自民党総裁に選出された岸田文雄氏は、最初の大仕事である党役員人事に着手した。BSフジLIVE「プライムニュース」では識者を迎え、役員人事から見える自民党の実情、総裁選の背景、そして新政権の課題を徹底分析した。

岸田人事は論功行賞。甘利氏には”配慮” 目玉は党風一新の会の福田氏

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長野美郷キャスター:
党役員の顔ぶれについて。党4役では、幹事長に麻生派で岸田さんを支持した甘利明さん。政調会長に総裁選を共に戦った高市早苗さん。総務会長に衆議院当選3回の福田達夫さん。選対委員長に総裁選で岸田陣営の選対本部長を務めた遠藤利明さん。この人事に関しては。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
「論功行賞人事」。さらに言えば「牽制と配慮の人事」。総裁選で先頭に立った麻生派の甘利さんには配慮。一方、党改革・若返りの象徴、また「派閥の論理だ」という批判から免れるための象徴的な人物として福田達夫さん。今回の人事の一番の目玉だと思う。牽制としては、河野太郎さんを干した。また恐らく、小泉進次郎さんを使わない。

福田達夫 自民党総務会長

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授:
まず今日は、参与ではなく個人としての発言と受け止めてください。
一般論では老壮青を起用し素晴らしいが、派閥横断的対処で適材適所ではない。ただ確かに、福田達夫さんを総務会長に抜擢した凄さはある。通常、当選3回の議員は良くて政務次官。それが党の最高議決機関の本部長。これを本当に仕切れるかどうか。しかし、党風一新の会を仕切ったことは評価し、期待して見たほうがいい。

三浦瑠麗 国際政治学者 山猫総合研究所代表:
何かやれるのじゃないかという気が、若干している。福田さんはコロナ禍で、データ分析をしっかり政策決定に持ち込むEBPM(エビデンスに基づく政策立案)をかなり頑張った。

高市氏は「個人として」「政調会長として」2つのお面をかぶるか

高市早苗 自民党政調会長

反町理キャスター:
高市さんの政調会長起用について。総選挙の選挙公約に取り掛かる上で、総裁選での高市さんの主張との整合性も問われる。靖国参拝、憲法、財政の問題。政治生命がかかるかもしれない。

三浦瑠麗 国際政治学者 山猫総合研究所代表:
2つのお面をかぶると思う。ひとつは、総理候補にもなった高市早苗という個人の志。安全保障で警鐘を鳴らすなどの政治は、選挙公約にしなくてもできる。もうひとつは、政調会長としての仕事。難しいのは、短期的なコロナ禍の経済支援だけではなく、説得力のある中長期的な分配策をどう言うか。ここは岸田さんの公約に寄せた形にすると思う。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
閣僚、まして官房長官となると靖国参拝の問題が絶対に出てくるが、政調会長は違う。そして部会もあり、政調会長が政策を決めるわけではないから、少々自分の公約と違っても説明は十分可能。

河野氏の広報本部長は格落ちか 飯島氏「干しながらも客寄せパンダに」

河野太郎 自民党広報本部長

長野美郷キャスター:
党役員人事、7役の残り3役。広報本部長に河野太郎さんという人事については。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
広報本部長は前面に出る役回りではなく、ある意味では事務的。能力を最大限発揮させるポストではないと思う。外務大臣や防衛大臣を歴任した人には軽い。むしろ閣僚にして、堂々と表に出して厳しい仕事をしてもらえばよいのでは。

反町理キャスター:
従来のイメージと異なる広報本部長像を打ち立てるということは?

橋本五郎 読売新聞特別編集委員

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
やらせてみなければわからない。むしろ広報本部長という肩書きをフルに使いながら、河野さんがこれからの足場を逆に築いていく手もあるかもしれない。

三浦瑠麗 国際政治学者 山猫総合研究所代表:
閣内に河野さんがいるより、党にいてもらった方が不協和音感がない。エネルギー政策で真っ向から反対する部分があり、経産大臣も環境大臣もできない。引き続きのワクチン担当や規制改革担当大臣への留任はあり得たと思うが、野党支持者の中で一番支持が高い河野さんが同じ船に乗ってない感じがするのはやはりリスク。

反町理キャスター:
岸田さんは重要政策における閣内不一致を恐れたと。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授:
私の見方は違う。この党役員には「スネに絆創膏を貼った人」がいて選挙に影響する。河野さんを干しながらも、人寄せパンダが選挙に必要。その総括責任者としての広報本部長。一方で、党執行部で問題が起きた時の責任を全部河野さんが背負わざるを得ない配置。

