8月26日、新型コロナで自宅療養中だった50代の患者の死亡が確認された。静岡県によると、患者には基礎疾患があったものの、本人が自宅療養を希望し、健康観察が行われていた。

しかし…

静岡県健康福祉部・後藤幹生参事:
8月25日は健康観察ができず、ご本人の症状等は確認できておりません。急激な新規感染者の増加に伴い、自宅療養者も急激に増えておりますので、人数を次々増員しているんですけど、間に合わなかったということになります

静岡県の会見  健康福祉部・後藤幹生参事
静岡県の会見  健康福祉部・後藤幹生参事
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静岡県内の自宅療養者の数は第5波初期の7月20日には100人台だったのが、8月29日には4292人と激増。
 自宅療養者へのケアが大きな課題となっている。

自宅療養者「十分な相談できない」

新型コロナに感染した静岡市の50代男性。取材した日は、自宅で療養を始めて6日目。1人暮らしでワクチンの接種を受けておらず、ぜんそくの基礎疾患がある。

自宅療養者(50代男性):
(Q.症状は)
発熱が38度後半から39度で全然下がらない。(咳こむ)呼吸が100パーセントできていない感じはあります

(Q.食べ物は)
おなかを下しているのもあり、いわゆる栄養ゼリーぐらいで、あんまりちゃんとしたものは…うどんを2日間くらい食べたぐらいで。正直、あとはちゃんと食べられていない

(Q.助けてくれる家族や身寄りはいるか)
元々こっちの人間ではないので、こっちにはいないです

リモートで取材に応じる自宅療養中の男性(50代) 2021年8月26日取材
リモートで取材に応じる自宅療養中の男性(50代) 2021年8月26日取材

男性が頼るのは、陽性が判明した時に処方された解熱剤のみ。保健所から1日1回、健康観察を受けているが、「十分な相談が出来ない」と話す。

自宅療養者(50代男性):
電話は来るけど、特に何もしてくれるわけではないという現状。こういう状況だから病院に行った方がいいとか、薬の治療した方がいいとか、そういう提案は一切ないですね。なんとか自力で回復して時間かけてやってね、というふうにしかとれない

男性が頼れるのは最初の診療で処方された解熱剤のみ
男性が頼れるのは最初の診療で処方された解熱剤のみ

休む間もない保健所…積み上がる“調査待ち”ファイル

一方、その保健所は…

保健所の職員:
38度9分…きのうは36度9分。昼間上がりました?

保健師が休む間もなく、自宅療養者の健康観察を行う静岡市保健所。第5波以降、人員を増加し、以前に比べて患者1人にかける時間を短縮して効率化を図っているが…

静岡市保健所 積み上がる“調査待ち”ファイル(2021年8月取材)
静岡市保健所 積み上がる“調査待ち”ファイル(2021年8月取材)

静岡市・田辺信宏市長:
自宅療養者であっても、安心安全な療養環境を確保できるよう医療機関の皆さんと協力して、より手厚くサポートしていきたい

静岡市では、これまで保健所が自宅療養者の意向を確認し、健康観察の希望があれば協力する医療機関に依頼し、医師による健康観察を行っていた。
しかし今回、保健所を挟まずに、患者が受診した医療機関が直接聞き取りを行えるように仕組みを変更した。

静岡市では健康観察を保健所を介さず医師が直接行うことに
静岡市では健康観察を保健所を介さず医師が直接行うことに

医師が電話で健康観察 患者の安心感増す

ーー医師と患者の電話ーー

患者 「急変することもあると聞いているが、どんな時どうしたらいい?」
医師 「私にお電話いただければ大丈夫ですよ」
患者 「じゃあ、なんかあったら電話します」
医師 「大丈夫ですよ」
患者 「ありがとうございます」

すでに医師による健康観察を行っている清水区の医院は、保健所の負担軽減のほかにもう1つ、期待される効果があると話す。

自宅療養の患者と電話する吉永治彦医師
自宅療養の患者と電話する吉永治彦医師

吉永医院・吉永治彦医師:
どうしても医者でないとできない話もあるし、治療に直接むすびついてくるので、こういう薬を出しましょうかとか、必要であれば往診してみることもできます。そこまで選択肢を広げてお話できるので、そういった意味では患者さんは安心しているのではないかと思う

患者の安心感が高まると話す吉永治彦医師(静岡市清水区)
患者の安心感が高まると話す吉永治彦医師(静岡市清水区)

一方で、医師への負担増加も懸念されている。
この医院では、健康観察を午前と午後の診療の合間に行っている。

吉永医院・吉永治彦医師:
日々の業務はすごく多くなってきているし、気もつかいます。発熱対応やっているところはみんなそうだと思いますが、それに加えて我々開業医はワクチン接種を死に物狂いでやっているのが本当のところです。そこにさかれる時間もかなりあり、状況としてはかなりひっ迫している

診療の合間に自宅療養者に電話をかける吉永医師
診療の合間に自宅療養者に電話をかける吉永医師

抗体カクテル療法は転機となるか

そんな中、自宅療養者などの軽症者向けの治療法として期待されているのが「抗体カクテル療法」だ。
2種類の抗体を混ぜて点滴で投与するもので、2種類の抗体がウイルスと結合してウイルスの増殖を防止。海外の臨床試験では、入院や死亡のリスクを7割減らす効果があるとされている。
県内ですでに実施している医療機関では…

浜松医療センター感染症内科・田島靖久部長:
投与実績は累積で12くらい。投与して大体2日後、48時間経過すると熱が下がって、ものすごく楽になったと言って帰っていくのがほとんどのケースです

浜松医療センター感染症内科・田島靖久部長
浜松医療センター感染症内科・田島靖久部長

当初は入院や宿泊療養の患者だけが対象だったが、国は緊急入院や経過観察ができることを条件に、外来診療での投与を認めた。
原則7日以内の投与や供給量が少ないなど課題はあるが、病床の確保や患者の不安解消に効果が期待される。

浜松医療センター・田島医師:
外来で投与して、後は自宅とかホテルなどで療養して頂いて経過を見守る。そうすることで、夜間とか救急で急に呼吸状態が悪化して搬送される症例はかなり減ると思います。そうすると重症者のベッド数もゆとりが出てきますので、救急のたらいまわしとか、搬送先が見つからないことも改善の余地が出てくると思います

静岡県内でも進む、自宅療養者への医療支援。
療養者の不安が和らぐようなきめ細かなサポートと、効果的な治療を迅速に受けられる体制づくりが急務だ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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