2021年2月のミャンマー軍事クーデターから約7カ月。民主化に向け抗議を続ける市民への軍の弾圧によって、死者が1000人を超えたとも伝えられ、緊張状況が続いている。こうした状況に沖縄で暮らすミャンマー人たちも故郷の現状を憂い、静かな抗議を続けている。
コロナ禍より故郷の状況に胸を痛める…
沖縄県那覇市のミャンマー料理店「ロイヤルミャンマー」。
この記事の画像(16枚)多民族国家のミャンマーは民族料理がバラエティに富んでいて、こちらのお店ではライスヌードルを使った「カッチーカイ」や、香り豊かで味わい深い「ミャンマーカレー」などが人気だ。
常連客:
とても美味しいです。このカレーも日本のカレーとは全然違うし、インドカレーともまた違うし、本当にミャンマーのカレーですね
料理に腕を振るうのは、2008年に沖縄にやってきたミャンマー人のトウ・ヤ・ソウさん(38)。
トウ・ヤ・ソウさん:
緊急事態宣言中なので、食べてうつらないように、ソーシャルディスタンスをちゃんととってもらったりして営業しています
新型コロナウイルスの影響でお店の運営も大変だが、それ以上にソウさんが胸を痛めているのが故郷・ミャンマーの状況だ。2021年2月の軍事クーデター以降、民主化を求める市民への弾圧が続いていて、これまでに1000人以上が亡くなったと伝えられている。
トウ・ヤ・ソウさん:
僕の仲間の中でも独裁者が許せなくて、完全に最後まで戦おうと、ミャンマーに残っている。彼らの方が本当に危険で、僕は死ぬことはまずない。でも彼らは捕まったら、今捕まってすぐ死ぬかもしれない…
トウ・ヤ・ソウさん:
この店でも以前ミャンマーのビールを売っていたけど、抗議の1つで今はミャンマービール売っていない。なぜかというと、軍が支持する会社なので。市民を毎日のように殺していて、その銃の弾のためになるので、お店ではミャンマービールは売っていない
家族や友人への思い、自由が失われることへの不安
クーデター以降、沖縄で暮らすミャンマー人たちはSNSで呼びかけあい、民主主義を取り戻したいと国際社会に協力を呼び掛けている。
那覇市でも2月、抗議集会が開かれた。
トウ・ヤ・ソウさん:
民主主義が今まさに銃口の前で壊されようとしています。自由を愛するミャンマー人にとっては命の問題なのです
ミャンマーで暮らす家族や友人に危険が及ばないよう、身元を明かしての取材に応じられない人もいるが、同じ思いで現地にお金や物資を送るなどして、民主化運動を支援している。
ミャンマー人女性:
私と2011年に沖縄で一緒に留学した友達も拘束されて、今は行方不明の状態ですね。あと家族のことも心配です。これからどうなるかわからない
ミャンマー人男性:
軍事政権に戻ると、教育とかが悪化するのではないか。スーチーさんの時には明るくて、なんといえばいいのか、自分で考えるための力とか、そういうのも与えようと、教育に入っている。あと自由もある
現地の状況を知るために主にSNSで情報収集しているが、軍事クーデター以降、インターネット環境が安定しないため、家族や友人の安否を確認することも簡単ではない。
トウ・ヤ・ソウさん:
ハロー
ソウさんの友人:
はい、聞こえますか
トウ・ヤ・ソウさん:
今どんな状況ですか?
ソウさんの友人:
今は少し落ちついた。先ほど空軍が見回ったので避難していた
トウ・ヤ・ソウさん:
ヘリで見回っていたの
ソウさんの友人:
はいそうです
トウ・ヤ・ソウさん:
それなら逃げ回ってるの?
トウ・ヤ・ソウさん:
電話で話した友人は、ミャンマーの刑法第505条で拘束するために、国営テレビで指名手配を出された中にいる1人だから。ずっと避難しているので、いま家族とは別々です
先の見通せないミャンマー情勢。沖縄で暮らすミャンマー人たちは、故郷を憂い静かに抗議している。
トウ・ヤ・ソウさん:
自由・平等・友愛その3つ、とにかく軍事政権の命令には従わない。国民が勝つまで戦うという方針がある人が大勢なので、顔を隠さない。彼らに恥ずかしいですよね。海外にいる私がびびって怖がって、自分の家族だけを考えるのはできないですね。
ミャンマーの情勢を聞くと、私たちの日常との違いに驚く。ミャンマー人が切に願う「民主化」という言葉の重さ、その意味を考えさせられる。
(沖縄テレビ)