小渕優子 自民党組織運動本部長

反町理キャスター:
もう一点、小渕優子さんは久々の表舞台へのカムバック。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
政治資金規正法の問題があり、経産相を辞めたことがあった。だが、もうそろそろいいだろうということで組織運動本部長。小渕さんは党内でも人望がある。業界団体に対して、党を代表するこの役職にもプラスになると判断したのでは。

反町理キャスター:
党7役の中には、二階派も岸田さん自身の宏池会(岸田派)もいない。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
二階派については諸説あるが、岸田さんに刺された恨みがあり、総裁選の最初は河野さん支持という感じだった。途中から変わったかもしれないが。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授:
宏池会がいないのは当たり前。ここで登用せず、みんな閣僚にもってくる。

「菅首相は選挙には勝てるが体力がなかった」「いや、万策尽きていた」

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授(左)、長野美郷キャスター(中)、反町理キャスター

反町理キャスター:
今回の自民党総裁選について、まずは菅首相退陣の経緯。小泉進次郎氏が菅首相に色々な意見をぶつけた。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授:
出るなということではなく、出る場合は3年任期満了まで総理総裁として頑張れるかということ。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
進次郎さんは、今やってもボロボロになるだけで、出なければ後で必ず実績が評価されるという撤退論ですよ。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員(左)、三浦瑠麗 国際政治学者 山猫総合研究所代表

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授:
それは表の報道。直近の総裁選だけなら再選できました。3年は体力がもたない。

反町理キャスター:
では、菅・岸田の総裁選であれば菅さんには十分勝ち目があった? さらには総選挙を勝ち抜ける自信が菅さんにあった?

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授:
あった。どう計算しても総選挙で過半数以上は取れますから。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
不出馬だったのは今の状況を切り開くことができないから。あの状況の中で党役員人事、そして総裁選の後ろ倒し、解散。反対されことごとく失敗している。万策尽きて不出馬を表明せざるを得なかったとしか考えられない。

河野氏の敗因は「人気を過信」「分厚い政策チームの不足」

長野美郷キャスター:
今回の自民党総裁選の結果。河野氏は第1回投票で票が伸びず、1票差で岸田氏が勝利。決選投票では国会議員票で圧倒的な強みを見せた岸田氏が大差勝ち。河野氏の敗因はどこに?

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授:
本来こういうときは、原発や年金問題などについてしゃべらない方が利口。あとは部会についての発言も、謝罪したりするようじゃダメ。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
やはり自分の人気に対する過信があった。6~7割もの党員票を取れると思っていたのは傲慢。そして、部会についての発言はかなり効いている。部会で一生懸命発言してきた若手に対しては特にそう。また脱原発についてなど、過去の言動との整合性に四苦八苦していた。

三浦瑠麗 国際政治学者 山猫総合研究所代表:
コロナ禍で財政規律の国際公約を破っていいため、今はなんでも通る。これを機に、コロナ禍からのリカバリーで日本の年金不安・将来不安を解消しましょう、高齢者の最低保障年金だけではなく子どもや現役世代に対してもやります、と言うことはできた。ただ中途半端だった。エネルギー政策についてもパッケージが準備できていなかった。河野さんを支える分厚い政策チームがいなかった。

自民総裁選のルールは改正が必要。米大統領選のような質にするには

反町理キャスター:
総裁選のルールの話。今の方式は適切か。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学常務理事・特命教授:
自民党は国民政党だと本当に言うなら変えるべき。党員・党友の投票後に国会議員が決めるのは日本だけ。アメリカなど諸外国は逆で、最初は国会議員が2人選び、その後に党員が最終決定する。今回の決選投票のように党員・党友票が47票分しかないのは異常。

三浦瑠麗 国際政治学者 山猫総合研究所代表

三浦瑠麗 国際政治学者 山猫総合研究所代表:
おそらく、日本は政党所属意識が極めて低い。共和党と民主党が国を二分するアメリカのような国では、たぶん飯島さんが言われる方式が正しい。もっと開かれた予備選みたいなことをして、国民に人気のある2人を競わせるとなったら盛り上がるし、民主的な正統性もあるが。

反町理キャスター:
ただ、自民党総裁選は12日間しかない。アメリカの大統領選は1年間であらゆる政策論争が行われ、磨かれて20人ほどの候補者が最後は1対1になる。先日、番組にお迎えした伊吹文明元議長は、12日間では政策の違いはわかっても取りまとめ能力などの資質が測れない。それがわかるのは長年、その候補者を見てきた国会議員でしかないから、決選投票は国会議員の比率が大きくていいのだというお話をされた。

橋本五郎 読売新聞特別編集委員:
議院内閣制と大統領制との決定的な違いがある。また、党員が本当にその党に入りたいと思って入っており、自分の1票の重さを感じているかという不信。党員・党友を信じきれていないところがあり、このようになっている。

BSフジLIVE「プライムニュース」9月30日放送