20年前に逆戻りしたような驚愕の光景

アフガニスタンの首都・カブールで女性の教育や就労の権利を訴えていた女性達のデモ。そこに武装勢力タリバンの戦闘員があらわれ、参加者の女性を次々と鞭で強くたたき付け、暴力的にデモを阻止する-そんなショッキングな映像が捉えられた。

ツイッターより
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2021年8月15日にタリバンがカブールを陥落させ、政権を掌握してから1カ月あまり。20年前のかつての政権で女性の権利を著しく制限した当時に逆戻りしたかのような光景が再び出現したのだ。

タリバン側は女性の高等教育は保障するものの、女子学生は「ヒジャブ」と呼ばれるスカーフの着用を義務づけると発表、学校や職場は男女別々にする動きも広がっている。街では女性の姿が大幅に減少し、国営テレビの女性キャスターは男性に代わった。

一方、かつてのタリバン統治下では決して見ることのなかったある光景に世界が注目した。女性達による抗議デモだ。

女性達の多くは顔を隠さず、タリバンの戦闘員達の目の前で声をあげ続けた。多くは高等教育を受けた女性達で、首都カブールに住み国内では経済的に恵まれている。貧困や就学率が長年課題となっているこの国で、彼女たちは恵まれた立場を失うリスクを冒し行動した。

タリバンはかつて極端なイスラム法の解釈から女性の教育や就業を禁じ、さらには残虐な刑を科した。現在は旧政権時代とは違いイスラム法の範囲内で女性の権利を守ると主張しているが、国際水準で人権を守るとは考えにくくデモを行うリスクが極めて高いことは想像に難くない。

彼女達はなぜそれでも声をあげたのか。FNNはデモ主催者の一人である27歳のアテファ・モハマディさんに話を聞いた。モハマディさんは、タリバンによる抑圧により、今後デモを続けることが困難な状況であるとしながらも、「声をあげ続ける」と強調した。

以下、その証言を詳報する。

“生きて帰れないかもしれない”と思った

アテファ・モハマディさん:
デモをするたびタリバンは阻止しようとしてきます。拳銃を見せつけながら迫ってくるんです。それでも私たちは「世界に自分たちの声を届けよう」とデモを続けました。

ある日のデモには国内や海外から報道陣が来ていました。私たちは彼らの前を行進していたのですが、戦闘員は記者を逮捕しました。私たちが撮影した映像も削除させられました。

さらに戦闘員は私たちを取り囲み、威嚇射撃を繰り返しました。私はこのとき“生きて帰れないかもしれない”と思った。その後、無理やり地下に連れて行かれ、地べたに座らされました。戦闘員は私に銃をつきつけ「動けば撃つ」と言い、逆さに持った銃で私の肩や背中、頭を殴ったんです。私は「女性たちもイスラム教徒。なぜ同胞に手を上げることができるのか」と言いました。声をあげるのは私たちの権利です。

デモ主催者の一人であるアテファ・モハマディさん
デモ主催者の一人であるアテファ・モハマディさん

アテファ・モハマディさん:
戦闘員は自らを指でさしながら「なぜ女が家の外に出るんだ」「外に出るのは男のすることだ」と言いました。私たちを指さして「誰が外に出るよう指示した?」とも。彼らは、私たちに自由があるとは考えていません。私たちはこの日、とてもデモを続けることはできませんでした。それでもカブール以外の、例えば、タホール州、バダクション州、カピショーン州、バルワン州では最後までデモを続けています。

独裁による不当な人権侵害は許せない

アテファ・モハマディさん:
アフガニスタンの人々には決断する力があります。アフガン女性のなかには、この20年間教育を受けるために奮闘した人々がいます。女性にはこれまで社会を作るという大きな役割があったから。でもタリバンは女性の自由、教育や就労を否定しています。暫定政権の閣僚に女性は1人もいません。

私たちは世界に声を届けるために努力します。デモをすれば注目を集め弾圧される。デモ以外の選択肢は、様々な方法で自分たちの声を伝えることです。女性の権利が認められるまで、私たちは声をあげ続けます。独裁による不当な人権侵害は許せない。

アテファ・モハマディさん  アフガニスタン パンジシール州出身 女性達によるデモの主催者の一人
アテファ・モハマディさん  アフガニスタン パンジシール州出身 女性達によるデモの主催者の一人

モハマディさんは取材後「私たちはデモ以外の手段を考えなきゃいけない。メディアの取材に応じたり、国外の人たちとのコミュニケーションチャンネルを作ったり、デモができなくてもそういう方法で声を上げていきたい」とメッセージを寄せた。

「声を上げ続ける」女性達の動きはSNS上にも広がっている。

アフガニスタン・アメリカン大学の元教員バハル・ジャラリ氏は、真っ黒なドレスとベールを身にまとった女性の写真を引用ツイートし、「アフガニスタンの歴史の中で、このような服装をした女性はいませんでした。私がアフガンの伝統的なドレスを着た写真を投稿したのは、情報を提供し、教育を行い、タリバンが広めている誤った情報を払拭するためです」と投稿。

共感した世界中の女性達が、伝統衣装を着た画像を投稿し「これがアフガニスタンの文化」と訴えるなど様々な形で抗議が続けられている。

#Donttouchmyclothes
#AfghanWoman
#AfghanistanCulture
#WomenOfAfghanistan

ツイッターより
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【執筆:FNNバンコク支局長 百武弘一朗】

百武弘一朗
百武弘一朗

FNN プロデュース部 1986年11月生まれ。國學院大學久我山高校、立命館大学卒。社会部(警視庁、司法、宮内庁、麻取部など)、報道番組(ディレクター)、FNNバンコク支局を経て現職。