FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回取り上げるのは、FNNソウル支局・川崎健太記者が伝える「高騰する韓国のマンション価格」。

首都ソウルのマンションの6月の平均価格は約1億1000万円。この4年で約2倍に跳ね上がった。
今やソウルは「世界で最もマイホームが遠い街」と言われている。そこにあるのは韓国ならではの事情である。

韓国マンションが1年間で2000万円上昇

FNNソウル支局・川崎健太記者:
マンション価格が高騰している韓国で、今最も高い物件を調べてみました。
なんと、16億円なんです。本当に桁違いですよね。

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場所は、首都ソウルの高級住宅街・江南区にあるタワーマンションです。大ヒット曲「カンナムスタイル」で有名な江南区です。
広さは、407平米、123坪とかなり広いですが、それにしてもちょっと高いですね。

文在寅政権が発足して以降、ソウルのマンション価格は上がり続けているんです。
4年前の政権発足時は約6000万円でしたが、6月には1億1000万円を超えました。4年間で約2倍になったわけです。

特に、1年間での上がり方が尋常じゃないんです。1年間で2000万円上がっているんです。
このスピード感は付いていけないですよね。

わかりやすいデータで「マンション価格が年収の何倍?」という話があります。
同じく価格が高騰している東京のマンションは、日本の平均年収の12倍だそうです。これでも相当高いですよね。一方、ソウルのマンション価格は、韓国の平均年収の18倍だそうです。
こうなると一般家庭ではもう手が出ない、というような状況です。

この「対年収比」という指標で見ていくと、アメリカ・イギリス・フランスという主要先進国と比べても、韓国の上がり方は圧倒的に高くなっています。
ソウルは、今や「世界で最もマイホームの購入が難しい都市」と言えるかもしれないです。

住んでいる場所がステータス

加藤綾子キャスター:
驚いてしまいましたが、なぜここまでマンション価格が高騰したのでしょうか?

FNNソウル支局・川崎健太記者:
一気に不動産投資が進んだ、金利が低いなどという経済的な要因はかなり大きいです。ただ、それだけでは説明がつかないです。
ポイントは「韓国のステータス社会」です。

アカデミー賞を受賞した韓国映画「パラサイト」でも描かれた要素ですが、どういうことかと言うと、韓国では学歴、就職先や資産などでステータス=社会的地位が決まるとされていて、多くの人がこの地位を上げるために躍起になるそうです。

また、「住まい」についても社会的地位を決める大きな重要な要素です。
このため「地方に住む人はソウルを目指す」、「ソウルに住む人はさらに高級住宅街の江南を目指す」と言う形で階段を上がっていこうとするわけです。

この江南という場所ですが、東京都で例えると、六本木に渋谷を加え、さらに青山を合わせて、そこに文教地区を加えたようなスーパーセレブタウンです。
こうした動きが、韓国のマンション高騰の要因のひとつになっていると見られています。

ちなみに、最近ソウルでは会社とか学校で「あなたはどこに住んでいるの?」と聞くこと自体がハラスメントになることもあるそうです。
つまり、相手の社会的地位をすごくストレートに確認する質問になってしまう可能性があるそうです。

独特の教育事情が価格高騰に影響

FNNソウル支局・川崎健太記者:
では、なぜソウルそして江南に住むことが社会的地位の上昇につながるのかですが、背景が「韓国独特の教育事情」です。

これに関して興味深いデータがあります。
韓国最難関の国立ソウル大学に合格した一般高校出身者のうち、実に43%が高級住宅街の江南に住む生徒だったそうです。

韓国は、一部の例外を除いて基本的に高校受験がないです。大半の生徒が地元の学区内にある一般高校に進学します。なので、受験して進学校に行くことはできない。
だからみんなが進学実績が飛び抜けた江南に住みたがるというわけです。

この江南地区ですが、やはり教育環境が圧倒的に充実しています。まずは、有名塾が集中する“塾通り”という場所まであります。

さらに、韓国では入試コンサルティング会社が250社以上あり、面接対策などを請け負うそうです。
この入試コンサル会社の半分がソウルにあり、特に江南に集中しているというわけです。

つまり、ソウルそして江南に住むことが、高い偏差値の大学へ進むための一番の近道になっているというわけです。
ですから保護者の中には、「地の利」のために自分の年収に合わない超高級マンションも無理して購入する人もいるそうです。

こうした極端な教育熱は、マンション価格高騰を招いている要因のひとつになっているとされています。
この極端な上がり幅を受けて文在寅政権は、数々の不動産対策を打ち出してきましたが、目立った効果は出ていません。
韓国の「不動産受難」しばらく続くことになりそうです。

このままでは格差が広がるのでは

イット!のスタジオでは…

加藤綾子キャスター:
住田さん、住むところによって将来まで決まってしまうというところが気になりますけど、どうご覧になりましたか?

住田裕子弁護士:
実力相応だったらやむを得ない部分があると思うのですけど、以前の法務大臣だって自分のお子さんを裏口で入れたようなこともありましたし、不動産を手に入れること自体も高級官僚や政治家が財閥と結託して役得で手に入れている可能性もありますよね。

そうすると、そういう階層が分化してしまって、実力で上がれればいいですけど、上がれないような格差固定している。教育と所得が固定してくるのは、本当に韓国としては大変なことだろうと思います。

加藤綾子キャスター:
このままだと格差がより広がっていくのではないかと思いますよね

住田裕子弁護士:
国の力を落とすことになってしまうと思います。活力があることが大事です。

(「イット!」7月14日放送より)