新型コロナの「出口戦略」として、重要なポイントとなる「治療薬」。いつ、どんな薬が使えるようになるのか?
めざまし8では、日本における“治療薬の今”を整理し、今後の見通しをまとめました。
抗体カクテル療法の高い有効性
現在、日本で承認されているのは、レムデシビル(エボラなど抗ウイルス薬)、デキサメタゾン(抗炎症薬)、バリシチニブ(リウマチ薬)、抗体カクテル療法の4つです。
「抗体カクテル」は2種類の治療薬を同時に点滴投与するもので、現状では、重症化を防ぐ“切り札”とされ、軽症から中等症の患者に対して、入院や死亡のリスクを70%減らすとされています。
ここに来て新たなデータも明らかになってきました。
東京都のモニタリング会議の資料では、420人の対象者のうち400人が軽快したと示され、実にその割合は約95%にのぼります。ここまで数字があがっていることには、どんな理由があるのでしょうか。
昭和大学医学部客員教授の二木芳人氏はこのデータの前提を解説します。
昭和大学医学部客員教授・二木芳人氏:
これは早く医療監視下におかれた患者さんのデータですから、お薬の効果に加えて、きちんとした管理をすればより良くなるということであると。でも、明らかに非常に有効なお薬であることは間違いないですね。
治療薬以外にも症状が軽快した要因があることを指摘しながらも、「抗体カクテル療法」の高い有効性を評価しました。
この記事の画像(6枚)新たな治療薬「ソトロビマブ」の登場
一方で、政府は新たな治療薬の「特例承認」に向けても動きだしています。
イギリスの製薬会社、グラクソ・スミスクラインが開発した点滴薬「ソトロビマブ」です。
この薬は、コロナウイルスの体内への侵入を防ぐ抗体薬で、アメリカで緊急使用許可が出ているほか、海外の治験では、重症化リスクの高い軽症者から中等症の患者に対して、入院・死亡のリスクを約8割減らすとされています。そのうえ、変異株にも一定の効果が認められるとの報告も。この「ソトロビマブ」が出てくる意義は、どんなところでしょうか。
これまでの治療薬を対象患者別でみると、重症は「デキサメタゾン」「バリシチニブ」、中等症の重い方で「レムデシビル」。そして、いま多くの自宅待機や入院できない患者に相当する軽症から中等症は「抗体カクテル」一択しかありませんでした。
そこに「ソトロビマブ」が入ってくることで、供給量でもカバーする範囲が広くなっていく利点が見込まれます。
昭和大学医学部客員教授・二木芳人氏:
基本的にはいまの抗体カクテル療法と同じようなことになります。やはり、点滴で使えます。それで恐らく1回でということで、使える薬が増えるということです。こちらの薬に関しては、果たして“デルタ株”に対してどれくらい効くのか少し未知数です。いま日本で使っている抗体カクテル療法というのは、基本的にほとんど、みんなデルタ株ですから。現実的にそれに対しては効いている。今度出てくる薬については、デルタ株に対する臨床試験のデータというのはそれほど多くないと思うんですよ
デルタ株に対する効果については、これからの臨床データの収集でより正確に明らかになってくるようです。しかし、この2つは点滴の治療薬であり自宅で気軽にできるものではありません。いま、医療機関と患者、双方の負担を軽くして、問題を解決できそうな「飲み薬」タイプの治療薬が今後承認される可能性も出てきています。
“飲み薬”治療日本でも…進む開発に期待の声
診断後早期に外来でも自宅療養者でも手軽に使えるようになることが期待されている「飲み薬」での治療。
日本の塩野義製薬などが開発しており、塩野義製薬は既に治験を開始しています。目的は無症状や軽症患者の重症化を予防することで、この薬には、ウイルスの増殖を抑え体内のウイルス量を低下させる働きがあるといいます。
国内で100万人分供給できる体制を整えるとともに、国内での大規模な臨床試験を目指す、という段階です。二木氏は進展の早さに期待感を示します。
昭和大学医学部客員教授・二木芳人氏:
いまのこの塩野義のものとファイザーのものはですね、同じ3CLプロテアーゼといってウイルスが体の中で増殖する時に使う酵素を抑制してくれる、だから、ウイルスが増えないということで、恐らくよく効くんだろうという風に思いますね。塩野義はいまフェーズ1(初期段階)ですから、とりあえず人に使ってみて、安全性を評価する段階です。ですが、この薬も意外に早い期間で開発が進んできていますから、早い段階で、少し目処がつくデータが出てくるかもしれませんね。
果たして、こうした薬は新型コロナウイルス感染症に対して、どう効いているのでしょうか。
この感染症は、体内→侵入→複製→増殖→放出→暴走の順に進行します。
その中で、「抗体カクテル療法」や「ソトロビマブ」は、初期の段階「侵入」を防ぐという働きがあります。塩野義製薬やファイザーが開発中の飲み薬は、「増殖」の段階で、ウイルスが広がるのを抑える効果が期待されます。さらに、「暴走」して重症化した場合は、「デキサメタゾン」や「バリシチニブ」が使われます。
二木氏は、「早い時期に飲めば風邪と同じように扱えたり、選択肢が広がっていく可能性がある」と“飲み薬”のもつ効果を説明します。
そもそも、感染の一番始めの段階で止められないかという福島県立医科大学の高木基樹教授らの研究があります。抗体を鼻の中に噴霧してウイルスが結合する感染を防ぐというものです。
昭和大学医学部客員教授・二木芳人氏:
アイデアとして興味深い、研究が進めば良いものになる可能性があります
また、飲み薬やこうした薬が私たちの手に入るときに、価格はいくらくらいになるのでしょうか?
昭和大学医学部客員教授・二木芳人氏:
軽症の方に経口薬が何万円ではニーズがでないですね。高くても千円二千円というレベルに持って行かないとダメです。大量生産が可能になればできると思います
これまでの話を踏まえると、大量生産が行われれば、通常の薬局で手軽に買える市販の“新型コロナ対策飲み薬”が実現することは充分ありそうです。
(めざまし8 9月10日放送より)