タイで、いま日本のホテルが人気を集めている。
静岡県内の会社が日本から出張で訪れるビジネスマン向けにつくったホテルだが、なぜタイの人たちに人気となっているのだろうか。
タイは大の”親日国” 2019年には130万人が訪日
浴衣に身を包んだ大勢の人たち。実は、地元タイの人たちだ。記念撮影をしたり、団子を食べたり。
男の子:
とてもおいしい
こちらは浜松市のホテルチェーンが、タイ中部につくったホテルだ。週末はタイ各地から訪れる人たちで予約が埋まるこのホテル。人気の秘密は、コロナ禍ならではの理由があった。

人口は約7000万人のタイ。
首都バンコクのまちなかを歩いてみると…
池谷庸介記者:
日本の旅行会社の横にはラーメン屋さんがありまして、さらにその横にもラーメン屋さんがあるといった風に、日本のお店が多く確認できます

ラーメン店に、薬局、さらに日本で人気のブランドやチェーン店など。バンコクには多くの日本の店があふれている。

タイ人女性:
日本食、寿司などが大好きです
別の男女:
よく日本人街に行きます。日本のレストランがたくさんあるから
実はタイは大の親日国。タイから日本を訪れる人はこの10年で急増していて、2019年は130万人が日本を訪れた。

民間会社がタイ人に日本の好きなところを聞いた調査では、1位は「街がきれい」、2位は「自然や景色」、3位は「日本食」、4位は「アニメ」という結果だった。
コロナで行けない…日本懐かしむ映像がブームに
しかし、新型コロナウイルスの影響でタイから日本への旅行はできない状況に。
こうしたなかSNSでは…春を感じさせる桜と富士山の映像。投稿には「日本と日本の桜が懐かしい」との書き込みも。

ほかにも新幹線に、ご当地グルメなど。タイの人たちが日本を旅行した際の様子が続々と投稿され、こうした日本を恋しがる映像をSNSに上げるのがちょっとしたブームとなっている。

「行った気分に」浴衣が人気
そして、そんな日本が大好きなタイの人たちの受け皿となっているのが、タイ中部の町・シラチャに2年前に開業したホテル呉竹荘。浜松市に本社を置くホテルチェーンだ。

週末のこの日、午後になると続々とチェックインするタイの宿泊客の姿が。
一体、何が人気かというと…

池谷庸介記者:
ホテルの廊下になりますけれども、たくさん下駄が並んでいますね。中に入ると、浴衣が選べるようです。賑わっています
地下にある部屋にぎっしりと並べられていたのは浴衣。そこにチェックインをした宿泊客が訪れる。なかには、飛びはねて、はしゃぐ子供も。
このホテルで行われているは、浴衣の着付けサービスだ。

タイでは、お目にかかることがなかなかない浴衣を、様々なデザインや色の中から選べるとあって好評の様子だ。
さらに、浴衣を着た人たちが向かったのは…
記念撮影する客:
1、2、3!

敷地内に設けられた竹林での撮影や、茶器やふすまが用意された和風な部屋での撮影など、いわゆる「SNS映え」する写真の撮影だ。
タイから日本へ行けなくなるなか、このホテルが「日本を感じられる場所」と人気になっている。
タイ人女性:
ホテルに入った時、日本を感じました。浴衣を着て本当に日本にいるような写真も撮れるし

別の女性:
日本が恋しいし、フェイスブック用に日本らしい写真が撮りたい。それで「私は日本にいますよ」とみんなに言いたいの
浜松の“ソウルフード”ギョーザもお目当て
さらに宿泊客のもう1つのお目当ては日本食。
なかでも看板メニューは…
浜松のホテルらしく浜松餃子だ。野菜たっぷりのあっさりした味が人気とのこと。

さらに団子と日本茶を楽しめる、日本風のアフターヌーンティーセットも名物のひとつだ。

タイ人親子:
これが日本のアフタヌーンティーセットね。「サクラ」という違うセットもあるのね。可能なら、また来たいわ
もとは日本人ビジネスマン向け 地元PRで“大当たり”
タイで人気のこのホテル。実は、当初は周辺の工業地帯に進出した日系企業の工場に出張で訪れる日本人ビジネスマン向けにつくられた。
しかし新型コロナの感染拡大の影響で、利用客はコロナ前の1割にまで減少。

そこで「浴衣や日本食、日本らしい部屋が楽しめる」と、タイの人たちに向けてのPRを強化したところ、これが“大当たり”。
日本に行きたくても行けない日本好きのタイ人たちが徐々に訪れはじめ、取材時には週末の客室の稼働率は8割を超えるまでに回復した。
呉竹荘シラチャ・河原崎悟支配人:
正直ここまでタイのお客様にご利用いただくと思っていなかったので、うれしい悲鳴。タイのお客様にもっと喜んでもらえるようなサービスを今後もっと提供して、タイのお客様にもご利用いただきたい

最近では人気ぶりを聞きつけた現地のテレビ局が取材やロケで訪れるなど、町の観光スポットにもなりつつある。
コロナ禍で思わぬ発見をしたこちらのホテル。さらなるタイ人の宿泊客の取り込みに向け、おもてなしをさらに充実させる計画だ。
(テレビ静岡)