西日本豪雨から3年、愛媛・西予市野村町では甚大な浸水被害が発生。多くの人が住まいとそれまでの暮らしを失った。
あれから3年。野村にいる人たちの「住まい」の今を取材した。
店舗兼住宅を再建…防災意識に温度差も
3年前のあの日、濁流に襲われた西予市野村町。
野村ダムの緊急放流で肱川が氾濫し、5人が亡くなった。甚大な浸水被害で住まいを失った人も多くいる。
豪雨当時の岡澤志朗さん:
玄関は鍵を開けても通れない状態で、(入り口の扉を指して)ここがたまたま割れとったんで
町の中心部にある商店街で、理容店を営む岡澤志朗さん(60)。
岡澤さんは2020年、新しい店舗兼自宅を豪雨前にあった場所の近く、以前よりも少し高い場所に再建した。
入口も、1メートルほどかさ上げした。
岡澤志朗さん:
3年経ってそうやな、一部の人はかなり防災意識は高いと思うんやけども。やっぱ被害をうけとる所とうけてない所いうんが差があるし、いろいろもう済んだことよくらいに思とる人もなかには居るし。とりあえず山瀬川の恐怖からは逃れたかなと
岡澤志朗さん:
まだダムの方の関係が、河川整備のほうがまだ追いついてないんで。そっちの分はまだなんやけども。なかなか豪雨のことばっかりも言うちゃおれん。
やっぱり今、実際問題、目の前の問題、野村のご覧のとおりの少子高齢化でいろんなもんが全部縮小になっていく中で、やっぱ、それなりに課題みたいなのを抱えとるんで、その分をなんとかせんといかんかないう感じ
住宅浸水で4人犠牲に…6世帯のみが暮らす地区も
3年が経って、更地だけではなく新しい家が建つ…。そんな光景も目に入るようになってきた。
肱川沿いの三島地区。
正本健太キャスター:
当時はこの家でいうと、どのくらいまで水が浸かったんですか?
大塚憲さん:
あの色違いで塗っとるやろ、あそこまで
大塚憲さん(74)の家は、2階の高さ4メートルまで水に浸かったが、自らが修復、再び住むことができた。
正本健太キャスター:
もうここの両脇は完全に更地になってますね
大塚憲さん:
そこの倉庫のこっちだけ、ここの倉庫の人がゆくゆくは建てたいとは言いよんなはる。もともとここにあったけんな、木造で住宅が
三島地区はほとんどの住宅が浸水し4人が犠牲に。
今、暮らしているのは6世帯だけ。
大塚憲さん:
これはこのワークショップで今回、さつまいも植えてある分と、こっちは高校生が大体主体でひまわりをな、植えなはったんよ
更地になった場所には、地元・野村高校の生徒の提案でヒマワリとサツマイモを植えられた。
大塚憲さん:
もう今や5人や6人ぐらいの地区になったらな。もうまず、みんなが元気で暮らしたら、それでもういいんじゃないか思うな
古民家をリニューアル…空き家が目立つ地区で新たな挑戦
正本健太キャスター:
古い家みたいな感じですよね
シーバース玲名さん:
ここも貸していただいて、これからこっちがゲストハウスになって、こっちの1階がバーになって、2階が宿泊としてオープンする予定です
空き家だった古民家が今、新たな形で再生されようとしている。
シーバース玲名さん:
ここはお店屋さん、ギャラリーとショップみたいな形になる予定で
正本健太キャスター:
よく見るおじいちゃんの家みたいな雰囲気ですけど
シーバース玲名さん(27)、神奈川県出身で復興支援のために豪雨の翌年から西予市の地域おこし協力隊員になり移住してきた。
そして、これまで住民らと一体となったイベントの運営などを行うなど、町の復興に携わってきた。
シーバース玲名さん:
災害がある所に行くって思って来てたから、こんなにきれいなんだと思って。それに心打たれた記憶があって、田園風景とか田んぼの景色って好きだなと思って
2021年、シーバースさんは新たな挑戦を始める。
それは、野村でバーとゲストハウスをオープンすること。
シーバース玲名さん:
もともと神奈川にいた時に学生時代からバーで働いてて、それで自分のお店をやりたいなっていうのはなんとなく思ってて。ここにバーカウンターがあって、キッチンスペースがあってかなと思って
シーバース玲名さん:
地元の公営住宅に移るという方もいれば、本当は家借りたかったって人もたくさんいらっしゃると思うので。でも、空き家は溢れかえっているっていう、この状況ってすごくもったいないと思ってて。そこのひとつのチャンスっていうか、空き家が駄目になる前にそういうことに進んでいったら、それもひとつの活用例というか
7月、古民家をゲストハウスにリニューアルするため、本格的な改修工事を地元の大工さんや知人と一緒にスタートさせた。
シーバース玲名さん:
私の思いか…。ポジティブに野村に来た人たちに、野村の景色こんなだよとか、野村の人こんな感じだよとかは伝えるし、野村の楽しみ方を知ってもらう最初の入り口になったらいいかなと思ってます
西日本豪雨から3年。
被災地のそれぞれの「住まい」。
住んでいる理由は違っても、野村の人たちはあすへの強い信念を持って、きょうも生活を送っている。
(テレビ愛媛)