就職活動でよく聞かれるのが「学生時代に頑張ったこと・力を入れたこと」。企業の面接ではある種の定番で、「ガクチカ」と略して呼ばれたりもする。

この質問が新型コロナウイルスの影響で、就活生を悩ませているという。

ガクチカのエピソードは(1)部活やサークル(2)アルバイト(3)海外留学や旅行といった、外部での体験や学びを話すことが多いが、コロナ禍ではこうした活動が難しい状況だ。SNSを「ガクチカ」で検索すると、話せることがないという声もあった。

コロナ禍では外部での体験などが難しい(画像はイメージ)
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初の緊急事態宣言が発令された、2020年春を境目に考えても、その時に大学1~2年だった学生は就職活動の準備を始めていてもおかしくない時期だ。今の学生たちは就職活動で何をアピールし、面接官はどんな視点で評価しているのだろう。

今回は学生の就職活動と企業の採用活動を支援する、新卒採用支援メディア「ONE CAREER」の編集部・吉川翔大さんに、学生や面接官が「ガクチカ」をどう考えているのかを伺った。

コロナ禍の制約を逆手にアピールする学生も

――学生がガクチカに悩んでいる話は聞いている?

はい。コロナ禍は就職活動全体に影響を与えていますが、部活動やアルバイト、海外留学などが経験しにくい状況なので、ガクチカが作れない、答えられないという話を聞きます。

その一方で活動できない状況でどのように変化に対応したかというエピソードで、アピールにつなげる学生もいます。学生全体だと「どうにかしないといけないが、どうしよう」と悩んでいますが、何とかしようと行動はしている。困る人と対応した人に分かれている印象を受けました。

吉川翔大さん(画像提供:「ONE CAREER」)

――アピールにつなげた学生はどう対応した?

例えば、フリーペーパーを制作していたがコロナ禍で作れなくなったので、オンラインに切り替えた。コロナ禍で海外留学先から帰国することになったが、現地で学んだことを帰国後に生かした…などと、制約や変化への対応をアピール材料にしたりしていますね。


――コロナ禍ならではというアピールはある?

オンラインの活動に取り組む学生はいます。オンラインで働ける企業にインターンで行き、そこでの成果を伝える。企業はSNSアカウントの“中の人”を委託することもあるので、そこに応募して経験をアピールする。SNSのフォロワー数を客観的な実績として示すこともあります。変化に対応し学生ならではの強みを生かしているので、ここは良い流れだと感じています。

オンラインでの実績をアピールに(画像はイメージ)

その一方で、オンラインでの頑張りは企業に評価されるのか、スタンドプレイ(自分が目立つための行動)に見られないかという声もありました。ガクチカには「チームで困った時の自分の頑張りを言わないといけない」ような固定観念もあるので、評価されるのかと思うそうです。

「すごいこと」ではなく自分らしさが伝われば良い

――ガクチカに悩む学生へのアドバイスはある?

学生は「面接官にはすごいことをアピールしなければならない」と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。(1)内容(2)伝え方を工夫すれば問題ないと思います。内容については、自分らしさが伝わるエピソードであれば十分です。過去の体験からさかのぼって見つけたり、自己分析のツールを使って見つけてみてはいかがでしょうか。

伝え方については、コロナ禍のオンライン採用でも頑張れる部分です。学生の年代だと、初対面の相手に自分をアピールするのは初めてのことかもしれません。友人や先輩などで試してみて「この文章や話し方なら伝わる」ということを見つけてもよいでしょう。


――参考になるような、エピソード例を教えて。

過程に着目したエピソードがいいと思います。例えば「サークルの新歓代表をして、入部者を増やした」ガクチカを持つ学生がいたとします。その際に「何人増やしたか」という結果をアピールしようとしがちですが、「新入生への連絡方法を刷新した」「オンラインならではの新歓イベントを企画した」といった増やすための工夫の方が重要です。そうした工夫の方が「どんな考えや行動をする人なのか」が分かりますし、ビジネスシーンでも再現性が高いからです。

アピールは「すごいこと」でなくてもよい(画像はイメージ)

――そもそもガクチカはなぜ、就活の定番なの?

学生の資質を見るのに非常に便利なのだそうです。企業の人事に聞くと、学生のスキルや実績は面接だとわからない。そのため、どんな強みを持っているか、どんな環境で頑張れるかを知るためにガクチカを聞いているそうです。


――コロナ禍でガクチカを評価する視点は変わっていたりする?

今もガクチカを聞く企業は多く、評価の傾向がすごく変化したわけではありませんが、オンライン採用では自分の強みを出せる人とそうでない人がいるので、面接官も評価に悩んでいるという声は聞かれます。そのため、グループワークやインターンの行動などで学生の個性を知ろうとするところもある印象です。企業側の意識は変化していると思います。

面接官も悩んでいるという(画像はイメージ)

――学業への取り組みが、見直されていたりはする?

部活動やアルバイトがしにくくなったことで、研究やゼミの活動などが評価される構造はあるのではないでしょうか。就活は“学業VSインターン”のような構図で語られることもありますが、自分で考えて行動している結果としての学びは評価されやすい環境にあると思います。

コロナ禍の就活は企業の“らしさ”が分かりやすい

 ――就活サイトの運営側として、コロナ禍の就活の変化をどう受け止めている?

社風や働くイメージがしづらいという声は聞きます。一方で、企業によってはオンラインだからこそ伝えられる”らしさ”を表現できている事例も聞きます。例えば、弊社では企業説明会のオンライン開催もしていますが、そこでは企業の人事の方が質問にアドリブで答えるなど、トーク番組のように話すことが増えています。

実際のオンライン説明会※企業はフジテレビ(画像提供:「ONE CAREER」)

以前の企業説明会は“作られた説明”のようなものが多かったですが、多様化している印象です。学生からも好意的な反応が寄せられています。企業側も情報をオープンにしないと学生に選んでもらえないので、動画や記事で社員の関係性を見せるなどして社風を伝える工夫をする企業も増えています。

また、オンラインでの情報公開が進んだことで学生だけではなく、第二新卒や転職を考えている方も情報を入手しやすくなりました。新卒、中途と分断されていたものがなくなる、良いきっかけにもなったのではないでしょうか。

榎並アナが社風など語る場面も(画像提供:「ONE CAREER」)

――コロナ禍の学生と面接官に伝えたいことは?

学生目線だと、ガクチカを含めて「先輩と同じようにやってもうまくいかない」という壁に直面するかもしれません。オンライン化の良い変化は活用して、悪い変化は避けるような、工夫と対応力が求められるでしょう。悩むのも当然だと思います。大きな変化の中で、多くの学生の方が悩んでいます。周囲と比較しすぎず、この大きな変化の中で自分らしく行動してほしいと願っています。

企業目線だと、コロナ禍で学生の本音がわからないという不安があるかもしれません。ただ今はSNSやクチコミサイトなどで“生の声”も聞こえやすいので、本音も見えやすくなっています。学生の声に真摯に向き合い続けていただきたいと思います。


ガクチカで面接官が知りたいのはすごいエピソードではなく、あなた自身がどんな強みを持っているか、どんな環境で頑張れるかだという。いま悩んでいる人は、地味でも自分らしさが伝わることはないか、考えてみてはいかがだろうか。