ヤクルトの村上宗隆が19日の広島戦(神宮)で35号ホームランを打ち、21歳7か月の史上最年少で通算100号ホームランを達成した。

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32年間破られることのなかった大記録を塗り替えた村上に対し、1989年に21歳9か月という当時の最年少記録を打ち立てた西武の清原和博さん(54)が、今の村上、そして今後の村上への期待について本音を語った。

村上宗隆が史上最年少100号を更新

村上と同じ高卒4年目の1989年、中西太氏(西鉄)が1955年に記録した22歳3カ月を抜き、100号に達した清原氏。

「節目の100本目というのは、自分も嬉しかったのを覚えていますし、はっきり覚えていますね。多分フジテレビが中継だったんですよ。満塁で回ってきて、ライトに打ったのはすごく覚えていますね」

そう懐かしそうに当時を振り返った。

一方、高卒1年目の2018年にプロ初打席で初ホームランを放つと、2年目には10代最多となる36本塁打を記録した村上。

村上を初めて見た時の印象について清原氏は、「彼を初めて見たのが神宮の室内で、彼がまだ2年目ぐらいだったんですかね、その時に『若手で体の大きい子がいるな』と思って。ティー打撃の姿を見て、スイングが速かったし、『あれ誰かな?』と聞いたら、『あれは村上ですよ』と言われ、『ああ、あの子』という感じでした」と語る。

村上に重なる55番のレジェンド

それから2年、最年少で100号に到達した村上に清原氏が重ねたのは、自らがよく知る55番のレジェンド・松井秀喜氏(47)だった。

「同じ55番を付けている松井選手のように、左バッターとしてはスイングはもうとにかく強く、速いというのは2人共通している点ですよね。松井君の場合は長嶋さんが1000日計画ということで、毎日長嶋さんとバットを振っていましたから、年々松井君は凄いバッターになっていきました。

自分は飛距離で日本人では負けるとあまり考えたことはなかったんですけど、フリー打撃はいつも松井君と同じ組だったので、松井君が東京ドームの看板にドカン、ドカンと当てると、僕も気になってやった懐かしい思い出があります」

しかし、清原氏はその松井氏をも凌ぐ、村上の可能性を感じていた。

「やっぱり松井君と違って90度にホームランを打てるというのはすごい強みですよね。松井選手の場合はほとんど右中間からライト方向が多かったんですけれども、(村上は)逆方向にも打つ。

今、メジャーのタイトル争いを見ても、ホームラン王を争っている人は、大谷選手も、ゲレーロJr.選手もペレス選手も全方向にホームランを打つ。昔は引っ張るのがホームラン打者というイメージがあったと思うんですけど、今の時代は全方向にホームランを打てるというのが、ホームラン王争いで重要になっていくのかなと思うので、本当にこれから末恐ろしい選手だと思います」

確かに村上の本塁打の内訳は、約35%が左中間からレフト方向、NPB通算332本塁打の松井氏の約11%と比べると、圧倒的に逆方向の比率が高いのだ。

そんな村上に清原氏が託した思いを、自らの経験をもとに話してくれた。

「この9月、10月が一番ポイントになってくると思うんです。ここで打てるか打てないかというのがチームの優勝に絡む一番大事な試合が続きますから、そこで打てる選手になってほしいなと思いますよね。

村上選手がここまで来たというのは本当に毎年進化している証拠だと思う。自分の場合は長嶋さんの444というのは凄く意識しました。そこをまず野球選手は憧れるんじゃないですかね。これから村上選手はウサギのように速く、カメのように粘り強く、200本、300本とどんどん伸ばしていってほしいですね」

ホームラン新時代を切り開く男

巨人の4番として活躍した清原氏は、村上とホームラン王を争うライバル巨人・岡本和真(25)にもエールを贈る。

「ジャイアンツの4番というのは日本の4番なので、岡本選手はオリンピックに出られなかった悔しさであったりとかがあると思う。今、ホームランと打点でタイトル争いをしていますが、ここからが勝負なので、4番の力でジャイアンツを優勝に導く、勝負どころで打つ、それがジャイアンツの4番として一番大事になってくると思う。

負け試合でいくら打っても数字が伸びてもダメ。ポテンヒットでもライト前ヒットでも、“勝つためのバッティング”をするのがジャイアンツの4番だと思う。そういうのを意識してまだまだ逆転優勝を狙える位置にあると思うので、そういう4番打者になってほしいなと思います」

さらに、清原氏が86年にマークした新人本塁打記録31本超えの期待がかかるも、打撃不振で2軍に降格(取材時)した阪神の怪物ルーキー佐藤輝明(22)についても、思いを寄せる。

「矢野監督も考えがあってのファームでの調整だと思う。もう一度基本を見直して、自分のバッティングを見つめ直して、大切な時間にしてもらいたいなと思いますね。2軍に落ちているからといって全然落ち込むこともないですし、今度1軍に上がった時は、また大爆発できるようにこの時間を有効に使ってほしいですね。

階段に例えると、ずっと階段を一気に上ってきて、下ったのではなくて、今は踊り場にいるという気持ちでいてほしい。踊り場があってまた階段を上っていくという。やるべきことをやって1軍に復帰して、また打ち始めてくれたらいいなと思いますね」

清原氏が残した記録が更新される1年となった今シーズン、最後に微笑むのはどの選手になるだろうか。