皆さんは“使い捨てカップ”をどのくらい利用しているだろうか。ドリンクの持ち運びに便利だが、飲み終えると容器はすぐにごみとなってしまう。

この問題を解決するかもしれない、“使い捨てない”カップが登場した。それが「CIRCLE CUP(サークルカップ)」という容器。廃材のタケを主原料とした、バイオマスプラスチック(生物由来の原料を活用したプラスチック)で作られていて、洗って再利用できるのだ。

これがサークルカップ。外見は一般的なカップとほぼ同じ(画像提供:ブルドーザー)
これがサークルカップ。外見は一般的なカップとほぼ同じ(画像提供:ブルドーザー)
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容器の丈夫さと耐用性も特徴で、食器洗浄乾燥機でも使用できるほか、−40度~+140度の耐冷・耐熱性能を持つ。長く安心して使えるものになっているという。

熱々のコーヒーでも問題ない(画像提供:ブルドーザー)
熱々のコーヒーでも問題ない(画像提供:ブルドーザー)

カップの利用料は“実質0円”

容器の利用システムも変わっている。サークルカップはテイクアウトでの貸し出し専用で、サービスの提供元・合同会社ブルドーザー(東京・渋谷区)と契約した、パートナー店舗に置かれている。

客として利用する場合、店頭でドリンク代+カップ利用料の300円を支払う必要があるが、飲み終えたカップを返却すると「エコ協力金」として、300円が現金で戻ってくる。つまり、カップ自体は“実質0円”で利用できるのだ

利用と返金システムの仕組み(画像提供:ブルドーザー)
利用と返金システムの仕組み(画像提供:ブルドーザー)

また、その日に返さなければいけないの?と思う方がいるかもしれないが、そこもご心配なく。カップの返却期限はドリンクの購入日を含めて8日以内で、パートナー店舗ならどこでも返せる。飲みたいときに頼み、時間があるときに返せばいいのだ。

サークルカップは2021年7月20日からサービスを開始し、8オンス(約240ml)のカップを都内の4店舗(2021年9月時点)で提供している。パートナー店舗は順次増やしていくという。
※8オンス容器のサイズ(高さ約100ミリ、口外径の底部約52ミリ、上部約80ミリ)

8オンスのサイズ(画像提供:ブルドーザー)
8オンスのサイズ(画像提供:ブルドーザー)

テイクアウトの考え方を変えるような提案だが、紙コップのように“くしゃ”っとはしないのだろうか。利用者の反応も気になるところだ。サークルカップの発案者である、合同会社ブルドーザーの代表・中西理恵さんにお話を伺うと、再利用できることで客や飲食店にもメリットがあるという。

カップを5分、10分で捨てることに疑問

――サークルカップの開発経緯を教えて。

2020年春、私が2歳(当時1歳)の子どもと外出したときの出来事がきっかけです。休憩したとき、子どもは持参したお菓子やお茶を、私はテイクアウトしたコーヒーを楽しみました。

さあ行こうというとき、私は子どものストローマグなどを当然持ち帰るのですが、飲み終えたカップは何気なくごみ箱に捨てました。そのとき、5分、10分しか使っていないのに捨てた自分の行動を「これっていいのかな?」とふと疑問に思ったのです。

環境問題にはそれまで興味がなかったのですが、紙カップ・プラカップについて調べると、製造や廃棄にかかる環境負荷が多大であることを知りました。カップは膨大な数が消費されるので、再利用できるシステムを作れないかと思い、この会社を立ち上げました

きっかけはカップを捨てた自身の行動(画像はイメージ)
きっかけはカップを捨てた自身の行動(画像はイメージ)

――開発でこだわったところは?

カップの品質にはこだわりがあり、飲食店・お客様・環境にメリットがある「三方よし」を目指しました。具体的には、飲食店が洗いやすいように食器洗浄乾燥機に対応したり、お客様が気軽に温め直せるように電子レンジに対応したりしています。

容器のサイズ感にもこだわり、カフェで使われることの多い、8オンスを採用しています。実際の利用者からは「12オンス(約350ml)もあれば嬉しい」とのお声をいただいておりますので、需要があれば提供も考えています。

試作も重ねたという(画像提供:ブルドーザー)
試作も重ねたという(画像提供:ブルドーザー)

――普通の紙カップやプラカップとはどう違う?

