「着物で着るには抵抗あるけど洋服なら問題ない」

環境や経済、貧困や差別など、世界が抱える様々な問題を解決しようという取り組み、SDGs。その目標の1つが「つくる責任、つかう責任」。

自宅のタンスに眠っている着物は、全国に8億点あるといわれている。捨てられないけれど、着る機会もない、そんな母親や祖母の着物を普段使いできる洋服に…。

世界的ブランドの元パタンナーだった38歳の女性は、大切な着物を未来へとつないでいる。

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名古屋で開かれた試着会。会場に並ぶのは「カシュクールワンピース」(2万4200円~、生地代別)や「ドレープトップス・スカート」(3万5750円~、生地代別)など約20点。

使わなくなった着物を仕立て直した、一点モノだ。

女性客A:
着物だってわからない…素敵だと思います

女性客B:
テンション上がります。綺麗だし、自分だけの感じがしていいなって思いました

女性客C:
この柄を着物で着るとなると抵抗がありますけど、洋服だったら全然問題ない

きっかけは実家に眠っている大量の着物…着る機会のない着物を洋服に

鎌田由花子さん(38)は2020年、着物をリメイクするブランド「Kigisu(キギス)」を立ち上げた。

鎌田由花子さん:
親の着物とかおばあちゃんの着物とか、捨てられないけど着る機会もないって方が、たくさんいらっしゃるので

元々、パタンナーの仕事をしていた鎌田さんは、その人にあった仕立てをしている。

愛知県東海市出身の鎌田さん。母親は着付けの先生で、祖母は日本舞踊の先生だった。大学卒業後、東京の文化服装学院でファッションを学び、世界的ブランド「ヨウジヤマモト」のパタンナーになった。

鎌田由花子さん:
(ヨウジヤマモト時代から)ずっとメイドインジャパンでやってきたので、布の扱い方だとかそういったことは参考になっているかと

2014年、出産のため実家に戻った鎌田さんは、タンスの中にたくさん着物が眠っているのを見つけ、洋服に作り直そうと思いついた。

生きるパタンナーの経験…柄や袖位置などを計算しながら裁断

着物は、一着作るのに一反の布を使う。一反の基準は幅36センチ、長さ12メートルだ。

布の幅はそのままに、四角く切ったものを縫い合わせているため、サイズの変更など仕立て直しが簡単にできる。そもそも着物は、3世代が着続けられるサステナブルな構造になっている。

鎌田由花子さん:
大きい柄だと、位置でだいぶ印象が変わるので、出来上がったときにどうなるかを想像しながら作っています

布の幅が36センチと狭いため、柄や袖の位置などを計算しながら裁断する。パタンナーは、デザイン画を型紙を使って形にする仕事。着物のリメイクにかつての経験が生かされる。

鎌田由花子さん:
着物リメイクは古くさいイメージがあるみたいで、それを無くしていきたいなと思って始めた

上質なシルクならではの美しいドレープ…。袖にはかわいらしいフリルをつけ、裾は動きやすいようにスリットを入れた。

昔のデザインの方が斬新…着物は30~40年着られる「スーパースローファッション」

名古屋市千種区の着物のリサイクルショップ「蘭丸」。店内には5000種類の反物が並んでいる。鎌田さんは、約60年前の着物「銘仙(めいせん)」を着て店を訪れた。

「蘭丸」​ 森田志津さん:
うちの銘仙を着て来てくださったの?すごく素敵

銘仙とは、太い絹糸を使った着物。安くて丈夫なことから、昭和の初めに女性の普段着として大流行した。

「蘭丸」​ 森田志津さん:
これも銘仙です。戦後はヨーロッパからデザイナーを呼んでいたらしいので、昔の方が斬新ですよ

着物は30年、40年と長く着ることができる「スーパースローファッション」だと森田さんは言う。

鎌田由花子さん:
着物で言ったら普段着だとしても、洋服にしたらすごく良い生地なんですね。ハマっちゃいますよね

増える男性からの注文 タンスに眠っている大切な着物を特別な一枚に

鎌田さんは、汚れがついたり金糸がとれたりして、貸衣装店で使われなくなった着物のリメイクも始めた。

鎌田由花子さん:
金糸が…。結婚式では使えない。本当にもったいなくて、どうにか救いたいという思いで…

最近では男性からの注文も多く、今後は着物をリメイクしたシャツも作る予定だ。

鎌田さんは、着物は洋服では考えられないような織り方や手作業など手が込んでいて、とても奥が深いと感じている。

鎌田由花子さん:
親の着物を着るのを諦めていたという方が多くて…。洋服になることでまた身に付けられるって言っていただけるのが嬉しいです

タンスに眠っている大切な着物。未来へつなぐ、特別な一枚に生まれ変わる。

(東海テレビ)