コンビニやスーパーなどに並ぶ商品の魅力的なパッケージデザインは、それなりに時間をかけて作るものだと誰もが思っているだろう。

そんな常識を塗り替えそうな斬新なサービスが登場した。
パッケージデザインを開発する株式会社プラグは、AIを使ってなんと1時間に1000案の商品デザインを作るサービスの提供を9月末から始めた。

(出典:プラグ)
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プラグ社はこれまで、用意された商品デザイン案について消費者がどれだけ好むのかをAIで予測するサービスを展開していた。
編集部でも、カルビーの定番スナック菓子のパッケージ変更に、同社のサービスが使われたことを取り上げている。

(参照記事:「とうもりこ」と「えだまりこ」のパッケージ変更で活躍…今やこんな“アドバイザー”に頼る時代!?

新たなサービスでは、パッケージに使う画像の素材をアップロードするだけでAIがデザインを生成してくれる。
そして920万人分の消費者調査のデータを元に、AIが消費者好みのデザイン案を選定し、さらに上位候補を元にしたデザインを生成。このような「デザイン生成と評価」を繰り返すことで1時間で1000案を創出するという。
 

(出典:プラグ)
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こうしてできた1000案の中から好感度TOP100や、「おいしそう」「かわいい」などのキーワードそれぞれに見合うデザインのランキングを表示することで、パッケージデザイン決定の指標として利用するのだという。
 

(出典:プラグ)
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同サービスの元になっている消費者調査の人数や、扱える商品カテゴリーは徐々に増えており、現在では「スナック菓子」「炭酸飲料」をはじめ「ペットフード」や「ビジネス書」など51種、ほぼすべてのパッケージ形状に対応しているという。
 

(出典:プラグ)
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これまでのパッケージデザイン開発は、最終段階で実施する消費者調査と、その結果を元にしたブラッシュアップで2~3ヶ月かかっていたとしているが、このAIサービスを使えば、どのぐらい時間を短縮できるのか?また、AIがデザインするなら、今後デザイナーはいらなくなってしまうのか?
担当者に聞いてみた。
 

全体で半分以下の時間にできると思います

――なぜ「デザイン」の評価だけでなく自動生成も始めた?

2019年に東京大学の山崎研究室と共同研究という形でパッケージデザインを評価するAIを完成させ、評価ができるのであれば生成もできるのではないかと研究を続けていました。

プラグでは日々、デザイナーがデザインを作り、リサーチャーがリサーチをお手伝いしています。そういった中で、デザイン制作の後半のプロセスにおいてよくみられる「少しの差しかないデザインを並べて調査をしたり、修正を繰り返したり」というプロセスをAIで短縮できないだろうかという思いがありました。

今回のデザインの自動生成は、そういったデザインプロセスの短縮できる部分をお手伝いし、マーケターやデザイナーにより多くの時間を作りたいという思いから開発が進みました。
 

――従来のブラッシュアップ工程と比べて、同サービスならどのぐらい時短できる?

複数のデザイン案を作り、それを調査にかけてブラッシュアップし、また調査にかける。
このプロセスをAIだと1時間で実行することが可能です。

実際には複数のデザイン案を作る時間や、AIが生成したデザインを元に印刷・生産するためのデータに変える入稿作業がありますので、すべてが1時間でできるわけではありませんが、全部で4か月かかるデザインプロジェクトがあった場合、半分以下の時間で進めることが可能だと思います。
 

――なぜ100案なの?もっと絞り込むのも可能では?

はい。もっと絞り込むことができます。
ただ、経験上、ざーっと見られて評価できるデザイン案は100案が限度かな、ということで 100案にしました。上位3案や5案だけの表示だと少ないと感じる方が多いのではないかと考えました。

ランキング100案の中で、「おいしそう」「かわいい」「高級感・上質感」等、商品のコンセプトにあったデザインはどれかなど、いろいろな発見をしていただけるのではないかと考えております。
 

デザインが似てくることはない?

――AIが同じ種類の商品パッケージをデザインしたら、やっぱり似てくるのでは?

そもそものデザイン(デザインパーツ)が異なるため、同じようなデザインにはならないと考えております。
 

――古い消費者調査のデータが入っていると、デザインの好みも古くなるのでは?

弊社は2015年からデザインの学習データを保持していますが、古いデータと新しいデータの差からデザイントレンドを予測できると考えています。
ですので単に古いデータではなく様々な活かし方があると考えています。
 

――このサービスで、将来的にはデザイナーがいらなくなる?

いえ、弊社は30名のデザイナーが在籍しておりまして、このAIはデザイナーやマーケターがより大事な仕事に集中していただけるように、時間を作り出すことに価値があるサービスだと考えています。
「本質を見極めて可視化する」というデザイナーの本質的な価値・仕事はこれからもなくならないと思います。
 

(出典:プラグ)
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デザインのプロジェクトにかける時間が半分以下になればそれだけコストも削減できるだろう。
同社は今後、毎年春・秋の年2回、120万人以上の消費者調査を行い、さらにAIの精度を上げ、同時に商品のカテゴリーも増やしていくという。
より精度の高いAIがどんな素晴らしいデザインを見せてくれるのか、今から楽しみだ。
 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。