大阪の阪急うめだ本店など、大型商業施設でのクラスターが発生している。こうした中、国立感染症研究所が、百貨店やショッピングセンターなどの調査を行い、クラスターの発生原因に共通すると思われる代表的な所見をまとめた。

発生原因に共通すると思われる代表的な所見

・売り場における従業員の衛生意識は高く、マスク着用は概ね適切に行われていたが、手指衛生などさらに改善すべき点があった。

・時間帯によって、客が密集した状態になる売り場があった。

・従業員が利用する食堂や休憩所等で密となりがちな環境があった。

・店舗による接触者の把握や管理が十分ではなかったと考えられた状況があった。

その上で、従業員や売り場環境の消毒の徹底に加え、こんな対策などを呼び掛けている。

・客が密となる場所においては人の流れや(時間当たりの)入場者数の調整をする。その際、売り場では、例えば混雑時・非混雑時のCO2濃度を参考に換気を工夫する。

・従業員が利用する食堂や休憩所等において、密になる環境を作らない工夫と十分な換気、黙食を徹底する。

・複数店舗でCOVID-19の陽性者が判明した場合は、フロア全体など広めの検査実施を検討する。

・従業員の健康管理(観察と記録)を強化する。

以前から感染対策として呼び掛けられてきた基本ではあるが、やはり密になる状況を作らないことや換気などの徹底が重要なようだ。

では具体的に人数制限や換気はどうすればよいのか?また、利用者はどんなことを気を付けるべきか?

国立感染症研究所の研究員に詳しく話を聞いてみた。

店舗全体の閉鎖ではない感染予防が出来る可能性も

――具体的にどんな調査をした?

管轄保健所や当該施設と連携し、集められたデータをもとに陽性者の経時的な発生、集団としての特徴について分析をしたり、必要に応じて現場の視察や追加の調査を行います。基本は保健所の支援です。


――調査した百貨店はどこ?

自治体が公表していませんので詳細は明かせませんが、国内複数の大都市で発生した複数の大規模商業施設でのクラスターの調査支援に当たっています。


――この共通点からどんなことが見えた?

代表的な所見を幾つか掲載していますが、ここを改善する方法を考えて実践することで、市中の人流の抑制とはまた違う話ですが、店舗全体の閉鎖ではなくて、ポイントに立脚した効果的な感染予防が出来る可能性がある、と思いました。

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人流50%減も目安の1つに

――よく言われている“飲食”以外の状況で感染しているケースはあった?

今回の事例は従業員における感染例を見ているという特徴があります。従業員のなかで、飲食が感染のどの程度の割合で寄与しているかは中々難しく、明確に示すことが出来ません。食堂等での飲食の可能性のある方もあれば、恐らくは職場での感染の可能性もあるでしょう。中々、個々の関係まで突き詰めて調べることは難しいです。


――混雑時・非混雑時のCO2濃度を参考に換気を工夫するとはどういうこと?

一般的に1000ppmを目安とすることが用いられています。目安として、1000ppmを超えそうな時間帯・場所を計測・モニタリングして、そのような時間帯・場所への換気回数等の工夫を行うなどの対応が考えられます。


――入場者数はどう調整すればよい?

先の分科会の提言では人流50%減を打ち出していましたよね。入場者数と並行に考えて良いものか分かりませんが目安の一つにはなると思います。

CO2センサーの値などを測定し、実際に密集状態の発生に関する分析等を行って、(もちろん売り上げなども考慮すべき条件だと思いますが)適宜、コロナ禍での最適な入場者数を見出していくことになるのでは、と思います。
 

利用客の対策は“混み合う時間は避ける”

――百貨店等で働く人の対策で、特に重要なことは?

人から人へうつる病気が発生し、流行段階までに至ると、早い段階から感染者が出ることが多いのは不特定多数の人(客)に接する職種です。自分自身が感染を受けたり、また自分を媒介して家族や大切な人に感染が及んで辛い思いをすることがあります。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック下という特殊な状況でもありますので、ぜひ病気のこと、予防方法、について知っていただき、感染しないさせない対策をリードしていただきたいと思います。もちろん従業員から客(その逆の客から従業員)への感染を防ぐ点でも会社として重要なことと思います。


――百貨店等を利用する客は、どんな対策をすべき?

人混みはそれだけで感染が起こりやすい環境です。混雑の性質は店舗にもよると思いますが、混み合う時間帯(例:開店直後、15時頃、閉店より少し前)を避ける、購入するものを予め決めておいて短い滞在時間とする、マスクを外す場面(例:試食する、芳香を嗅ぐ、化粧をする)を極力少なく短くし、その間は喋らない、という工夫が必要です。

日頃から、適切にマスクを着用すること(不織布マスクにする、鼻から顎までしっかりと覆う、鼻の形に沿わせて隙間を作らない等)を徹底し、手すりやエレベーターのボタン等、の多くの人が触る部分を触る前後には適切な濃度のアルコールで手指を消毒する習慣づけは重要です。


これまでに百貨店だけでなく、学習塾、スポーツ施設、遊戯施設など様々な場所でクラスターが発生している。人混みを避ける、マスクを外す場面を極力少なくする、手指の消毒など今以上の徹底を心掛けることで、こうした施設を閉鎖しなくてもいい“withコロナ”の生活が送れるのかもしれない。
 

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プライムオンライン編集部
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