2020年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、緊急事態宣言下で外出自粛が要請され、自宅で過ごす時間が増えた人が多かったことだろう。そして、企業ごとにテレワークの導入も進んでいった。

2021年も1月に自治体ごとに緊急事態宣言が出され、現在は11都府県に拡大し、自宅で過ごすことや在宅勤務をしている人もいるだろう。

社会全体の変化に合わせて見直されたものが「住まい」。“おうち時間”が増える中で、自宅をより快適な空間にしようと考えるのは、当然の思考といえる。住まいに求めるものも変わっていった。

そこで、不動産情報サービスを提供するアットホームのマーケティングコミュニケーション部広報グループ・西嶋優理子さんに、2021年のトレンド予測と2020年の不動産トレンドの振り返りをしてもらった。

“脱都心”をキーワードに「地方創生」の波が来る!?

アットホームが2021年の不動産業界のキーワードと捉えているものは、「多様化」と「地方創生」。

「プラスワン需要や住まいの見直しは2021年も続き、住まいがより一層パーソナライズされていくことが予想されます。プライベート空間と仕事スペースの両立、ライフスタイル重視派、ミニマリスト志向など、個々のライフスタイルに合う物件が求められていくでしょう」

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不動産業界でも、「多様化」への対応は進んでいる。仕事用スペースや小さい子どものいる家庭で居室以外の小部屋など、もう1つ部屋が欲しいという「プラスワン需要」を受けて、間仕切りが動いて部屋を分割できるテレワーク向け物件が出てきている。

「『地方創生』は国土交通省が力を入れており、近年課題となっている地方の空き家を利活用するため、サブスクリプション型の移住サービスの構想が立ち上がっています。実は、コロナ禍に、空き家への関心が高まった時期があったのです」

全国版 空き家・空き地バンクサイト

緊急事態宣言が発令されていた2020年5月、空き家バンクに登録されている物件を探せるアットホームの「全国版 空き家・空き地バンクサイト」の閲覧数が、前月の1.4倍ほどに増えたとのこと。

「郊外需要の高まりだけが理由とは言い切れませんが、地方への移住を視野に入れた方が増えたタイミングだったのではないかと考えられます。都心にこだわらない方が増えているので、2021年はさらに『地方創生』に対する関心が高まる予感がしています」

withコロナ時代のニーズは「仕事スペースがほしい」

では、生活様式が一変した2020年には、“住まい”に何が求められたのか。

「物件を探しているお客様から、コロナ禍で新たに出てきた要望が『プラスワン需要』。外出自粛に伴い、テレワークが進んだことで出てきた『仕事用の部屋を増やしたい』という需要です」

「子どもの声がオンライン会議に入ることを避けたい」「夫婦2人揃ってテレワークだから、部屋を分けたい」といったように、仕事場としての役割が住まいに求められるようになっていった。「当初2LDKを希望していたカップルが、仕事スペース確保のため、3LDKの一戸建てを購入した」というケースもあったそう。

「テレワークが浸透したため、『書斎つき』『インターネット接続無料』といった物件が人気です。また、テレワークであれば、職場へのアクセスを重視しなくても良くなるため、『都心から離れたとしても広い部屋がいい』という方も増え、ニーズが多様化してきています」

都心のニーズがなくなったわけではないが、都心から郊外へと移住する人の割合は、かつてより増えているとのこと。働き方が多様化したことで、理想のライフスタイルに合わせて、住む場所も自由に選べる時代になったといえるかもしれない。

「引越しはしないとしても、今住んでいる部屋を見直そうという動きは目立ちました。これまで仕事で外に出て、寝るために帰るような状態だった方も、外出自粛によって自宅が寝る場所であるとともに、仕事をする場所・趣味を楽しむ場所にもなったからです。

例えば、『自炊が増えたため、キッチンの設備を充実させた』『外出できない分、庭にテントを張り、アウトドア気分を楽しめるようにした』といった方もいたようです」

おうち時間が増え、模様替えを楽しむ人も増えたためか、家具や家電のサブスクリプションサービスも盛り上がりを見せているとのこと。

外出自粛の影響で「契約のオンライン化」が加速

「2020年はお客様だけでなく、不動産会社の変化が進んだ年でもありました。以前からお部屋探しや賃貸契約のオンライン化は進められていたのですが、コロナ禍において、一気に加速した感覚があります」

不動産会社向けに不動産業務ソリューションも提供しているアットホームでは、物件探しのIT化を推進してきた。VRゴーグルを用いた疑似内覧、物件写真に家具を配置して入居後をイメージできるバーチャルホームステージングなど、ネット上の情報を充実させようという動きが出てきていたのだ。

「ネット上の情報強化に加え、賃貸契約の手続きをオンラインで完結させるシステムの開発や活用も進んでいます。当社が提供しているオンライン入居申込システム『スマート申込』の契約加盟店が、2020年6月から急拡大しているのです」

「スマート申込」拡大の背景には、物件探しをするユーザー側のニーズもあるといえそうだ。アットホームが2020年に行ったアンケート調査では、「住まいの申込の手続きは、スマートフォンやパソコンなどを利用して行いたい」という声が、択一式の回答の中でもっとも多かった。

出典/「アットホーム「『ニューノーマル時代の住まい探し』調査」(2020年9月30日~10月1日、18~50歳の男女412人を対象に調査)

「オンライン化が進むことで、何枚も書類を書いたり不動産会社に赴いたりといった手間が省けますし、『情報が集めやすく、冷静に判断しやすい』という声もあります。また、不動産会社にとっても、メリットが大きいのです」

これまで、入居希望者がいる際にその物件が空いているか確認するには、電話を用いていた。1つの支店で、1日に何百件と電話をかけることもあったのだとか。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、物件情報を簡易かつスピーディーに確認できるシステムができれば、業務の効率化が図れる。

「確認作業が減る分、お客様と向き合い、ニーズにマッチするお部屋探しをサポートするという業務に時間を割けるようになります。オンライン化によって、サービスの質の向上につながるのではないかと考えています」

不動産会社の変化も起き、これまで以上に住まいへの意識が高まった2020年。今も新型コロナウイルスの脅威は解消されておらず、2021年は住まいのパーソナライズ化がますます進んでいきそうだ。

取材・文=有竹亮介(verb)