7月に入り、自治体では新型コロナウイルスワクチンが不足。接種予約の一時停止が相次ぎ、菅首相が陳謝する事態に…

その一方で政府は「在庫ワクチンは4000万回分ある」ともした。あるはずのワクチンは一体どこにいったのだろうか?

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FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回取り上げるのは、政治部の阿部桃子記者が伝える「在庫ワクチン 4000万回分はどこに?」

あるはずのワクチンがない?菅首相は…

政治部 阿部桃子記者:
今日は4000万回分のワクチンはいったいどこにあるのかという謎についてお伝えします。改めて構造を整理しますと、これまで自治体は政府の「ワクチンは確保してあるからどんどん打ってほしい」という要請に従って体制を整え、接種を加速してきました。しかし現在、一部の自治体ではワクチンが不足し、接種の一時停止に追い込まれているのが現状です。ではなぜワクチンが足りないのか?菅首相は先週(8日)の会見で次のように述べました

菅義偉首相会見:
4000万回分使用されずに在庫となっていると見込まれます。約4000万回分については自治体にあるというふうに思っています

政治部 阿部桃子記者:
菅首相はこのように、在庫4000万回分は自治体にあると発言したのです。しかし、自治体からは「在庫はなくワクチンは不足している」などといった反発が出ています

加藤綾子キャスター:
4000万回分という数字なのに、自治体との食い違いが出るのが不思議だなと思ったんですよね

4000万回は「在庫」でなく「未接種分」

政治部 阿部桃子記者:
びっくりしますよね。4000万回分というこの数字の根拠は何なのか?先週金曜日(9日)の閣議前の映像を見ると、河野大臣が菅首相に紙を示して説明しています。この紙が4000万回分という数字の根拠を示したデータなのです

政治部 阿部桃子記者:
この紙の内容がこちら。オレンジの線は政府の自治体への供給量のペースを示していて、7月7日までで合計9000万回分ですが、今月に入ってガクンと供給量が下がっています。ぐんぐん伸びる青の線摂取回数を表していて、先週時点で5000万回でした

政治部 阿部桃子記者:
オレンジ(9000万回)から青(5000万回)を引いた赤い部分。これが供給したもののまだ打たれていない4000万回分のワクチンというわけです。これについて当初、菅首相は「在庫」と表現したんですけれども、河野大臣はその後在庫ではなく「未接種分」だと表現を修正したんです

加藤綾子キャスター:
「在庫」と「未接種分」はどういう違いがあるんですか?

政治部 阿部桃子記者:
私も会見で河野大臣に聞いたところ、在庫というと倉庫に積み上がっているようなイメージを持ちますけどもそうではなくて、4000万回分は配布済みで、接種の予約がされて誰に打つか決まっている「予約済みのワクチン」が相当あるということなのです

加藤綾子キャスター:
1回目を受けて2回目の人の予約分とかそういうことですか?

政治部 阿部桃子記者:
はい。これを含めて未接種のワクチンと言っているんですよね。その未接種のワクチン(接種予約済みの分)が2000万回から2500万回分あると見られていて、それを引くと、行方不明の4000万回分は1500万回分に減ってしまいます

加藤綾子キャスター:
在庫と言ってた4000万回分は、予約済み分を引くと実際は1500万回分になるということですね?

実際の在庫はもっと少ない?政府は実態把握できず

政治部 阿部桃子記者:
さらに政府関係者によりますと、接種されたものの記録されていないものが500万回分くらいあると言われていて、これらを差し引くと純粋な在庫というのは約1000万回分程度だと見られているんです。問題はこの1000万回分なんですが、政府もどこにあるのか正確に把握できていません。そして一部の自治体が必要以上にため込んでいると見ています

政治部 阿部桃子記者:
そこでそうした自治体には供給を減らし、不足が深刻な自治体に回すように調整に入りました。ただ、4000万回分の在庫と表現したことで、野党などからは「自治体に責任転嫁をしようとしているですとか「はしご外しだ」などといった批判が出ているのです。河野大臣はこの混乱について昨日(14日)国会で「自治体にもう少し具体的な供給計画を早めに示す必要があった。それができなかったことは誠に申し訳ない」と陳謝するなど苦しい立場なんです

政府の指示が上意下達になっていないか

加藤綾子キャスター:
柳澤さん。混乱を招いたのは在庫って言ってしまった…その表現もあると思うのですけれども、どれぐらいワクチンが足りていないか?現場は実際どうなのか?という所をしっかりと情報をキャッチすることが大事ですよね?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
政府は自治体に向けていろいろなことを指示、要請すると思うのですけど、それが一方的な上意下達になっているような気がするんですよ。現場の動き方を十分に吸い上げることはなく一方的に言っているということが、政府と自治体あるいは我々国民との間に信頼というものが欠如するきっかけとなる。信頼がないとこういうことはうまくいきませんからね

加藤綾子キャスター:
スピード感を持ってということを、私たちも伝えていたので、その分なかなか完璧なというところまではいかなかったかもしれないですね?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
早くやることはのはいいんですけど、早くやることで現場はどうなるのか。例えば、登録システムのVRS(ワクチン接種記録システム)についても煩雑さがありますから。そういう部分もやっぱりこういった問題の背景の1つになっていると思うんですよね

政治部 阿部桃子記者:
政府は今週末までに1300万回分を配送するとして、不足の解消に努めていますが、根本的な解消につながるかは不透明で、丁寧な説明が求められそうです

(「イット!」7月15日放送より)

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