7月特集は「現代の貧困」。新型コロナウイルスで多くの業界が経済的な打撃を受けたが、その影響は若年層のアルバイトにも及んでいる。

就職情報大手の「マイナビ」は2021年1月29日~2月1日に、コロナ禍によるアルバイトのシフト動向を把握するため、シフトが減少した1024人(※)にアンケート調査を行った。
※全国の3300人を対象としたスクリーニング調査で該当した者。

感染拡大前と比較したシフトの減少度合い(提供:株式会社マイナビ)
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この1024人に感染拡大前と比較して、シフトがどの程度減少したのかを聞いたところ、全体の31.3%が5割以上減少していた。さらに感染拡大前と比べた収入の減少割合を聞いたところ、全体の26.9%が5割以上減少。年代別だと、10代(31.2%)20代(32.5%)の若年層がより減少していた。

感染拡大前と比較した収入の減少度合い(提供:株式会社マイナビ)

外出自粛や時短営業などつらい状況が続いているのは分かるが、若年層のアルバイトがしわ寄せを受けている状況だ。

そこにはどんな課題があるのだろう。学生アルバイトの労働問題に取り組む、労働組合「ブラックバイトユニオン」共同代表の荻田航太郎さんに実態を聞いた。

学生は学費や生活費のために働いている

ーーコロナ禍は学生アルバイトにどう影響した?

近年の学生は生活費を自分で稼いでいて、遊ぶお金ではなく、学費や一人暮らしのために働いている方が多いです。貧困家庭の学生はアルバイト収入が家計の重要な収入源なこともあります。こうした点から、生活に与える影響が大きいと感じています。

学費や生活費のために働く学生が多い(画像はイメージ)

ーーコロナ禍で相談状況に変化はあった?

ブラックバイトユニオンへの相談件数だと、2020年4月に最初の緊急事態宣言が発令されたころがピークで、月に100件は超えていました。今の相談件数は以前よりは緩やかになっています。

要因としては、あの当時は学生だけではなく、誰もがどう対応していいかわからなかったこと。国の支援策や大学独自の支援策が出てきたこと。ある一定、企業側に休業手当などを払わなければいけないという認識が浸透したことが考えられます。しかし、現在も企業から休業手当が払われなかったり、一方的にシフトが削られたりして「生活費や学費が足りなくなる」といった学生からの相談があります。

※休業手当=労働基準法第26条の規定。会社都合で休業する場合、休業期間中、労働者に平均賃金の60%以上を支払わなければならない。


ーー学生からの相談内容を教えて。

例えば、東京都で事務アルバイトの男子学生は月10万円ほどの収入で、実家を支えつつ奨学金とバイト代で学費を賄っていました。それがコロナ禍で「仕事がなくなった」と企業に一方的に告げられ、休業手当もありませんでした。この方は相談がきっかけで労働組合に入り、企業側と交渉を行い、補償を勝ち取りました。

また、神奈川県で塾講師アルバイトの男子学生は、月5万円ほどの収入がありましたが、コロナ禍で塾が一時閉鎖し、塾側は休業による補償を行いませんでした。また、ここは感染症対策にも問題があり、個別指導塾で自宅からオンライン指導ができる環境にあり、生徒にはオンラインでの参加を許可していたにも関わらず、アルバイトには塾に来て授業を行うようにともしていました。こちらも交渉で、補償や感染予防対策の要求を通すことができました。

感染症対策の不備も交渉で改善できた(画像はイメージ)

愛知に転勤できなければ自主退職

ーー飲食業界で働く学生からの相談はある?

あります。ある女子学生は、本店が愛知県にあるコーヒー店の東京支店で働いていました。月10万円ほどの収入があり、学費にあてていたそうです。緊急事態宣言の影響で東京支店を閉めることになったのですが、企業側からは愛知県に転勤できなければ、自主退職するようにとの連絡がきました。働きたかったら、愛知県まで来いということですね。

ここがみそで、労働者を自主的にやめさせると、企業側は裁判闘争や労使紛争などから逃れられるわけです。多くの企業で行われている手口でもあります。彼女の場合も交渉で「解雇予告手当」(労働者を解雇させるための予告金)など、労働者をやめさせるための正当な手続きなどを勝ち取りました。

自主退職を強制させる企業もある(画像はイメージ)

ーー学生からの相談が目立つ業界はある?

