沖縄・宜野湾市の普天間基地。移設先となる名護市辺野古の海域には、マヨネーズ並みと言われる「軟弱地盤」の存在が明らかとなっているが、国は強硬な姿勢で工事を進めている。
国が提出した「設計変更申請」の判断が迫る中、県がどのように対応していくか。今、注目が高まっている。

沖縄県宜野湾市「普天間基地」
沖縄県宜野湾市「普天間基地」
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"軟弱地盤”で普天間基地の返還は2030年代へ…

名護市辺野古の埋立予定地
名護市辺野古の埋立予定地

河野防衛大臣(当時):
移設工事を着実に進め、普天間飛行場の一日も早い返還を実現し、その危険性を除去することに繋がる

2020年4月 河野防衛大臣(当時)
2020年4月 河野防衛大臣(当時)

2020年4月、沖縄防衛局が県に提出した普天間基地の移設工事の「設計変更申請書」。
移設先となる辺野古の大浦湾で、「マヨネーズ並み」と言われる軟弱地盤が見つかったことで、地盤を改良するためのものだ。

玉城沖縄県知事:
設計変更は、辺野古移設では普天間基地の1日も早い危険性の除去に繋がらない事が明確になったもの。
埋め立て工事を行うための手続きを、一方的に進めようとすることは、到底納得できるものではありません

2020年4月 玉城沖縄県知事
2020年4月 玉城沖縄県知事

軟弱地盤が見つかったことで、設計変更申請書では工期が当初の8年から12年まで延長され、移設を条件とする普天間基地の返還は2030年代となる。
審査の処理期間が迫るなか、玉城知事は2021年8月にも設計変更に対する判断を下すと見られる。

専門家からは移設計画を疑問視する声が・・・

焦点となっている軟弱地盤。この存在がある中、そもそも移設は実現するのか。計画を「疑問視」する声が上がっている。
土木工学を専門とする日本大学の鎌尾彰司准教授は、「護岸の崩壊もありえる」と指摘する。

日本大学 鎌尾彰司准教授
護岸を乗せるとかなり大きな構造物、重い物が乗っかりますので、軟弱な地盤は「滑り破壊」を起こしてしまう。れは改良できない部分を含めて、軟弱地盤の強度が足りない

2021年8月 日本大学 鎌尾彰司准教授
2021年8月 日本大学 鎌尾彰司准教授

大浦湾側の軟弱地盤は広範囲に広がっていて、この内、滑走路の先端に位置するB27と呼ばれる地点は海面から90mの深さまで達している。

日本大学 鎌尾彰司准教授:
数億円かけて改良してやっと改良工事は70mということですので、その先の約20mが地盤改良できないので軟弱地盤が残ってしまう

鎌尾准教授によると、国内で地盤の改良工事で実績があるのは深さは70mまで。
軟弱地盤が90mに達している場合、滑走路の沈下は恒常的に発生し、さらに護岸の「滑り破壊」によって、埋め立てた土砂が一気に海に流れ出る恐れもあると指摘する。

さらに疑問を抱かざるをえない点」がある。
国が海面から90mまで達するB27地点について、直接、地盤の強さを調査していないことだ。国は、周辺の別の地点から採取したサンプルを調査して「固い」と評価していて、「再調査や改良工事は必要ない」と説明している。

日本大学 鎌尾彰司准教授:
実際に工事が終わって時間が経過しないと、どのくらいのスピードで沈下が進行してくのか現時点は誰も予測できない。
技術者として、地盤調査計画みたいなものを信用できないと疑わざるを得ない

日本大学 鎌尾准教授
日本大学 鎌尾准教授

B27地点については、県も沖縄防衛局に対し、再三に渡って調査の必要性を質している。

日本大学 鎌尾彰司准教授:
長期間に渡る沈下が非常に問題になると思います。滑走路も平坦でなくなってしまって、その都度、数年に一度くらい補修の工事をしないといけない

「仮に完成したとしても、継続的な補修が必要になる」と鎌尾准教授は指摘し、基地機能に対しても疑問視している。

沖縄県の権限を無効にするのは辺野古移設問題では国の常套手段

審査の処理期間が迫る中、玉城知事は今月にも設計変更申請を不承認にする構えだが、「国がすぐに対抗措置に出るのは明白だ」と別の有識者は指摘する。

成蹊大学 武田真一郎教授:
防衛局は行政不服審査法を使って、身内の判断で有利な解決をしようとして、国土交通大臣に審査請求と執行停止の申し立てをする可能性があると思います

2021年 8月 成蹊大学 武田真一郎教授
2021年 8月 成蹊大学 武田真一郎教授

防衛省は2021年8月2日、普天間基地の移設工事に伴うサンゴの移植について、県の取り消し処分の執行停止を農林水産大臣へ申し立てた。

2021年8月2日 岸防衛大臣
2021年8月2日 岸防衛大臣

農林水産大臣は、わずか3日後の2021年8月5日に効力を停止し、サンゴの移植が再開された。このように、国が身内である国に申し立てて県の権限を無効にするのは、辺野古移設問題おいてはもはや常套手段となっていて、武田教授は「執行停止の申し立ての相手が変わるだけ」と国の手法を批判する。

一方で、武田教授は法廷闘争に発展した場合、県の主張が認められる可能性が高いと見ている。

成蹊大学 武田真一郎教授:
設計変更不承認処分は玉城知事の裁量権の行使であり、仲井眞元知事の埋め立て承認とは直接の関係がありません

埋め立て承認を巡っては2020年3月、最高裁が仲井眞元知事の判断に違法性や裁量権の濫用が無いにも関わらず、県が承認を撤回したのは違法だとする判決を言い渡し、県が敗訴した。

一方、「設計変更申請」に対する県の判断は「埋め立て承認」とは切り離されていると武田教授は指摘する。

成蹊大学 武田真一郎教授:
設計変更申請が、環境保全および災害の防止に十分配慮されていると考えられていませんので、裁判所が玉城知事の不承認処分に裁量権の逸脱・濫用がある違法とは言えないと私は思います

移設計画やその手法に、専門家から疑問が上がりながらも工事を強硬に進める政府。
「設計変更承認申請」への判断が迫る今、県の対応に注目が高まっている。

(沖縄テレビ)

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