生活には欠かすことのできない水道だが、2021年に入り首都圏の一部自治体では、水道料金の値上げが相次いでいる。
水と安全はタダと言われたのは遠い昔のこと。今後値上げの波は拡大しそうだが、さて東京はどうなるのか?社会部都庁担当・山﨑康平記者に聞いた。

2043年には全国平均で43%値上がりの試算

社会部都庁担当・山﨑康平記者:
現在、各地で水道料金の値上げが相次いでいますが、東京の料金事情はちょっと違います。
まず各地の値上げを見てみると、例えば2021年1月には埼玉県川口市で平均25%値上げ。
7月には横浜市で平均12%値上がりしました。

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さらに民間の研究グループによると、2018年と比較して2043年には平均的な3人家族の水道料金が、全国平均で43%増加するということです。
あくまで試算なのですが、20年あまりで水道料金が1.4倍に達するということになります。
ちなみに、最も高くなるのは北海道夕張市で、2043年には1カ月で2万8956円ということです。

加藤綾子キャスター:
住田さん、1カ月で3万円弱だそうですよ?

住田裕子弁護士:
これは、貧しくても豊かでもみんなが使わなきゃいけないわけではないですか、そういう意味では住めない方が増えるというのはわかりますね。

社会部都庁担当・山﨑康平記者:
すごい金額だと思います。では、なぜ水道料金の値上がりが相次いでいるのかというと、要因が2つあります。

1つ目は、人口減少による料金収入の減少。そして2つ目が、老朽化した設備の更新によるコストの増加。非常に単純な要因なんです。

人口が減れば、自治体側にとっては水道料金の収入が減ります。それにも関わらず、水道管などの設備はどんどん老朽化していて、破損などすることがあるため、その分更新や交換のコストもかさんできます。そのコストが、当然水道料金にのってくることになるのです。

東京都は“企業債”で値上がりしない

社会部都庁担当・山﨑康平記者:
ここからが本題。では、東京都の水道料金はどうなのか?
都の担当者は「今のところ値上げの予定はありません」という回答でした。
本当にそうなのかなと思いますが、それには2つの理由があるということでした。

1つ目は、東京都が水道事業を一括管理しているということです。
実は、他の自治体では市町村単位で水道事業を担っているのに対して、東京都では都が一括で水道事業を担当しているので、その分効率的に運用ができているということです。

2つ目は、人口が多いということです。
東京都は、人口1400万人もいるので水道の利用者が多くて料金を安く維持できるということです。

では、将来的にどうなのか。都の担当者は「少なくとも向こう40年は上がらない見通し」ということを言っていました。

これも本当に?と思いますが、「東京水道長期戦略構想を2020」によると、東京都の人口のピークは2025年でそれ以降は減少し、それに伴い料金収入も減っていく。
また、水道設備の老朽化についても、今後一斉に設備の更新が必要になってくるなどの見通しが示されています。

つまり、人口減で水道収入は減り、老朽化もコストも急増するということです。

加藤綾子キャスター:
どうして向こう40年は上がらないと言えるんですか?

社会部都庁担当・山﨑康平記者:
実は、東京都ではそれを“企業債”つまり借金で穴埋めしていくという計画です。
借金というとちょっと不安になる部分があると思いますが、東京都の2018年度末の水道収益のうち、約8%が企業債、借金でした。
過去を振り返ると、1968年度末では最大67%企業債でした。

その後、コツコツと借金の返済をしてきたので、今後はまだ企業債を使える余裕があるため水道料金の向こう40年は上がらない見通しということです。
ただ、新型コロナウイルスや社会情勢の変化などがあれば、この見通しも変わってくる恐れがあります。

東京都の水道事業について、水道事業を研究する近畿大学・浦上拓也教授は「企業債の活用はその支払いを将来世代が担うことになるので、世代間負担の公平性が保たれるようにしっかりとした議論が必要」としていて、その上で「全国的に低料金に対する社会的要請が強すぎて、必要以上に水道料金が低く設定されている」という現状もあり、それを是正するためには「場合によっては値上げも必要」とのことでした。

将来世代のために借金は減らすべき

加藤綾子キャスター:
これは、将来にすべて負担を押しつけないで済むためには、今からできることってないですかね?

住田裕子弁護士:
社会福祉にしても何でも、結局借金を将来に先送りしている、ツケ回しをしています。
しかも、私たちの世代は将来世代の数が少ないから、できることは今のうちに借金を減らしていくことですよね。
人口減が見えているのであれば、今からでも将来の負担減のために私たちが負担するという覚悟を持つ必要があると思います。

加藤綾子キャスター:
今よければいいということではなくて、先を見通した、今から何ができるかという議論をしてほしいなと思いますね。

住田裕子弁護士:
東京だけではなくて、全国で設備の更新の必要という同じ問題があるわけです。だから、不公平をなくすためには、税金も入れてきちんとした形である程度裕福な人が支払う、公共料金も含めて所得の低いところに負担が行かないようにしてほしいと思います。

(「イット!」8月11日放送より)