学生で目立つのは、居酒屋やファミレスなどの飲食系の店員、コンビニやスーパーマーケットの店員ですね。このほか、個別指導塾の塾で働く学生の相談も多かったです。ブラックバイトユニオンの上部組織である「総合サポートユニオン」では労働者一般の相談を受け付けているのですが、そちらだと飲食系やフィットネスクラブで働く人からの相談が多かったようです。

「バイトだから」「将来の就職があるから」で声を上げられない

ーー学生アルバイトはなぜ、被害を言い出せない?

実際の相談内容だと、正社員から「君たちはアルバイトだから払わない、補償がない」などと言われることが多いそうです。そのような言葉には騙されず、違法と思ったら労働組合やNPO法人、専門家に相談してみてほしいですね。

就職面への影響を気にするのもあると思います。不当な目にあっても、親が声を上げることを止めることもあります。確かに企業が名前を検索して労働組合で戦ったことが分かれば、積極的な採用はしないかもしれません。「声を上げたら解雇されるんじゃないか」で黙らされているところもあります。

ただ、「黙る」ことは労働者の権利や労働環境が悪くなることにつながります。今の日本は長時間労働や過労死も問題になっています。そうしたところを少しでも改善するには、一人一人が声を上げることが大事だと思います。実際に、先ほど紹介した神奈川県の塾講師アルバイトの男子学生は、「自分のためだけでなく、他の貧困学生のために、社会にのために」という理由で企業と闘うこと決断し、彼ひとりの休業手当だけではなく、その企業で働く塾講師アルバイト「全員」の休業手当を勝ち取りました。

就職方面への影響も言い出せない要因(画像はイメージ)

ーー学生アルバイトに注意してほしいことはある?

まずは企業側から紙を渡された場合、その場で絶対にサインはしないことですね。アルバイトの契約は紙を渡されないことも多いですが、労働条件通知書や雇用契約書を取り交わすことがあります。「サインをして」と言われたら一度持ち帰り、内容を調べてほしいです。

そして「コロナ禍だから仕方がない」とは思わないでほしいですね。コロナ禍でも学生の生活は守られるべきですし、シフトが減って生活が困窮しているのなら、補償などは支払われるべきです。今は国の雇用調整助成金もあるので、活用しないのは企業側の怠慢です。

サインを求められたら内容の確認を(画像はイメージ)

ーー学生アルバイトに伝えたいことはある?

アルバイトでも労働者であるという認識を持ってほしいですね。労働法では労働者として同じように扱われますし、補償もされないといけないので、泣き寝入りをしないでほしい。黙ることは受け入れることになるので、おかしいと感じたら声を上げてほしいですね。声を上げることで自分自身が苦しい状況から、脱することにもつながると思います。

また、学生時代に労働者の権利を求めて闘った経験は、必ずその後の人生にとって役に立つと思います。なぜなら、大学を卒業した後も、多くの人は労働者として働き、長時間労働や未払い賃金、パワハラなどさまざまな労働問題に直面するからです。


アルバイトの立場が弱いと考えていること、将来就職を控えていることから、学生は不当な目に遭っても声を上げにくいのかもしれない。労働者の権利や働き方で気になるところがあれば、労働組合などに相談する選択肢があることも忘れないでほしい。

ブラックバイトユニオン
電話番号:03-6804-7245
メールアドレス:info@blackarbeit-union.com

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・生活がギリギリで、子供に食事を与えるために、自分は1日1食の生活をしている。貯金もできず不安がつきない。
・学校に行っている時間以外は、家族の介護やケアに追われてしまっている。自由な時間がないが、他に世話できる人もいないので仕方ないのだろうか。
・50代の息子を年金で養っている。今も生活は厳しいが、息子の行く末がもっと心配だ。
・コロナ禍でバイトがなくなり、大学を中退せざるを得なかった。

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