来日する選手や関係者と一般の人との接触を最小限にし、定期検査で感染拡大を抑制する、いわゆる「バブル方式」が東京五輪で導入された。これについて政府は「専門家による大会前の試算より感染拡大や病床の利用者を大幅に抑制できた」とする調査結果をまとめたことがFNNの取材でわかった。
政府は東京五輪開催前に、選手や大会関係者などの入国者からどれくらいの感染者や入院者が出るかについて、専門家らに複数のシミュレーションを行ってもらい、大会閉会後に検証を行った。
検証結果資料によれば、8月10日時点での東京五輪で入国した選手や大会関係者の数は4万3190人で、うち感染者は163人だった。
この記事の画像(3枚)想定を下回る結果の感染者数も
水際での入国者に占める感染者数と陽性率について、専門家の試算と比較した実績以下の通りだった。
入国者に占める感染者数(陽性率)
▲試算 42.8人~586.8人(0.05%~0.63%)
▲実績 163人(0.38%)
▲検証 「感染者数は、想定の範囲内」
空港検査での陽性者数(陽性率)
▲試算 39.3人~420.0人(0.04%~0.45%)
▲実績 37人(0.09%)
▲検証 「想定より空港検査の陽性が少ない」
入国後の検査での陽性者数(陽性率)
▲試算 12.9人~176.1人(0.01%~0.19%)
▲実績 68人(0.15%)
▲検証 「機内感染等の場合、空港検査では陰性で、その後の検査で陽性反応が出た可能性」
また、東京大会時の感染者数と陽性率について、専門家の試算と比較した実績以下の通り。
入国後の検査での陽性者数(陽性率)
▲試算 154人(0.2%)
▲実績 68人(0.15%)
▲検証 「感染者数は、想定の範囲内」
アスリートの入院
▲試算 ピーク時で1人程度(累計3人)
▲実績 0人
▲検証 「高いワクチン接種率、頻回検査、行動管理等により、感染・重症化を防止」
大会関係者の入院
▲試算 ピーク時で10人程度(累計23人)
▲実績 ピーク時で2人(累計4人)
▲検証 「高いワクチン接種率、頻回検査、行動管理等により、感染・重症化を防止」
このように調査結果では水際や五輪開催時の感染者について「想定の範囲内」または「想定より少ない」と分析している。
加えて「入国者から市中への感染拡大は確認されていない」と評価している。
パラリンピック開幕へ 政府はさらなる対策を
“バブル崩壊”との批判もある中、なぜ一定の効果に結びついたのか。政府関係者は「日本の検査精度の高さと毎日検査や関係者の行動管理を実施できたオペレーション能力にある」と強調する。
一方で、五輪では選手村から外出し、観光や買い物をする姿も目撃されバブルのほころびも指摘されたほか、“バブル内”の選手村の中で選手などが飲酒し騒ぐなど感染拡大につながる行動も確認されている。また政府分科会の尾見会長も東京五輪について「今の急激な感染拡大に直接関係しているとは思わない」と述べる一方で、「五輪をやるということが人々の意識に与えた影響があるのではないかというのが専門家の考えだ」と指摘している。
8月24日に開幕する東京パラリンピックでも同様の「バブル方式」が導入される。
パラリンピックではさらなる感染対策の徹底を行うとともに、足元で広がる感染拡大を抑えるためにも国民の理解を得る努力が政府に求められている。
(フジテレビ政治部 千田淳一)