をしていた。

丹羽咲江院長:
(女の子に向かって)「段階を経て、手をつないでチューして、ハグしてセックスしないとダメだよ」と男の子に言ったら、面倒くさいって

女の子B:
一日で全部しちゃえばいいんじゃない…

丹羽咲江院長:
外見はすごくカッコいいし、優しい男の子なんだけど彼女もいない…。女の子とどう会話したらいいか分かってない子が多いんだなって

丹羽院長は、異性とのコミュニケーションの取り方や特に性的同意について、しっかり彼らに伝えていく必要があると考えている。

日本は性教育の“超発展途上国” 間違った知識が広がっている

調査では、アダルトビデオやサイトを見たことがあると答えた女子が32.3%に対し、男子は78.2%にのぼっている。学校で20年以上性教育に携わってきた中谷先生は、今は情報が氾濫し、性について間違った知識がまん延していると話す。

中谷豊実先生:
これあげる、コンドームね。女の子ってわれわれ男よりも色々と立場が弱い。体のつくりも性感染症なりやすいのよ

性教育用に作られたコンドームは、練習のため2個入り。QRコードを読み取ると、使い方講座や医師が解説する動画を見ることもできる。

中谷豊実先生:
コンドームは女の子もちゃんと知ってなきゃダメだからね。中にいっぱい大切なことが書いてある。長い爪でキュッキュッっとやったら、「本当に破れるじゃん」とか、男に任せちゃダメだぞ

日本は性教育については“超発展途上国”と中谷先生は指摘する。

アンケート調査で「交際相手と知り合ったきっかけ」について聞いたところ、同じ学校と答えた生徒が78.1%だったものの、SNSやアプリで知り合ったというケースが12.0%いることがわかった。

また知り合ってからセックスするまでの期間については、1カ月から3カ月が22.7%だったが、会ったその日と答えた女子が17.7%もいた。ここから出会い方やプロセスの問題が見えてくる。

女子高生「めっちゃ心強い」 身の上話や生理の悩みを相談

2人の女の子が、街角保健室にナプキンをもらいに来た。コロナ禍で収入が減る人が増える今、“生理の貧困”が社会問題になっている。

訪ねてきた18歳の女子高校生は、親が生活保護を受け始めたことをきっかけに1人暮らしをしているという。

女子高校生:
(親が)「生活保護のお金なくなったからお金貸して」ですよ。親と生活しても変わらないなって思ったので、いいタイミングだし出ようって

市内のシェアハウスで暮らしているという女子高校生の身の上話は、30分以上続いた。

丹羽咲江院長:
生理痛とか生理不順とか生理のトラブルは、基本的に窓口負担ゼロで医療が受けられるから。役所で「病院行きたい」と言うと医療券をもらえるから

女子高校生:
めっちゃ心強いですよ。気軽にいける場所にいらっしゃるので、普段できない相談とかできますよね

中谷豊実先生:
コロナで女の子たちがますます厳しい状況になっている。悩みとか不安をポロっと言ってくれたらサポートする。もしもの時には、あそこ(街角保健室)があるという安心感を提供できていることは良かったかなと

学校の保健室のように気軽に話ができる場所が、今の若者たちには必要と中谷先生は考えている。

(東海テレビ)

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