特徴は素材に、タケを主原料としたバイオマスプラスチックを使用していることです。タケは竹害を予防するために定期的に伐採され、廃棄されています。サークルカップの製造にはそのように廃材となったタケを活用しているので、廃棄物削減にも貢献しています。

万が一廃棄される場合でも、弊社調べでは従来のプラスチック製品と比べ、廃棄時の二酸化炭素の排出量を46%削減できるというメリットもあります。

カップは半永久的に再利用できる

――カップの耐久性は?どのくらい再利用できる?

高い場所から落とすなどして、壊れない限りは半永久的に使えます。プラスチックの食器を想像していただければと思います。一般的な紙カップ・プラカップは厚みが0.5ミリ以下のものが主流ですが、サークルカップの厚みは約2ミリで、簡単には破損しません。


――再利用することで衛生面での問題はない?

コロナ禍でもあるので、衛生面はすごく気にしました。高温でしっかり洗える食器洗浄乾燥機での洗浄を重視していて、飲食店にもそこは伝えています。カップの作りも凹凸などをつけず、洗いやすさにこだわっていますので、問題はございません。

食器洗浄乾燥機での洗浄を想定している(画像はイメージ)
食器洗浄乾燥機での洗浄を想定している(画像はイメージ)

――カップ利用料とエコ協力金のシステムを設定した狙いは?

使い捨て紙カップの料金はドリンク代に含まれており、購入者には実質0円という感覚だと思います。その手軽さをいかしたいと思い、このシステムを考えました。カップを返還すればお金は戻ってきますが、利用料が100円程度では捨てられかねないので、300円に設定しています。

――カップが“くしゃ”っとしたときはどうなる?

プラスチック製ですので「くしゃっとなる」ことはありません。考えうる破損は、高いところから落として割れる、踏んで欠けることでしょうか…。カップ自体は貸与品となるため、破損・汚損の場合もパートナー店舗に返却してもらいますが、その際、店舗側にて再利用できないと判断されたものはエコ協力金をお支払いしません。

使い捨てカップとマイタンブラーの間の“第3のカップ”になれれば

――個人や飲食店がサークルカップを利用するメリットは?

飲み終えたカップを捨てる場所がなく、自動販売機の近くにあるようなリサイクルボックスに無理に入れられている光景も見ます。サークルカップはパートナー店舗であればどこでも返せるので、個人はごみ捨てのストレスを感じず、テイクアウトを楽しめると思います。今後はお店の判断で、サークルカップで頼めば値引きされるような取り組みも進めていきたいです。

飲食店には、お客様が持ち込まれたマイボトルを洗い直すなどの作業の手間が省かれることが期待できます。また、自社のロゴが入ったカップが路上に捨てられていると気分もよくありませんし、回収廃棄にもコストがかかります。そこも削減できます。

カップが無理に捨てられている光景をなくしたいという(画像提供:ブルドーザー)
カップが無理に捨てられている光景をなくしたいという(画像提供:ブルドーザー)

――利用者からはどんな反応が寄せられている?

パートナー店舗によると、コーヒーのサブスクリプションサービスの利用者で「毎日利用する紙コップがもったいない」と切り替えている方がいるそうです。紙コップよりも作りがしっかりしていて、素材感も良いという反応をいただいています。

また、SNSに投稿しているサークルカップの情報を見て「是非体験してみたい」と利用された方もいます。その方からは、「シンプルなシステムで初めてでも使いやすい。(これから)パートナー店舗が増えて、利便性が上がってほしい」と言っていただけました。

「もったいない」と切り替える人もいる(画像はイメージ)
「もったいない」と切り替える人もいる(画像はイメージ)

――ビジネスモデルとして、持続可能性はあるの?

サークルカップのパートナー店舗からは月に2200円(税込)の契約料をいただいていますので、ビジネスとしても成り立ちます。※2021年9月時点では試験期間のため無料


――サークルカップを通じて伝えたいことは?

私たちが目指しているのは「使い捨てが当たり前でない世の中」です。サークルカップが、使い捨てカップとマイタンブラーの間にある“第3のカップ”になれればと。使い捨てカップがマイカップ・タンブラーに移行すれば、サークルカップはお役御免になるでしょうがそれでもいいと思います。使い捨てをなくすためのステップになれればと考えています。

マイカップ・タンブラーに移行するステップになればという(画像はイメージ)
マイカップ・タンブラーに移行するステップになればという(画像はイメージ)

我々も気軽に試すことができる環境のことを考えた取り組みと言えるだろう。普及すれば客や飲食店にメリットもあり、ごみも減っていく。サークルカップはそんな変化を目指していた。

コロナ禍ではテイクアウト需要も高まっているが、このような取り組みが増えれば、「捨てることが当たり前」から「捨てないことが当たり前」に人々の意識が変わっていくかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。