「タリバンはイスラエル人の末裔」説が再燃

アフガニスタンから米軍を放逐した武装勢力タリバンが、実はイスラエルの民の血を引いているという説がここへきて再燃している。

武装勢力タリバンの戦闘員ら(2021年8月17日・カブール)
この記事の画像(5枚)

タリバンはイスラエル人の末裔か?

イスラエルの英字日刊紙『エルサレム・ポスト』電子版(9月9日)の記事が、この問題を改めて提起した。

記事によると、カブール陥落をきっかけに、タリバンに注目が再び集まることで、ユダヤ人の歴史の中で最も未解決の謎とされる「失われた10支族」との結びつきが論じられているという。

タリバンは、アフガニスタンの最大民族パシュトゥン人が中心のグループだが、この民族はかねて「イスラエルの子孫」であると口述伝承してきたという。

加えて、生後8日目で割礼を行い、肉とその乳を共に食さない。安息日の前夜にろうそくを灯すこと、寡婦が死亡した夫の兄弟と結婚する「レビラト婚」などを慣習としており、古代ユダヤ教の戒律や習慣と共通する。

アフガン大統領府を占拠したタリバン(2021年8月15日・カブール)

パキスタンの専門家が「共通する遺伝子」を発見

さらに、これを科学が客観的に結びつけた。

パキスタンの遺伝学者シャザド・バッティ博士は、パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州の4部族のミトコンドリアDNAを分析した結果を遺伝子研究の学術誌『ミトコンドリアDNA』2017年28号に掲載し、その中で新たな発見をこう報告した。

我々は、これまで不明だったアシュケナージ(東欧系)ユダヤ人とパシュトゥン人を遺伝子的に関連付けることができた。(パシュトゥン人を構成する)カタック族にユダヤ人に共通する半数体遺伝子J1b(4%)とK1a1b1a(5%)を発見したのだ。これは、新石器時代初期の遺伝子合流の結果であり、現代のパシュトゥン人の複雑な遺伝子の基礎を構成したものと言える。

15歳の時にタリバンに銃撃されたノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんもパシュトゥン人だ

「失われた10支族」の行方は・・・

古代のユダヤ人の世界は「北王国」と「南王国」に分裂していたが、「北王国」は紀元前722年に現在のイラク北部の王国、アッシリアに滅ぼされ、その10部族の指導者たちが連行される「アッシリア捕囚」が起きた。その後、彼らがどうなったか文書などに残されていないため「失われた10支族」と呼ばれるようになった。

その後アッシリアが滅亡すると、囚われのユダヤ人たちは各地に離散して地域の民族の中に埋没したようだが、その多くは今のアフガニスタンに移住したと考えられていた。

その末裔が、イスラエルの存在すら否定するタリバンであるとすれば皮肉な巡り合わせだが、タリバンはイスラムの教義に過剰なほどに忠実なことで知られるのに対して、ユダヤ教にも男性は黒い衣装に髭やもみあげを剃らず、女性は髪を覆うことを律する超正統派「ハシディーム」がある。

超正統派ユダヤ教徒の男性

また、アフガニスタン人が英国や旧ソ連、そして今回は米国の支配を排撃して「帝国の墓場」といわれる“戦上手”なことも、イスラエルが4回にわたるアラブ諸国との戦争を有利に戦ったことを想起させるものがある。

とは言え、タリバンはイスラエルに対して激しい敵意を抱いており、またパシュトゥン人全体としてもイスラエルに帰依する意図は全くないようだ。

いつの日か、お互いの歴史的な民族意識がユダヤ人とパシュトゥン人との敵意の解消のきっかけを作り、将来の関係改善の基礎になるかもしれないと「エルサレム・ポスト」紙の記事は結んでいる。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】